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浄土真宗の現世利益②

前回は、広く一般的な現世利益(りやく)について書きました。

今回は、浄土真宗独特の現世利益について。
浄土真宗は、
亡くなった後、極楽へ行って(往生して)覚りを開く(成仏する)
だけじゃなくて、
生きている「今」のご利益もあるんですよ!
という話です。


1.聖道門と浄土門


聖道門(天台宗・曹洞宗・真言宗など)は、
厳しい修行で自己を磨き、この世で覚りを開く
教えです。

これに対して、浄土門(浄土真宗)は、
この世では浅ましい心を持った私たちが
極楽浄土に生まれて初めて仏となる
という教えです。

なので、
浄土真宗は命終わった後にだけ救われるのだと思われがちです。
でも、ちゃんと現生でのご利益もあるんです。

2.現生十種の益


この現世で受け取る利益について、
宗祖 親鸞聖人は、『教行信証』に「現生十種の益」を記しておられます。


金剛の真心を獲得すれば、横に五趣八難の道を超え、かならず現生に十種の益を獲。なにものか十とする。一つには冥衆護持の益、二つには至徳具足の益、三つには転悪成善の益、四つには諸仏護念の益、五つには諸仏称讃の益、六つには心光常護の益、七つには心多歓喜の益、八つには知恩報徳の益、九つには常行大悲の益、十には正定聚に入る益なり。

教行信証 信巻

10種ある中で、最も重要なのが「入正定聚の益」。

「正定聚(しょうじょうじゅ)」とは、
仏になることが決まっている人のこと

を言います。
現生では仏になれなくても、
命終われば仏になるということが
決まっています。

3.行き先が決まっている安心感


極楽へ往生するのは死後ですが、
往生できることが生きている「今」決まります。

臨終を待たずして、「今」往生が決まる。
行き先が決まっている。
「ええとこ」に行ける。
この安心感こそが浄土真宗の現世利益です。

なぜ「今」往生が決まることが有難いのか?

私たち人間にとって、死ぬことは人生最大の恐怖です。

平和な時代。
まだまだ若い自分。
まさかこの世からいなくなることは考えにくいですが、
誰しも必ず死を迎えます。

自分の行き先が前もって決まっていると分かれば
「今」を安心して生きることができます。
死後の世界は誰にも見えないわけで、
科学では説明のつかないものです。

得体の知れない世界に行くことは誰しも不安になりますが、
それが極楽という仏さまの国だと分かれば、
安心してこの人生を全うすることができます。


いかがだったでしょうか。
一般的な現生利益と比較しながら、
浄土真宗の現生利益について
ご紹介しました。

本当の意味での利益とは、
人間の欲望を神仏の力で満たそうとするのではなくて、
むしろその欲望を、正しく超えていく所にあります。

最後までお読みいただきありがとうございました。
素敵な1日をお過ごしください。


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