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北明翰留学日記 #8 ーイギリスで歯医者に行ったー

気がつけば4月も終わろうとしている.コースが始まってからもう7ヶ月が経ったことになる.最初の3ヶ月は全然時間が過ぎなかったけれど,年が明けてからは月日が過ぎ去るのが異常なほど早く感じられて,慣れの度合いが深まったことを実感する.私のとっている講義は2学期までで終わったので,あとは修論に本格的に取り組んでいくことになる.

3月から4月にかけて大学院以外のことをする余裕が出てきたので,アルバイトを始めたり,CVを書いたりしているうちに,なんと奥歯の調子が悪くなり,結局抜歯をしなければならなくなった.歯医者を探すのは一苦労なので,2024年4月時点での体験を記録しておこうと思う.なお,料金などは毎年上がる可能性が高いので,あくまで参考程度にしていただきたい.

イギリスにはNational Health Service (NHS)という制度があり,お金を払って登録すると,General practitioners (GP)というかかりつけ医がついてくれ,初期治療をお願いすることができる.Student Visa申請の際,NHSへの加入は必須である.しかし,歯科は対象外なので,自分で歯医者に連絡する必要がある.

歯科のサービスは,NHSが設定する料金でやってくれるところと,完全に独自の料金体系(Private診療)のところがある.NHSの料金は治療内容によって3段階に分かれている.当然NHSの料金体系でやってくれる方が安いのだが,慢性的な人不足なのか,いつも混んでいて予約が全然取れないことで有名だし,かなりの歯科医院が新規のNHS患者を受け付けていない.

私の場合,金曜の夜に奥歯が割れたことに気づき,歯医者を探したものの,大抵土日が休診であるため,電話での連絡がつかなかった.緊急の場合の電話番号が設定されていても大抵留守電に吹き込むだけなのであまり意味がない(折り返しますという音声が流れるが,かけ直してくれたところはなかった).仕方がないのでNHSが提供する111という医療専門家のアドバイスを受けられるダイアルに電話して症状を話して,どうすればいいか教えてもらう.幸いそのときには痛みや出血がほとんどなかったことから,緊急性が低いと判断され,月曜に歯科医を探して電話しなさいと言われただけだった.

翌月曜にGoogle mapで近所の歯科医を探し,口コミとにらめっこしながら電話をかける.電話越しの英語のやりとりは自信がなさ過ぎたがそうもいっていられない.6件かけて,つながったのは3件,どれもPrivate診療である.初診の場合はConsultation feeが大体60〜70ポンドかかるようだ.仕方がないので一番早い予約枠を提示してくれたところにかかることに決めた.

初回の受診で,歯の根元まで縦方向にヒビが入り,完全に歯が二つになっているので保存できませんよと言われる.原因は長年の歯ぎしりなので,ぜひマウスピースを作りなさい,歯の状態そのものはとてもよいのでこれ以上割れたらもったいないですよ,と勧められ,作ってもらうことにした.初診でもらった治療計画は,初診+抜歯+マウスピース作成で415ポンド.8万くらいなので,日本の10倍以上の見積金額となった.歯の再建に関しては含まれていないので別料金となる.

金額の高さだけでなく,そもそもこれまで親知らずの抜歯以外で歯科治療をしたことがなかったので,心理的に受け入れることが難しく,本当に抜歯しか選択肢がないのかとか,日本だったらもっと保存を優先した治療ができたのではないかとか,いろいろな思いが去来した.しかし,そのために帰国するのはあまり現実的ではないので,イギリスで治療してもらうことに決めた.

幸いなことに,抜歯は驚くべき手際のよさで進み,歯科医師が取り出した歯は彼女が言った通り綺麗に二つに分かれていたので,治療を後悔することはなかった.取り出した歯をみた歯科医が,歯の根まで綺麗に縦方向に分かれて,あまりない割れ方ですね,亀裂のすぐ下を神経が通っているのに痛みがなかったのが信じられませんと嬉しそうに説明してくれたので,私も興味が湧き,ぜひその歯を持ち帰りたいと申し出て,もらって帰ってきた.

歯の片側(生々しくない方)

まだ抜歯をしただけで,回復後歯の再建を考える必要があるため,すべてが片付くまでしばらく時間がかかりそうだ.全くもって嬉しい体験ではないが,貴重であることには間違いないだろう.

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