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読書メモ

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休職中、休職後に読んだ本の記録。
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読書メモ #19『汝、星のごとく』凪良ゆう

読書メモ #19『汝、星のごとく』凪良ゆう

「汝、星のごとく」読みました

何をテーマにしたかったんだろうと思うほど、いろんな要素が詰まってた。
ベースは恋愛なのかな多分、そこから、
親子関係、仕事、男女不平等、同性愛、夢、とか。
特に親子関係については、ヤングケアラーへの言及もあってかなり驚いた。

恋愛の部分は比較的よくある感じだと思う、悪い意味ではなく。
花束みたいな恋をした、を少し思い出した。
お互いが抱える痛みを分かち合うことで意

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読書メモ #17-18『冷静と情熱のあいだ』 江國香織・辻仁成

読書メモ #17-18『冷静と情熱のあいだ』 江國香織・辻仁成

一つの物語を異なるキャラクター視点で描いた連作小説、ということを知って気になって借りてきた。
どうやら映画化もされているらしいけれど、ひとまずはおいておく。

Rosso(イタリア語で赤)とBlu(イタリア語で青)とで分かれていて、前者があおい視点、後者は順正視点。

私はなんとなく江國さんのRossoの方から読んだ。

前半から中盤にかけてのほとんどが、マーヴとの生活についてだった。順正という忘

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読書メモ #16 『波打ち際の蛍』 島本理生

読書メモ #16 『波打ち際の蛍』 島本理生

『すべて真夜中の恋人たち』を思い出させるような雰囲気で、ただ、読み終えたあとの気持ちとしてはこちらの方が安心した。

冒頭の相談室でのやり取りだけで蛍が好きになった。今の私にも必要な要素を持った男のひと。
2人の距離が縮まって私も蛍の内側を少しずつ知っていって、蛍が元恋人と普通に出掛けてしまう人だと知ってがっかりしたし、危なかっしい女の子がタイプだと知ってなんてつまらないんだとも思った。でもそれは

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読書メモ #15 『最愛の子ども』 松浦理恵子

読書メモ #15 『最愛の子ども』 松浦理恵子

日夏・真汐・空穂の3人を「わたしたちのファミリー」としてクラスの女子たちは寵愛している。この3人の間での出来事や心理描写がずっと続いていくのだが、びっくりすることに、それらのほとんどが「わたしたち」、つまりクラスの女子たちによる妄想でしかないということがあっけらかんと書かれている。悪びれもせず書かれている。物語の中にもう一つ物語があるような感覚に陥った。寓話的でありながらも、現実味が見え隠れする感

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読書メモ #14 『ねじまき片想い』 柚木麻子

読書メモ #14 『ねじまき片想い』 柚木麻子

図書館でなんとなく借りてみた本が案外面白かったというのはよくあること。

おもちゃ会社のプランナーとして働く宝子が片想い中の西島くんに告白できないまま、彼の周りのトラブルをどんどん解決していくという話。
片想いの方に比重がおかれている話かと思ったら、予想以上にミステリー要素が多かった。後半は正直それがくどいかなと思うくらいに。
(読み終えた今やっと気が付いたが、「創元推理文庫」のシリーズだったの)

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読書メモ #13 『夜明けのすべて』 瀬尾まいこ

読書メモ #13 『夜明けのすべて』 瀬尾まいこ

去年読んだのをもう1回読み返した。

PMS(月経前症候群)がひどい主人公と、同じ会社にいるパニック障害の男の人の話。

メインの登場人物が若い男女、しかもPMSという病気は女性のみのものだけど、だからといって男女の話になっていないのが好きなところだ。恋愛にならないし、男女の友情でもないし、生理に理解のない男性の描写もないのがありきたりじゃなくて良い。

山添くんが変化したのは藤沢さんのお節介の賜

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読書メモ #12 『タダイマトビラ』 村田沙耶香

読書メモ #12 『タダイマトビラ』 村田沙耶香

読み終えてから数日経ってしまったのは流行り病にかかっていたからで、今も自宅療養中ですがPCを触れるくらいにはなったので忘れないうちに感想を書きます。

『コンビニ人間』を先に読もうとしていたけどこっちの方がページの進みが早く、結局読み終えてしまった。
読んできた村田さんの作品の中では一番平和だったというか、グロテスクさがなかったと思う。というのも、読んできた『殺人出産』や『生命式』などは生と死・産

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読書メモ #11 『地球星人』 村田沙耶香

読書メモ #11 『地球星人』 村田沙耶香

常識を疑う、というテーマは今まで読んだ2冊と同じだったので面白さよりもまず既視感が強かった。
でも、『生命式』や『殺人出産』が生(もしくは産むこと)と死(もしくは殺すこと)を中心に描かれていたのに対して、『地球星人』はもっと多くの問題に触れているように思う。子供同士の性行為や、虐待、子供への性犯罪など。
それでも、恋愛至上主義や結婚至上主義、出産至上主義を疑問視する姿勢は強く感じられた。

奈月が

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読書メモ #10 『殺人出産』 村田沙耶香

読書メモ #10 『殺人出産』 村田沙耶香

常識を疑い、正常と狂気の間を考えるというテーマは村田さんの中で揺らがないんだなあと思った。
「殺人出産」における、極度の人口減少という背景は「生命式」と同じだったけど、そのためのシステムとして、10人産めば1人殺せる、というものが正常とされていた。

数十年、数百年前の常識からは考えられないものが正常とされている世の中で、そのギャップを疑問に思える姿勢は単純にすごいと思ったし、でもそういう姿勢や思

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読書メモ #9 『生命式』 村田沙耶香

読書メモ #9 『生命式』 村田沙耶香

12つの短編集だった。すっごく好き
「生命式」、「大きな星の時間」、「魔法のからだ」、「孵化」この4つにやられた。

生命式

人が死ぬと、葬式ではなく生命式を行う。そこに集う人々は喪服ではなく派手な服装をしていて、みんなで故人の肉を食べる。(臭みがあるので基本味噌煮込みにする)派手な服装には訳があって、そこで気に入った異性と式場を後にして受精をするため。この背景には深刻な人口減少がある。亡くなっ

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読書メモ #8 『発光地帯』 川上未映子 エモいと恋愛

読書メモ #8 『発光地帯』 川上未映子 エモいと恋愛

図書館で借りた。

あとがきを読むと、元々は食エッセイの予定だったらしい。でも川上さんがその後に続けているように、食の要素はわりとまばら。そういうテーマだったと言われなければ気が付かなかった。
分かりやすく特徴的な食材が出てくることもなく、強いて言えば エシャロットの塩漬け が印象的だ。

「スノードーム前々夜」が好き、というか図書館でこの部分を少し読んで借りることを決めた。
自分が死んだあと遺言

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読書メモ #7 『うつくしい人』 西加奈子

読書メモ #7 『うつくしい人』 西加奈子

またも図書館で借りてきた、明日には返す予定なので忘れないうちにとnoteを開いた。西加奈子さんの作品はいくつか読んで、中でもこれはかなり好きなほうだった。

まず百合の性格。
他人の目を気にしていて、特に他人のイライラを敏感に察知して自分も消耗してしまう。会社の上司や友達だけでなく、全くの他人のそれにもいちいち反応しては不安になる。最近の言い方をするなれば、”HSP”の気があるのかもしれない。

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読書メモ #6 『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成

読書メモ #6 『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成

父が図書館で借りてきたのがきっかけ。
予約が詰まっていたのもあり、2日間で読み終える必要があった。父からは就活の話だということだけ聞かされていて、「えー」とこぼすと、「まあ読んでみなよ」と。伝えすぎるとネタバレになる、と言わんばかりだった。

まず、設定が最高
最終面接に残った6人、グループディスカッションのルールが途中変更になる。舞台はずっとこのディスカッションを中心に回っているし、登場するのも

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読書メモ #5『おまじない』 西加奈子

読書メモ #5『おまじない』 西加奈子

図書館で借りた。
表紙には排煙塔が描かれてあって、うら悲しい内容なのかなと考えた。

短編集で全て女性が主人公だった。
お気に入りは
「孫係」と「マタニティ」。

孫係=孫を係のように演じること
主人公のすみれ(小学生)が、幼いながらに周りの人間の顔色を伺い、それぞれに適した自分を演じていること、それを「おじいちゃま」が肯定し、2人は結託する。

私も昔から、その場で求められている自分でいようと努

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