見出し画像

0から始めるショートフィルム制作① YFLおすすめの映像撮影機材編

こんにちは。ショートフィルム制作チーム「Yellow Film Labo」(以下YFL)発起人の稲垣です。今回はYFLの使っている機材についてご紹介したいと思います。

(↓YFLとは...?という方向けの記事)

私たちは予算が豊富にあるわけではなく、かなりミニマルなセッティングになっております。
また、メンバーもそれぞれ映画制作の経験があるわけではなく、0から手探りで始めました。
そのため、これからショートフィルム制作を初めてみたいという方のお役に立つかもと思い、この記事を書こうと思いました。

YFLが実際に運用している機材をご紹介するので、勿論これが全て正しいという内容ではありません。
ただ、現場のリアルな体験を反映しているため、一つの事例として参考にでできるかなと思います。

この時フレアに苦しめられ、マットボックス導入に至りました。

一気に全ての機材を書こうかと思いましたが、思いのほか文章量が多くなりそうですので、①映像撮影機材編、②照明機材編、③音声収録・その他機材編、④編集ソフト編に分けて書いていこうと思います。
今回は①映像撮影機材編です。

尚、ミニマルなセッティングとはいいつつ、普通に全て揃えるとかなり高額になります。ですが、後述する機材レンタルなどの手段を交えれば安価に用意可能です。
所有することで機材の習熟度が高まるということはありますが、最近は機能進化による機材の移り変わりも激しいので、機材よりも作品制作自体にお金をかけることをおすすめします。


YFLの映像撮影機材(カメラ・三脚・モニター)一覧

【カメラ】
α7SIII、α1、Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K(BMPCC4K)

レンズ】
for SONY : 24-70GM2などSONY純正レンズ、NOKTON 40mm F1.2 Aspherical
for BMPCC4K : NOKTON F0.95シリーズ

【フィルター】
NiSi 可変NDフィルター TRUE COLOR VARIO、ブラックミスト等、マットボックス
https://nisifilters.jp/product/nd-true-color-vnd/

【モニター】
MarsM1-E [Hollyland Mars M1 Enhanced

【三脚・ジンバル】
Sachtler Flowtech 75 FSB8、DJI RS 3 Pro

カメラについて

YFLでは監督の撮りたい絵によってカメラをレンタルするケースもありますが、チームで保有(稲垣私物)しており、尚且つもっとも出番が多いのが、α7SIIIです。(ちなみに動画だけを撮るならFX3の方がおすすめです。写真も撮りやすくて嬉しいので私はα7SⅢ推し。違いが気になる方は以下の高澤けーすけ氏の動画をご覧ください。)

このカメラは非常に扱いやすく、カメラマンの技術不足を機能で補ってくれるため、初心者にこそお勧めしたいカメラです。

扱いやすい要因としては特に以下の2点が大きいです。

  1. オートフォーカス(AF)が優秀

  2. ベースISO感度が640と12800(デュアルベースISOは公式は明記していませんが、複数のレビューにより明らかです)であり、過酷な照明環境にも耐える汎用性の高さがある。

まず 1 に関して、フォーカス送りなどはニュアンスが必要ですのでマニュアルフォーカスを推奨しますが、トラッキング(フォーカス追従)にAFが非常に有効です。

SONYのAFが優秀なのは良く知られていると思いますが、食いつきが良く精度が高いため、人物が動くシーンや、カメラで追いかけていくシーンなどに効果的です。フォーカシングのミスを防ぎ、ジンバル運用時などにフォーカスプラーが必要な場面をAFにより補えるため、小規模現場の強い味方になると思います。

人物が歩いてくるシーンなどはAFトラッキングが活躍

2 に関しては、我々のような小規模チームだと、予算上大掛かりな照明セットが組めず、環境にもとからある光を利用することも多いです。
その際に、少ない光量でもISO12800が使えるとかなり絵作りが楽になります。ISO12800だとノイズが心配と思われるかもしれませんが、ベースISOになりますので想像以上に綺麗に撮れます。
ISO3000などで使うよりはISO12800の方が良好な結果になるため、運用としては、ISOは800 or 12800 のみで使い、NDフィルターで露出の調整というのが良いかと思っています。

その他の設定は以下を基本としています。

  • XAVC HS 4K 24p シャッタースピード50fps

    • 映画は一般に24fpsで撮られることが多く、私たちも好きなフレームレートですので基本的には24fpsにしています。
      (著作権的にリンクを貼るのは憚られるのですが、「スターウォーズ 60fps」などで検索すると、フレームレートによる絵の違いが良く分かると思います。)

  • S-Gamut3.cine/S-Log3

    • SONYで撮影する際には、S-Log3を使い、Davinciでの色編集を前提として撮影しています。
      Logで撮影すると撮影時点では薄っすらとした絵になり心配になるかもしれませんが、後から編集ソフトで簡単に色を入れることができますので、怖がらずにどんどん使ってみると良いと思います。

  • ホワイトバランス 5500Kをベースに適宜変更 オートは使わない

    • ホワイトバランスはオートにしてしまうと、同一カット内でホワイトバランスが変わってしまうなどの現象が起こりポスプロ(後編集)で苦労するのでマニュアル推奨です。

  • タイムコード Time Code Run→Free Run

    • Free Runにして撮影開始前にATOMOS Ultra Sync Blueのタイムコードに合わせています。
      こうすることで、簡易的にではありますが、タイムコードで他映像・録音素材と同期がとれ、編集時の音合わせなどの素材整理作業が格段に楽になります。
      今回は機材紹介ということで詳しくは書きませんが、タイムコードでの素材管理、おすすめです!※タイムコードによる素材同期の方法は以下の動画が分かりやすいと思います。こちらではDavinciを使っていますが、基本的にどの編集ソフトでも可能かと思います。


尚、Blackmagic Pocket Cinema Camera 4Kも保有しており使うことがあります。
このカメラの利点は、BRAW撮影ができること、撮れる絵が非常に綺麗なことがあげられます。ですが、手振れ補正やAFが無いなど、初心者が扱うには若干ハードルが高い部分もありますので、この記事ではそこまではお勧めはしません。ですが、カメラの扱いに慣れている方であれば、絵のリッチさ、BRAWによる編集自由度の高さ、マイクロフォーサーズレンズを利用できるコスト面・バリエーション面での利点を享受できるため選択肢に入れて良いと思います。

YFLで実際に起こったトラブルメモ!カメラ編

【オートフォーカスを使った際にフォーカスが暴れる。】
SONYのオートフォーカスが優秀だからと油断してはいけません。
大きなモニターでみないと分からないフォーカスの揺れなどが発生していることもあります。
特に、FIXで撮る際には、必ずマニュアルフォーカスにすることをおすすめします。
YFLではFIXで放置して撮影していたカメラが、いつのまにかAFになっており、ピントがぐっちゃぐちゃという事件が一度ありました...

【おま....これS-Log3じゃないやん!事件】
事件というか良く起きます。最初からピクチャープロファイルが設定されていないのは論外ですが、不思議なことに撮影中ピクチャープロファイルが変わってしまっていることも...
撮影前に、必ず複数人でカメラの設定チェック、また、撮影時も定期的に設定が変更されてないか確認するようにしています。
時間がなくなり現場が慌ただしくなると何故か起きがち...いつも心に余裕をもって丁寧に撮影したいものです。

レンズについて

SONYのカメラを使う場合、GMレンズを使うことが多いです。
理由としては、やはりSONYのカメラは純正レンズとの相性が非常に良いためです。(特に手振れ補正の効きなどは格段に良いです)
もちろんレンズによって絵の個性を出したいときには、他のメーカーのレンズも使います。ここは好みになるので、作りたいルックに応じたレンズを選ぶと良いかと思います。

尚、レンズは購入しなくてもレンタルという方法が使えます。レンズ…高いですからね!
東洋レンタル・マップレンタル・東京カメラ機材レンタル・東京オフラインセンターさんなどをYFLは良く利用させてもらっています。

また、BMPCC4Kを使用する場合は、YFLメンバーの大好物、NOKTON F0.95シリーズを頻繁に使います。
このレンズは比較的安価で、F0.95ということでめちゃくちゃ明るく、そして美しくボケる。このレンズを使いたいがためにBMPCC4Kを選択するメンバーもいるほどです。YFL作品では、「Pray」で使われております。宜しければご参照ください。フルサイズに全く引けをとらない絵になっているかと思います。

YFLで実際に起こったトラブルメモ!レンズ編

【ぐにゃぐにゃコンニャク現象】
NOKTON 40mm F1.2 Aspherical を使っていた時に起こりました。
恐らく原因はアクティブ手振れ補正を切り忘れて、三脚に載せて使っていたため。
これまで純正レンズを使っていてもそうした現象はなかったために油断していました...
どんなレンズを使うときも、三脚やジンバルに載せる際には、手振れ補正はオフにしておきましょう。

フィルターについて

必ず利用しているのは可変NDフィルター(NiSi 可変NDフィルター TRUE COLOR VARIO)。ISO800 or 12800で固定して撮影するため、外ロケ以外に室内でも使用します。

また、フィルターとは少し違いますが、フレア対策でマットボックスも利用しています。SmallRigのミニマットボックスは安価且つ、可変NDフィルターとの併用もできますので(丸形NDフィルターも付けれる仕組みになっている)、マットボックスをまず試してみたいという方におすすめです。

画質という面では、可変NDではない方が良いという話もありますが、利便性を考えるとやはり可変NDが良いかなと思っています。撮影スピードを上げることが低予算のショートフィルムでは必須になってくると思いますので、この利便性というのは非常に大切です。

現場はいつもてんやわんや。セッティングの時間はできるだけ削って、時には皆でお茶をするぐらいの余裕は持ちたいものです。

また、今使っているNisiさんのTRUE COLORシリーズはムラや色被りが非常に少ないため、クオリティ面を犠牲にしているという感覚も実際ありません。おすすめです。
↓詳細は丁寧に検証されてるAUXOUT氏のYouTubeを参照されると良いかと思います。

その他フィルターは、作りたいルック次第とはなりますが、Black Mist系のフィルターを使うことが多いです。ただ、最近Davinciのカラー編集機能がかなり拡充されてきているので、フィルター使うよりポスプロでやった方がいいかなぁと筆者個人としては思い始めています。

モニターについて

Hollyland Mars M1 Enhanced というモニターを使っています。
これは、カメラモニターになりつつ、iPhoneなどにも最大4台まで無線でモニター映像・音声を飛ばせるというものです。制作メンバーそれぞれ手元でカメラ画面を確認できるようになるため、非常に便利です。

この時はAccsoon CineView SEを使って、ipadに映像を伝送していました(画面右下)
このipadを監督が常に手元に持っておくことで迅速な意思決定・伝達に役立てています。

これも撮影スピードを上げるために重要なアイテムの一つです。(ただ、注意点として、まだ詳細な検証はできていないのですが、ipadでモニターしている際に頻繁にアプリが落ちます。使っているipadが少し古いため、そちらの問題なのか、Mars M1の問題なのかはわかりませんが少し注意が必要です→アップデートの影響か、直近の使用では一度も落ちず非常に安定していました。)

これから撮り始める方の中には、カメラの背面モニターだけでいいと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、大きなモニターでみることはかなり大切です。
ピントや映り込み、小さな画面では意外にも多くのミスを見逃してしまいがちです。是非、モニターは用意することをお勧めします。

三脚について

こちらに関しては全く入門用価格から外れてしまっているのですが、Sachtler Flowtech 75 FSB8 を使用しており、現状この三脚以外は考えられないと思っています...!
理由はやはり撮影スピード。SachtlerのFlowtechはワンアクションで脚の長さを調整することができ、めちゃくちゃ便利なのです。
※以下リンク先の記事参照

撮影していると分かりますが、三脚のセッティングはかなりの時間を消費します。絵にこだわりたいのに時間がなくなり妥協...そんな残念なことをなくすために素早いセッティングができるこの三脚を強くおすすめします。

尚、これまではFlowtech一択でしたが、最近はワンロック機構の三脚発売のニュースもちらほら聞くようになってきました。

ただ他のものは使い勝手がわからないためお勧めはできません。
なにか良い商品が出ましたらどこかで情報共有したいと思います。

ジンバルについて

ジンバルはDJI RS 3 Proを使用しています。が、こちらに関してはなくても大丈夫だと思います。
ショートフィルムにおいてジンバルを使用しなければならないシーンはそんなに多くないと思います。大体は手持ちか三脚を使ったカメラワークで代用できます。

しっかりFIXで撮った方がリッチな絵になることが多いので、むしろ最初のうちはジンバルは使わないという選択もありかと思います。(YFLでも初期作はFIXを推奨していました。最近ジンバルワークにも挑戦していますが、チープな動きになりがちでやはり難しいです。)

おわりに

これらがYFLが映像撮影周りで使っている機材です。
全て揃えるとそれなりに高額になってはしまいますが、足りない機材はレンタルなどで賄えばかなり安い費用で撮影することが可能なのではないでしょうか。

尚、これらの映像撮影機材はショートフィルム撮影に必ず必要なわけではありません。良い脚本と良いキャスト、良いスタッフがいればiPhoneでも良い作品を作ることができると思いますので、機材にこだわらずまずは撮ってみる!という姿勢が一番大事かなと思います。

むしろ、最初に揃える機材としては、高いカメラ類よりマイクやレコーダーの方が優先順位が高いかもしれません。映画は「映像」と「音」でできていますが、「音」の効果は想像以上に大きいです。

次回の記事では音声周りの機材もご紹介しますので、是非そちらもご覧いただければ幸いです。
照明に関する記事が長くなったので、音声は次々回です!

それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。
また次回の記事でお会いしましょう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?