挫折の取説(短編小説)
夏の始まりを待つ頃。
休日の電車の中は夏の予定を語る嬉しそうな
声が溢れている。
楽しい休日の軽やかな気持ちと、バイトに向かう
気の抜けた俺の気持ちを乗せた電車。
耳で気配を拾いながら何時もの様に携帯を出す。
ついでにガムを取り出し口に放り込んだ。
携帯の画面に太陽の光が差し込んで見え難い。
自分勝手には調整出来ない車中の日除に目を移した。一瞬、急に車中の風景に時が止まった感覚に
襲われる。
車両内の右から左へと眺めて驚いた。
座っている人や立っている人。
全ての人が携帯