Yasunori Matsuki

名乗るほどでもないインターネットと路上の観察者。

Yasunori Matsuki

名乗るほどでもないインターネットと路上の観察者。

マガジン

  • 分布意味論時代の歩き方

    大英帝国が大西洋横断電信ケーブルを開通させたのが1966年。それ以前もそれ以降も世界中で鉄道への電信線併設や海底ケーブル設置が相次ぎ、米国を代表する詩人ホイットマンはそうした情景を「まるで世界じゅうが蜘蛛の糸で絡め取られていく様だ」と表現しています。そうやって世界の情報網を一つに束ねた結果、最後に現れたのが大規模言語システム(LLM)でした。そういう観点からの投稿を扱うシリーズ。

  • 試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」

    山本義隆「磁力と重力の発見(2003年)」「少数と対数の発見(2018年)」やノーバート・ウィーナー「サイバネティクス(初版1948年、増補1961年)」の重厚な科学史観と現在の「機械学習と意味分布論の時代」を結びつける試み。私にとってはある種のライフワークで、以前の投稿から試みてきた内容の集大成となる予定。

  • 21世紀的フランス革命の省察

    山崎耕一「シィエスのフランス革命」に刺激されて始めたシリーズ。既存のフランス革命に関する知識を再収録しつつ見直していきたいと思います。

  • 数理的溢れ話

    本文では脱線の過ぎる数理関連の話題の収納場所

  • とある本格派フェミニストの憂鬱

    2010年代前半の全盛期Tumbrに滞在した経験を最初の足掛かりに国際SNS社会の未来について考えていきたいと思います。

最近の記事

【分布意味論時代の本棚】「ジョジョの奇妙な冒険」「第五部黄金の風」①「沈黙の美学」は可視化されてこそ?

以下の投稿でこのサイトにおいて「基幹OS部」としたい考え方がまとまってきました。鍵は「任意の観察対象から準安定状態の系統を検出し、それぞれの発生・持続・終焉過程を見定める」進化論的アプローチに集約されていきそうです。 ここからはモデルの解像度を高めるべく、あえて「敵対的生成ネットワーク(GAN=Genera tive Adversarial Networks)」的アプローチ、すなわち「既存分類アルゴリズムを揺るがす様な外測度範囲の事象に考察範囲を広げていく」試みも混ぜていき

    • 【試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」10パス目】「ディープランニングはアフィン変換と見つけたり」?

      今回の出発点はネットで見つけた以下の記事となります。 とりあえず簡便化の為にディープラーニング・アルゴリズムで処理される各データのライフサイクルを経路(route)$${R=\left[r_i\right]_{i=0}^n}$$の線型リスト形式で表現する事にしましょう。 入力層(Input Layer)=第0層 オーディオ機器などにおけるADC(Analog to Digital Converter=アナログデジタル変換回路)」に該当する処理で、システム外で遂行される「

      • 【試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」9パス目】「内臓も考える」とはどういう意味?

        以下の投稿では、2010年代の海外ネットで「男と女どちらが性器で考えてるか?」論争を目撃した話をしました。 改めて再確認しておくと、この投稿シリーズでは「(細胞の集まりである)個体や(個体の集まりである)群の準安定状態の発足・持続・終焉の系統的観察」を進化論的アプローチと呼んでいます。その観点から当時を振り返るに… この場合の観測対象はあくまで内臓全体であり、そこに宿っていると仮定され、抽出対象となるのは「ホメオタシス=準安定性(Metastable State)を可能な

        • 【分布意味論の起源2パス目】「ビッグファイブ理論」なる人格心理学の新境地

          以下の投稿は「傾き1」を積分すると「測度ベクトル」が得られ、さらにこれを時間積分すると「距離」が得られるという話から出発しました。そういう構造論から意味分布に迫ろうというアプローチです。 同時に分布意味論には「言葉が人間をつくる(その行動に影響を与える)」という側面もあります。この分野では人格心理学が何やら新しい動きを見せてる様だ? 人格心理学の最先端?正直言って1980年代、社会学科心理学専攻の学生だった頃の私は臨床心理学や認知心理学に比べて人格心理学なる分野にはちょっ

        【分布意味論時代の本棚】「ジョジョの奇妙な冒険」「第五部黄金の風」①「沈黙の美学」は可視化されてこそ?

        • 【試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」10パス目】「ディープランニングはアフィン変換と見つけたり」?

        • 【試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」9パス目】「内臓も考える」とはどういう意味?

        • 【分布意味論の起源2パス目】「ビッグファイブ理論」なる人格心理学の新境地

        マガジン

        • 分布意味論時代の歩き方
          6本
        • 試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」
          13本
        • 21世紀的フランス革命の省察
          9本
        • 数理的溢れ話
          13本
        • とある本格派フェミニストの憂鬱
          13本
        • 影響工作の脅威
          3本

        記事

          【分布意味論の起源1パス目】漢詩「正気歌」に見てとれる二階微分アプローチ

          以下の投稿で一つのアプローチ案が固まりました。 「重力加速度1(数学でいう「傾き1」)」に任意の次元数のスカラー量 $${α_n}$$とベクトル量$${x_n}$$の組を与えると速度ベクトルFとなる(線型結合表現)。 $$ F(a_n,x_n)=\sum_{i=1}^n a_ix_i=a_0x_0+a_1x_1+a_2x_2… $$ この速度ベクトルFを時間積分すると距離Dが求められる。 $$ \int_0^{t_{max}}F(t)dt $$ 「任意の曲線の各点の

          【分布意味論の起源1パス目】漢詩「正気歌」に見てとれる二階微分アプローチ

          【カール・マルクスの生存戦略2パス目】「永久革命論」スキームからの脱出

          まずは前回投稿で語られた知見について「準安定状態の発足・持続・終焉を観察する」進化論的アプローチの観点からまとめてみましょう。 ドイツにはまず「恣意的に既存の伝統的価値観を揺るがすと判断した発言を様々な形の取り締まりや自粛の強要によって阻止する」権威主義体制が実存し、カント(Immanuel Kant,1724年~1804年)やヘーゲル(Georg Wilhelm Friedrich Hegel, 1770年~1831年)のディスクールの難渋さ、(数学界に物議を醸す研究の発

          【カール・マルクスの生存戦略2パス目】「永久革命論」スキームからの脱出

          【カール・マルクスの生存戦略1パス目】「へーゲル左派(青年へーゲル派)」からの脱出

          下記の投稿にて「準安定状態の発足と持続と終焉の観察」を旨とする進化論的アプローチを発想しました。 ここでいう「観察対象」とは、個体ならば細胞集合、群ならば個体集合によって準安定状態を観察される客体の単位をいう(同時に複数存在し、入れ子構造になっていたり、元の出入りがあったりする)。 ここでいう「情報」とは、例えば任意の個体が共有する「遺伝子」や人間集団の共有する「知識」などを指し、観測の都合上、それは情報化された(客観的に観察可能な特徴が抽出された)状態にあるものとする。

          【カール・マルクスの生存戦略1パス目】「へーゲル左派(青年へーゲル派)」からの脱出

          【試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」8パス目】コンピューター側を観測主体そのもの(Obsever itself)と設定した場合に浮かび上がってくる進化論?

          前回の投稿において「進化とは何か?」なる設問が、最低でも二つの全く異なる成分の合成によって構成されている構造が浮かび上がってきました。 ハーバード・スペンサーが社会進化論で触れている様な「(画一的で貧相な)単純状態から(多様で豊かな)複雑状態への不可逆的変遷」。科学技術やアルゴリズムの系統進化がこれに該当し「時代のニーズと合わなくなって参照されなくなる系統」が出たり収斂進化が起こったりはするものの、原則としてその進展自体は不可逆的である(実は収斂進化の発見は遺伝子解析技術が

          【試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」8パス目】コンピューター側を観測主体そのもの(Obsever itself)と設定した場合に浮かび上がってくる進化論?

          【試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」7パス目】「適者生存」理論の実際の生存競争の現場における驚くべき多様性について

          以下の投稿ではデボン期(4億800万年前~3億6000万年前)、甲殻類(エビやカニの祖先)による捕食を忌避して汽水域(河川と海洋の接続部)に逃げ込んだ魚類の先祖が、海洋生物の大量絶滅を契機に海に戻る景色を描きました。 汽水域(河川と海洋の接続部)、または(さらに陸の奥に踏み込んだ)淡水域に生息していた甲殻類が海に戻って新たな「百獣の王=食物連鎖の頂点」の座を獲得したのもこの時代の話です。 ところで海外ネットには古くから鮫の脳の外観が女性の子宮の形と似てるのに注目して「女性

          【試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」7パス目】「適者生存」理論の実際の生存競争の現場における驚くべき多様性について

          【試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」6パス目】「神学と科学の絶地天通」について

          最近ネットを「約4億5000前に生息していた古代魚サカバンパスピスの適当過ぎる復元模型」が騒がせました。 騒がれた理由は色々あったのですが、そのうち一つが「魚なのに見るからに泳ぎが苦手そうなこと」。しかし実は当時の古代魚の大半はこぞって「泳ぐのが苦手」だった様です。というのも当時の海で「百獣の王=食物連鎖の頂点」の座にあったのは、十数年の歳月を生きて全長5mに達する個体すら存在したオウムガイに代表される甲殻類(現在のエビやカニの先祖)で、迂闊に気持ち良くスイスイ泳いでいると

          【試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」6パス目】「神学と科学の絶地天通」について

          【大数学者や大物理学者の時代パス1】変分法(Variational Calculus)なる物理学と数学の境界線

          以下の四段階技術革新(Four-stage Innovation)史観のうち「大数学者や大物理学者の時代」について掘り下げるシリーズです。 数秘術師や魔術師の時代(イタリア・ルネサンス期~近世) 大数学者や大物理学者の時代(大航海時代~1848年革命の頃) 統計学者と母集団推定の時代(産業革命時代~現代) 機械学習と意味分布論の時代(第二次世界大戦期~現在) 最速降下問題からの出発変分法(Variational Calculus:変分解析学)概念の起源は、このシリー

          【大数学者や大物理学者の時代パス1】変分法(Variational Calculus)なる物理学と数学の境界線

          【試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」5パス目】さよならアノマロカリス、こんにちは魚類?

          以下の投稿では下記四段階技術革新(Four-stage Innovation)史観の大源流として「韓非子」第49編「五蠹」を挙げました。 数秘術師や魔術師の時代(イタリア・ルネサンス期~近世) 大数学者や大物理学者の時代(大航海時代~1848年革命の頃) 統計学者と母集団推定の時代(産業革命時代~現代) 機械学習と意味分布論の時代(第二次世界大戦期~現在) しかしながら、実は実はここで韓非(紀元前280年? - 紀元前233年)が立脚したディスクール自体は古代地中海

          【試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」5パス目】さよならアノマロカリス、こんにちは魚類?

          【試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」4パス目】裏側に透けて見える「信頼できない語り手(Unreliable narrator)としての人類」なるジレンマ。

          さて、以下でざっくりと俯瞰した四段階歴技術革新(Four-stage Innovation)史観ですが… 数秘術師や魔術師の時代(イタリア・ルネサンス期~近世) 大数学者や大物理学者の時代(大航海時代~1848年革命の頃) 統計学者と母集団推定の時代(産業革命時代~現代) 機械学習と意味分布論の時代(第二次世界大戦期~現在) 実はその発想の大元は「韓非子」第49編「五蠹」にあったりします。「史記」によれば、秦始皇帝が読んで著者に会いたくなった諸篇の一つ。 まさしく

          【試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」4パス目】裏側に透けて見える「信頼できない語り手(Unreliable narrator)としての人類」なるジレンマ。

          【試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」3パス目】進化が加速度的に飛躍した「機械学習と意味分布論の時代」

          このシリーズで採用した歴史観は以下。 数秘術師や魔術師の時代(イタリア・ルネサンス期~近世) 大数学者や大物理学者の時代(大航海時代~1848年革命の頃) 統計学者と母集団推定の時代(産業革命時代~現代) 機械学習と意味分布論の時代(第二次世界大戦期~現在) その掉尾を飾る「機械学習と意味分布論の時代」についてですが、以前の投稿で「コンピューターゲームの進化も大きく寄与した」と触れています。 それは今日ではどんな感じになっているのでしょうか? それを紹介するのに都

          【試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」3パス目】進化が加速度的に飛躍した「機械学習と意味分布論の時代」

          【試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」2パス目】「大数学者や大物理学者の時代」の裏側で

          とりあえずの出発点は以下の時代区分。 数秘術師や魔術師の時代(イタリア・ルネサンス期~近世) 大数学者や大物理学者の時代(大航海時代~1848年革命の頃) 統計学者と母集団推定の時代(産業革命時代~現代) 機械学習と意味分布論の時代(第二次世界大戦期~現在) 上の投稿で以下まで明らかにしました。 「数秘術師や魔術師の時代」を終焉させたパラダイムシフトは、虚数や自然対数・指数概念の発見そのものというより、莫大な量の計算計算をあらかじめ済ませて作表し出版する様になった

          【試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」2パス目】「大数学者や大物理学者の時代」の裏側で

          【試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」1パス目】「数学中心史観」拡充からの出発。

          そもそも「数学通史」みたいな世界観に足を踏み入れた発端は以下の投稿だだったのです。 古代から近世に至る磁力と重力の発見過程に注目した大著山本義隆「磁力と重力の発見(2003年)」。 およびその補講的に執筆された欧州における対数と少数の発見過程に注目した山本義隆「少数と対数の発見(2018年)」。 こうして発足した近代科学は現在の「機械学習と意味分布論の時代」にどう接続するのでしょうか? かかる軌跡を探る過程で大きく役立ったのがノーバート・ウィーナー「サイバネティクス(C

          【試論「人工知能概念はいつから存在したといえそうか?」1パス目】「数学中心史観」拡充からの出発。