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「ご利益はありますか?」浄土真宗の現世利益①

お寺や神社にお参りするとき、
「どんなご利益(りやく)があるか」
チェックする人は多いのではないでしょうか?

・「大学に合格しますように」ー合格祈願
・「(自分の経営する)お店が儲かりますように」ー商売繁盛
・「病気が治りますように」ー病気平癒
などです。

誰にでも「神様・仏様、どうかお願いします」と
祈りたくなる気持ちがあります。
神仏に願いを叶えてもらるのは有り難いことです。

ところで、
私は浄土真宗の僧侶ですが、
「浄土真宗の教えって分かりにくいなぁ」と
感じることがよくあります。
その1つがこのご利益について。

浄土真宗では、
一般的に言われる現世利益はなく、
祈祷したり、お守りを授与するなど、
現世祈祷はしません。

宗祖 親鸞聖人は、
次のように現世祈祷を厳しく戒めておられます。

仏号むねと修すれども
現世をいのる行者をば
これも雑修となずけてぞ
千中無一ときらわるる

高僧和讃


なぜ現世祈祷を否定されたのか。

仏教の根本である【縁起(因縁生起)】に背く
ことになるからです。

【縁起】は仏教独特の考え方です。
すべてのものには因と縁があって、
それらが関係しあって1つの状態になっています。
種(因)をまいても、
水・肥料・日光・温度など様々な条件(縁)が揃わなければ、
花は咲きません。
因と縁の両方が複雑に絡み合って
物事は成り立っています。

「私」自身の存在を考えてみても、
「私」一人で存在しているわけではなく、
多くのことに助けられてお陰様で生きています。

これに対して他の宗教では、
【神が世界を支配する】と考えます。
神が人間の運命を決め、人間はその神に祈ります。

仏教では、
仏さまが人間を「支配する」ことはありません。
Aさんが「●●大学に合格したい」と祈願したとして、
仏さまが「よし、分かった。合格させてやろう」
とはならない訳です。

人生の中で人間が受ける苦楽は、
縁起によって起こるのであって、
仏さまが人間の運命をコントロールするのではありません。

私たちが自らの努力によって乗り越えるべき問題を
神仏にすがって解決しようとすることは
縁起の道理に背くことになります。

個人的には
「そんな硬いこと言わんと、お願いごと聞いて下さいな」
と思うわけですが。

人間の力が及ばないことを神仏に頼り、
自分の欲望を満足させてもらおうとする。
こういう欲望を持つ「私」に気付くことが大事ですね。

次回は、
浄土真宗にもちゃんとご利益がありますよ!
という話を書きたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。
素敵な1日をお過ごしください。


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