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日本の科学者達はmRNAワクチンによってエフェクターメモリーT細胞にリフォーカシング(再集中)が起こることを示した。しかし、それらのT細胞の機能性を示すことには興味がないようである。

Dr. Geert Vanden Bossche 2024年3月11日投稿(Voice For Science and Solidarity)(substack)
Japanese scientists demonstrate mRNA vaccine-induced refocusing of effector memory T cells but don’t seem to bother to demonstrate their functionality….
の翻訳です。
原文を参照の上ご利用ください。

“CD8+T cell memory induced by successive SARS-CoV-2 mRNA vaccinations is characterized by shifts in clonal dominance(SARS-CoV-2mRNAワクチンを連続して接種することで誘導されるCD8+メモリーT細胞は、クローン優勢の変化によって特徴づけられる。)” (cell.com/action/showPdf?pii=S2211-1247%2824%2900215-8)という論文を読んだ。

この研究はmRNAワクチンによって変化するT細胞クローンの特徴と、mRNAワクチンの繰り返し接種が引き起こすスパイク(スパイクタンパク質)エピトープの抗原優位性の変化の動態に焦点を当てている。

科学者達は、mRNAワクチンが誘導する、または、呼び戻すT細胞クローンの分子的特徴について洗練された研究を行った。その結果は、私がこれまでずっと主張してきたこと、すなわち、mRNAワクチンがCOVID-19ワクチン接種者の免疫系に免疫再集中(免疫リフォーカシング)を引き起こす、ということを裏付けるものである。SARS-CoV-2 mRNAワクチンを連続接種すると、体液性免疫の中和力が低下して免疫逃避を促進し、最終的にはIgG4抗体反応へと移行して免疫病態に寄与することはすでに示されている(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10222767/https://bit.ly/3NYokkE回避不能な免疫逃避パンデミック」1.2.7章、1.2.9章; https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10178835/)。今回の研究は、mRNA 注入の繰り返しが、同様に、エフェクターメモリーT細胞の優勢クローンをスパイクエピトープ間で変化させることを示している。mRNAが宿主の細胞に導入された初期段階で低親和性の抗スパイク抗体が誘導され、それによって免疫再集中が起きるようになることを考えれば、この日本人研究者達が、mRNAワクチンによって誘導される抗RBD抗体の抗体価と、 CD8+ および CD4+ T細胞の優勢クローンの変化(すなわち、免疫再集中)との間に正の関連があることを立証したことは驚くべきことではない。T細胞クローンの偏りと2回目、3回目のCOVID-19 mRNAワクチン接種後の抗スパイクT細胞のクローン優勢のエピトープ間、あるいはエピトープ内での変化は、T細胞の多様性の増加につながる可能性があるが、著者達はこのリフォーカスされたT細胞応答の機能性について探索する気はなかったようである。T細胞受容体の多様性の増大は必ずしもこれらのT細胞の機能性の向上を意味しないため、この省略は重大な欠陥である。

より多様なバリエーションを持つ病原体に対する免疫応答を促進するワクチンは、それによって誘導される免疫エフェクター細胞が最適ではない、つまり、病原体を完全に除去できない場合には、大規模な免疫逃避を引き起こす可能性があることは良く知られている。このことは、そのようなワクチンが集団ワクチン接種プログラムとして実施される場合に特に当てはまる。ワクチン学者として長年の経験を積んできた者としては、この研究者達が、自分たちの研究結果がT細胞の免疫記憶の「書き換え可能性」を示唆したことから、それをもって、mRNAワクチンによって誘導されたT細胞が「ウイルス変異株に対して有効な応答を生成する」ことができるかもしれない、とまで述べたことは驚きである。(彼らの言うところの「有効」が、生成される免疫反応の機能性とは無関係であるなら話は別であるが)。東京理科大はプレスリリースでこの論文を要約しているが、本研究で示されたmRNA ワクチンによって誘導されたT細胞応答は「ウイルスに対して、より効果的でより広範な防御をもたらす次世代ワクチンの開発に極めて重要であろう(mRNA vaccine-induced T-cell responses ‘will be crucial for developing next-generation vaccines for more effective and broad protection against viruses’ )」と結んでいる(https://www.tus.ac.jp/en/mediarelations/archive/20240306_8340.html)。これは誤った結論であり、科学界を誤った方向に導くものである。

何故この結論は科学を誤った方向に向かわせることになるのか。

ワクチンによって誘導されるT細胞応答の有効性は、ウイルスのT細胞エピトープに対する免疫応答の大きさだけというよりも、むしろ、T細胞自身の機能性に左右される。変化した、あるいは再集中したT細胞応答を含めて、ワクチンによって誘導されるT細胞応答の細胞傷害性を解析していないことは、必然的に、これらのT細胞応答の重要性やmRNAワクチン接種を繰り返すことの影響についての誤った解釈や誤った理解につながる。

経験を積んだワクチン学者であれば、誰もが次のような質問をするであろう:

  • この研究者達はなぜ、変化したT細胞集団(レパトア)がウイルス感染細胞を殺すことができるかどうかを調べなかったのだろうか。

ウイルス伝播が持続している現状においては、ウイルス感染細胞を殺すことができないエフェクターメモリーT細胞は、個人の健康においても、公衆衛生においても意味を持たない。例えば、非細胞傷害性のT細胞の増加とクローンの多様化が、感染の排除ではなくウイルスの免疫逃避と免疫病態を促進することは、これまでに繰り返し示されてきた。この点について省略したことは本研究の重要な限界であるが、著者らはそれに言及していない。ウイルスのライフサイクルにおける標的エピトープの役割や、機能的免疫応答に対するそれらの感受性を調べることなく、T細胞受容体レパトアの多様性を明らかにするだけでは、T細胞応答の包括的な理解に貢献することにはつながらない。

  • この研究者達はなぜ、変化したT細胞クローンのエピトープマッピングを行って、変化した標的T細胞エピトープとC-19ワクチンを高度に接種した集団で蔓延する変異株に見られる変異との結合可能性を検討しなかったのだろうか。

  • この研究者達はなぜ、C-19ワクチン接種者がブレークスルー感染を繰り返し、免疫再集中の進化動態にさらに影響を及ぼしている現実の状況に分析を拡張しなかったのだろうか。

もし彼らがこの質問を追究していたならば、スパイクタンパク質以外のウイルスタンパク質を標的としたT細胞へのクローン優勢の変化が、ウイルス複製と子孫ウイルスの産生を強化する免疫逃避変異の出現を促進していることを間違いなく見出していただろう(https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2024.03.05.583578v1)。

ワクチンによって誘導される免疫の多様性と免疫エフェクターの想起反応の強さが、必ずしもそれらのエフェクター細胞の機能的有効性と一致するわけではないということに、ワクチン学者達はあと何年かかったら気がつくのだろうか。

免疫エフェクター細胞が自由循環しているウイルスを中和できなかったり、その感染力を阻害できなかったり、もしくは、ウイルスに感染した宿主細胞を殺傷できなかったりするならば、その免疫反応は必然的に免疫逃避の原因となることを理解することはそれほど難しいことなのだろうか。この基本的な理解が科学界に浸透するまでは、それぞれの専門性に凝り固まった、しかし、現在の「免疫逃避」パンデミックがもたらす現実的問題や課題からは切り離された科学者のみがアクセスできる高度な分析結果を解読することに、私たちは貴重な時間を大幅に浪費し続けることになりかねないのだ。

「分子スタンプ収集」という複雑で入り組んだ演習から生まれた、一見、明快で厳密と思われる結論には常に疑いを持つべきである。複雑性の増加が直ちに信憑性の増加を意味するのではないのだ。

私の結論をまとめる:

この研究の結果は、ウイルス感染性の原因となる特異的エピトープを標的とした、高度に機能的な免疫応答を引き起こすことができないという、mRNAワクチンの有害な効果を確認したに過ぎない。mRNAワクチンは、ワクチン・ブレークスルー感染と同様、免疫応答をそのようなエピトープから遠ざけるため、集団ワクチン接種によって弱毒のウイルスタンパク質に対する獲得免疫が誘導され、必然的に、免疫応答の機能低下を招くことになる。

私は、この論文の著者らが裏付けているように、mRNAワクチンは免疫再集中を引き起こすという本質的な特性があるため、ワクチンとしては持続不可能な技術であると、一貫して声を上げてきた。この著者らはT細胞クローンの偏りと副作用の相関を低く見積もっているようであるが、この相関はCD4+ T細胞によって引き起こされる炎症にとどまらず(https://doi.org/10.7774/cevr.2022.11.1.121)、CD8+ エフェクターメモリーT細胞によって促進される自己免疫やがんのような免疫病態にもおよぶと考えるのが合理的である。

この研究の結果を次世代mRNAワクチン開発へのプロパガンダとして東京理科大学は伝えたが、ウイルスの免疫逃避と免疫病態を促進するという裏目にしか出ない、完全に誤ったメッセージを発信したことになる。


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