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AI AF-S Zoom Nikkor ED 80-200mm F/2.8D (IF)

 今年の春、甥っ子が小学生に上がった。その際に妹から写真を撮ってくれと頼まれて、AF-S 70-200mm 2.8E FL ED VR を借りて撮ってきた。70-200/2.8を選んだのは他でもなく「馬鹿の一つ覚えのような写真しか上げられない可能性しかなかったので保険として、"普段からカメラ写真を見慣れていない人"ならば望遠レンズで撮る写真の方が腕を誤魔化せるような良い感想を持ってもらえるだろう。」という最低な発想があったからだ。

 御多分に洩れずいい写真はあまり上げられなかったけど、甥っ子が小学校に上がる直前の初々しい姿と、まだキラッキラなランドセルを背負い更に近所に住んでいて同い年で小学校に上がれる仲良し4人組で一緒に撮る写真ならば、技術が無い自分でも子供の成長というかけがえの無い時間を写し撮れるだろうと踏んでいたので楽しく撮影出来た。

 撮れた写真をその場で妹や他の子の親御さんたちに見てもらう。みんなお優しいお人達で、お世辞か本気か、撮れた写真に感動してくれる。ありがたや…ごめんよプロスキル無い兄で と謝っても「全然そんなことないよ!」と褒めてくれる。イタイイタイイタイ…。

 …そんなシチュエーションの撮影の依頼は時々しか来ないので望遠レンズは自分で所有していなくても今までは都度借りれば良かったんだけれど、今後は気軽に借りれなくなる事情があるので表題のレンズを入手してみることにした。

 取り急ぎ少し外に持ち出してみた。今のところそんなに嫌いな感じでは無い。このまま研究を続けてみようと思っているレンズ。

 以前 Z 70-200mm f/2.8 S や先述の AF-S 70-200mm f/2.8E FL ED VRの両方を借りて撮り比べしたことがあったのだけれど一つ不満な点があった。ボケ味だ。

 AFの速度や合焦面の描写は素晴らしかった反面、正直 後ボケが綺麗に思えなかった。FLタイプ なんかは借りるだけじゃ無くて数年前まで自分で所有していた。その頃撮っていた写真も見返してみた結果の感想だ。控えめに言っても、ボケ方が良いとは感じない。

 実は昨年、NIKKOR Z 50mm f/1.2 SNikkor-S Auto 50mm F1.4 の2本のレンズに教わったことがある。ボケ味・ボケ感の描写だ。具体的にどんなソレが良いものなのか説明するのは難しいけれど、なんとなく言うと 「自然な立体感を感じられる、自然でなだらかなボケ感やボケ方。」

 上記で言った立体感を感じられるボケ表現という言葉としては現行品で恐らく最高の評価を得ている NIKKOR Z 50mm f/1.2 S を設計された方が、古今東西の数多くの50mmレンズの写り方・ボケ方などを研究されている中で、その写り方・ボケ方を評価なされていたレンズ、 Nikkor-S Auto 50mm F1.4 を使用してみた時に、その "立体感を感じられるボケ味" という概念を初めて自分の中できちんと認識した。その時は感動を覚えた。それまではレンズの焦点距離とレンズサイズや質量、開放F値と最新型かどうかと言った所謂 「仕様表」 で入手するレンズを決めていた自分にとって、衝撃が走るほどのパラダイムシフトだった。今まできちんと認識していなかった事に恥ずかしい感情すら覚えた。(時々、うるさいボケ味のレンズには出会っていたけれど。)

謂わばレンズには仕様表に載せられない"個性"があり写り方は全て違う。

 同じ [50mm F/1.4] という性能のレンズ製品が複数種あったとしてもレンズ構成が変われば写り方は全くの別物となり、例えば一般的に "綺麗ではない" とされる収差の残り方や、最短撮影距離などの項目値で優劣を付けられたとしても収差の補正の仕方・残し方で変わる "ボケ味" の評価は好みがあり、ソレは一概に最新レンズが最高だという事にはならない。 収差を補正すればするほど綺麗なボケ味になるという訳ではないのだ。

 そんな"ボケ味"という概念を認識してからは、手元に揃えたい機材についての物差しが変わった。
「ボケ味が綺麗なレンズを揃えていきたい。」

そう思うようになったのだ。

(Nikkor-S Auto 50mm F1.4は古めで安価に入手出来るから と捉えていて、避けてきた訳では無く、スペック上入手する必要性が皆無だったから履修してこなかったレンズだった。)

 そういった価値観の転換が自分の中で起こり、望遠レンズについてもボケ味がより好きだと感じられる物を探していた。候補として(使った事ないので) AF-S 70-200mm f/2.8G VR II を挙げているのだが、中々 良個体に巡り逢えず、先に表題のレンズを手にする機会が訪れた というわけだ。

AI AF-S Zoom Nikkor ED 80-200mm F/2.8D (IF) はAi絞り連動環を有している古めのDタイプレンズだが、最新ミラーレス機でもAFを稼働できる AF-S タイプなので実用には十分の機能が揃っている。手振れ補正機能"VR"は積んでいないが、フルサイズZ機のボディ内VRが効力を発揮してくれた。これまた実用においてはかなり強力に撮影をサポートしてくれる。

 ということで本題のボケ味はというと、先にも書いたが少し使った限りでは先に挙げていた最新型の2本の70-200mmよりも個人的に好きな雰囲気で割と満足している。ただこの子、内側にカビがある…。それだけがツラい…けどこのまま所有しておこうかと考えている。使用頻度は正直少ないし。

 そして機会があればまだ試してない AF-S 70-200mm 2.8G VR II も試験してみたい。けど、なかなか良いものに巡り合えないのよね…。

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