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北明翰留学日記 #2 ー社会学よ,はじめましてー

ここ最近バーミンガムは急激に寒くなって,朝目を覚ましてもまだ日が登っていない.日本ほど一年を通した気温差は激しくないようだが,冬はずっと曇っていて憂鬱な気分になると教えてもらった.あまりありがたい情報ではない.

私のコースは社会学専攻なのだが,ビジネススクールの講義もとれるちょっと変わったコースだ.人間の活動は社会学の対象になるはずだから,企業や組織を外側から見てみたい気持ちになったのがこのコースを選択した理由だ.研究のあり方や自然科学と比較したときの社会学への批判,研究する際の立ち位置や手法などを学びながら,リーダーシップ理論や企業のケーススタディなどにも触れている.

これらの一見全く異なる事柄を同時に学んでいるおかげで,マネジメントに関する理論やケーススタディは頭に入ってきやすいし,何より論文が読みやすい.昔神経科学をやっていたので,empirical studyやhypothetico-deductive methodには馴染みがあったが,これまでinterpretivismの論文は読んだことがなかったので,研究者の思考の立ち位置が分からなければどう解釈していいかわからなかったと思う.ちなみに英語のままなのは英語で習ったから日本語訳を調べていないだけで,決して格好つけたいわけではない.

社会学のように人間の活動や社会の事象を研究することには再現性の問題や因果関係をはっきり観察することができない問題がつきまとうので,私は個人的に自然科学のごとき腹落ち感を味わったことがなかった.社会学に対する批判の一つに社会学者は”social laws"を導き出すことができるのか,というものがある.ものすごく雑に言えば,人間の活動をある種の関数で記述できるのか(関数は自然言語でも構わない),という問いだと理解しているが,腹落ち感がないのはまさにここからきているのだと思う.社会学を志す人間は本当は全てが偶然で何も予測できないのかもしれないというある種の諦めと戦わなければいけないのだろう.




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