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初めて部下をクビにした時に思った事

 
私が45歳くらいの時(当時部長でした)、1人の若い男をクビにしました。
人生初めての経験でした。

彼は自動車部品の品質担当で、客先での不具合品発生の情報や原因を
ドイツ工場へ報告・相談し、対策を顧客へフィードバックするという
役割でした。
 
しかし、彼はしばしば顧客からの要求とは違うことを、工場に改善
対策事項として伝え、結果大きな損害を与えたのでした。

工場も品質向上のためにラインの改良や、ツールなどの開発にお金を
投資しなければなりません。
あるいは、材料の変更もあります。

ただ、その間違って伝えたことが、一度や二度ならず毎回の事でした。
彼の技術的な不得手や英語によるコミュニケーションの問題もあると
思ったので、練習のためドイツ側の株の好きなカウンターパートと
簡単でもいいから、毎日少しずつでもいいから、英語で株の話しを
電話でするように指示、相手にもそういう話しを電話でして欲しいと
頼みました。

しかしながら、自分で電話する気もないようで、また、株の勉強もするような事もなく、ほとんど電話はしないようでした。
 
また課題として英単語を1日5個でいいから覚えるようにと、指示しましたが、彼は「いま結婚式を控えていて、その打ち合わせで土日も朝早くから
夜遅くまで外出しているので、1つも覚える時間はありません」と、
私に堂々と言って退けました。(実はここで私はキレました)

結婚も大事ですし、準備で忙しいのも理解できますが、勉強をし仕事を
きちんとやる事も、仕事でお金をもらっている以上大切な事です。

この彼の一言で、私の心の中では「もう、決断の時期かな」と
思いました。

1〜2ヶ月の時間的猶予を与えましたが、まったく態度が変わらず、
工場とも顧客ともコミュニケーションがとれなかったようなので、
人事と相談して辛い選択でしたが、辞めてもらうことにしました。

彼には、「今の仕事は向いていないので、他の世界で活躍してほしい」
と薦めました。

彼は、「そう言うことをするなら、会社を訴えます」と言ってきました。
どこかの弁護士か何かと相談したのでしょう。

私は、「ドイツの工場に与えた損害を君に請求するけど、それでいいなら
訴えても構わない」言いました。

さすがに分が悪いと思ったのでしょう、彼も結婚を控え厳しい選択だったと
思いますが、訴えることはやめ、納得して退社しました。
 
でも、結果としてその決断は正しかったと思っています。
向かない仕事を、無理矢理続ける必要はありません。
社内の他部署への異動も、人事としては「ない」と言うことで、
選択肢はありませんでした。

退社後、しばらくして連絡があり、小さいながら社員数名を要する
会社の社長になったとのこと。一国の主人ですから大したものです。
 
若い人でなくとも、人をクビにするということは、その人の人生を変えてしまうことですから、多いなる決断が必要です。
でも、こちらとしても一大決心です。

でも、可能性を信じて決断した事に、間違いは無かったと今でも思っています。

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