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「ナッチポックン」と「失敗の父」

どうです。おいしそうな写真でしょう。

仕事場へ向かうべく、朝の市場を通ったらそれは元気そうな「イイダコ」が売っていたのです。今日は寒いし夕餉にひとつ、「ナッチポックン」を仕立ててビールをきゅっといっちゃおうかしら。

ということで、

三匹ばかりきばりまして、職場の冷蔵庫に保管。意気揚々と帰宅して下処理に取りかかりました。丁寧に「わた」を取り除いて、ぬめり取りのために「塩揉み」を施します。

塩をざばっとかけた「イイダコ」をごしごし揉みます。灰色に泡立つくらいしっかりと。揉み終わったら流水で丹念に洗い、キッチンペーパーで水気を取ります。すっかりさっぱりした「イイダコ」。それを一口大に切りまして、ごま油で軽く揉んでおきます。

フライパンにごま油と半切りにしたニンニクを入れて中火にかけます。食欲をそそる香りが上がってきましたら、コチュジャンをひとさじ。ごま油となじませます。ブクブクしだしたら、お待ちかねの主役の登場です。

「イイダコ」と「キムチ」をどんと、投入。強火で豪快に炒め合わせます。すると足や身がきゅうっと縮んで丸まり、ニンニク、唐辛子、タコが焼ける芳ばしいアロマが漂います。ここでぼくは勝利を確信しました。

「愉悦の食卓は約束された。あとはオイスターソースを少し。あおって味見。そしてフィニッシュだ。今日は発泡酒ではなくビールを出そう。彼にはビールこそ相応しい。イイダコ君ととわたしの勝利に乾杯だ。ふふふふ。」

と、にやにやしながら、味見をすると。

しょっぺえ


すんごい、しょっぺえ



そう、しょっぱかったのです。

期待値が高かっただけに愕然としました。なぜなんだ。あんなにおいしそうだったじゃないか。朝の市場で出会ってから今まで互いに「おいしい未来」を固く誓い合ったじゃないか。おもわず涙腺が熱くなりました。


失敗の原因は塩揉みの際の塩の量が多かったことと、塩揉みの時間が長すぎたことでした。イイダコ20匹に大さじ1が適正なのに、3匹に対して同量を用いてしまった。そして、揉み込みの時間も「おいしくなぁーれー」と丹念に揉みすぎてしまった。痛恨。イイダコは身が小さいため塩が入りやすいのです。


だから、トップの写真はおいしそうですが、しょっぱいのです。

失敗は成功の母と言いますが逆もまた然り。料理を成功させることに慣れて「どうせうまくいくんだ」とタカを括って、ろくに調べもせずにノリで調理するとこういう失敗をします。成功は失敗の父。

この夜は悔しすぎて布団を噛んで寝ました。

皆様におかれましても、イイダコの下処理の塩の扱いに関してはくれぐれもご注意ください。


きょうもお読みいただきまして、
ありがとうございます。

それでは、また明日。

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