しょぼくてレアな快速特急
土日祝日に京都河原町と大阪梅田を結ぶ快速特急「京とれいん雅洛」。毎週末に4往復運行。追加料金なしというのも相まって気軽に乗れる。
しかし、冬の1ヶ月、検査のために運休することになっている。予備の「雅洛」はおらず、他社のケースだとそのまま減便することが多い。だが、阪急電車は「雅洛」とは違う代わりの車両を用意してまでダイヤを維持している。その見た目ははっきり言うと「しょぼい」「フツー」。ただ、ファンの目からは貴重な要素がたくさんある。気になって、乗ってみることに。
検査のお知らせ
京都河原町駅「2号線」が「雅洛」の発車ホーム。ここでは貼り紙で「雅洛」運休をお知らせ。「一般車両で運行いたします」と注意喚起している。
2号線にいたのは…
2号線にやってきた。止まっていたのは「7300系」という一般車両。普通、準急、特急をはじめ、快速特急、通勤特急以外の京都線全種別を担当する。
フツーの阪急電車
木目の壁、ゴールデンオリーブ色の座席、鎧戸の3点セットでフツーの阪急電車。事情を知らずに「雅洛」を狙っていた人からしてみたら、「え、しょぼ…」と言われるかもしれない。
レアポイント
しかし、そんなことは1ミリも思わないのが鉄オタ。かなり珍しいポイントがいくつかある。
C#7321
「7321」と書かれたこの車両は運転台がありながら、普段は中間車。窓下の手すりには転落防止幌を取り付けるアダプターの役割がある。
梅田寄りには2両の付属編成を常に連結し、他形式とローテーションを組んでいる。かつては6両の普通電車もあったが、現行ダイヤは大部分が8両(一部の普通と準急は7両)。この顔が出るのは年に数回程度。快速特急か嵐山線(いずれも代走)でしか見られない。こんなさらけ出す姿はレアだ。
2両だけ模様替え
6両のうち2両だけ、内装が異なる。他のが薄い木目なのに対し、2両は濃いめの木目、扉は焦げ茶色だ。
扉窓を大きくしたリニューアル車両や新型車両にはよくあるが、こちらはそういう部類に当たらない。なぜ壁色を新しくしたのか、なぜ2両だけなのか謎は深まる。
未リニューアル
多くの「7300系」がリニューアルを済ませ、顔や内装が変化している。しかし、乗っている編成はしてない状態で残る。2両編成数本とこの6両のみ。古い姿が見られるのも残り幾ばくもない。
夕暮れの洛西、北摂
河原町発車時点ではまばらだったが、「烏丸」「桂」でやや乗車があった。ただ家族1組は「特急」ではないことを勘づいたのか降りていった。
快速特急は「桂」を出ると次の停車駅は「淡路」。一気に大阪市内までノンストップだ。
“特に急がない”ってやつ
特急が停車する長岡天神、高槻市、茨木市は通過となる。京都線の種別では比較的少ない停車駅だ。
だが、速いかと言えばそうでもない。先発した特急を1〜3分差で追いかける形になる。信号で詰まることが多く、特急とはそんなに大差はない。本来「雅洛」は乗ることが楽しい列車。「特に急ぐ」必要性が限りなく低く、こういうダイヤで楽しんでもらう魂胆なのだろう(雅洛だったらの話だけど。)
高槻市駅と茨木市駅
高槻市、茨木市と通過。昭和期の特急は停車しはかった。しかし、JR新快速の圧倒的スピードで太刀打ちできず、中間の主要都市の需要を集めることにシフトし始めた。人口約30万人前後のベッドタウンとなった今、これらの街を通過するかなり珍しい光景だ。
プレイリスト
ちょいちょい前の列車に詰まっては「これこの曲じゃないなぁ。こっちやろなぁ」などまあまあ悩ましい。
大阪梅田駅
大阪梅田駅に着くと隣には「ちいかわ号」
さらにその隣には「大阪・関西万博ラッピング」電車が止まっている!すごい光景ではあるが、
ここに「雅洛」おったら完璧やったのに…
「雅洛」に比べれば、「しょっぼ…」と言われてしまっても仕方ないピンチランナー(一般車両)による快速特急。「雅洛」が乗って楽しい分、運休させずに走らせる意図ははっきり分からない。特急も1時間に6本はある。あるとするなら混雑緩和の穴場なのだろう。たまたま乗れた人は「おっしゃ!ラッキー!」とは思うようで、停車駅や今回の事情を知らないと「サイアクーームカつくーーー!!」となるような。
何はともあれ、オタク魂は大満足な僕だったし、最後の最後で珍しい光景も拝めた。
ストリートミュージシャンの投げ銭のような感覚でお気軽にどうぞ。