そして輝くウルトラソウルとはつまるところ一体なんなのか問題

先日、ついにB'zの楽曲がサブスク解禁され、こんな記事が出た。

結局、B'zって何が凄いの?プロの目線で解説する、他のバンドとの「決定的な違い」
https://news.yahoo.co.jp/articles/1b633a8fdb54baa1a5df7b3a318de918eb7654b1

わたしは特にB'zの熱心なファンではないし、逆に、わかりやすく言うと、電気グルーヴを30年近く好きな側の人生を歩む、サブカルクソおばさんだ。ライブハウスに足を運び、数多の日陰ロックバンドをいちいち応援してきた。なので日本最大級に日の当たるB'zを熱く語る理由もないのだけど、数年前、北海道の夏フェス、ライジングサンロックフェスティバルでのライブを見て、ウオーーーーやっぱすげえわ、最高じゃん!間違いない!となった経験はあるので、ひとまずこの駄文を綴ることを許してほしい。

上記の記事では、主にみんなが知ってる代表曲ことultra soulについて書かれていたが、おいお前、ウルトラソウルはそんなもんじゃねえ、と。ちゃんとヘッドフォンして爆音で聴けと。えらそうに言ってごめんなさいね、でもこれは譲れないのよ。

さて、みなさんも、ヘッドフォンかイヤフォンをして、ultra soulを再生する準備は整っただろうか。この続きを読む上で、なるべく左右の音の違いがわかるように視聴してほしい。

https://open.spotify.com/artist/7i9bNUSGORP5MIgrii3cJc

左耳の少し遠くから、ウルトゥラソゥ…ウルトゥラソゥ…と始まるこの曲。サビのメロディーをギターで奏でた非常にキャッチーなイントロだ。今は良い世の中だから、無料でスコアも見られる。https://gakufu.tunegate.me/music/CT00257

まずはよく聴け。

真ん中の松本さん(ギター)は、歌メロをわかりやすく演奏しているので、どうしてもそこに注意が集まるけど、左耳の松本さんはアコギで非常にシンプルにコードをジャン、ジャンと鳴らし、かたや右耳の松本さんはピギャーーだのギュイーーンだの、エレキギターのテクニックの最高峰を惜しげもなく披露している。これぞ松本孝弘神の三位一体なのだ。

「三位一体」とは、ざっくりいうと神は一つだってことなんだけど、左耳のおおらかな演奏の松本さんも、右耳の尖りまくった演奏の松本さんも、そして中央の歌メロの松本さんも、一人の松本さんなので、たぶんこの解釈で合ってる。異論は認めない。てか松本さんさ、神だからいいじゃん。

1番の歌が始まって、真ん中が稲葉さんのボーカルになるが、この基本的な三位一体構造は変わらない。

誰だか知らないが、今回のわたしのこの駄文のためにアップしてくれたんじゃないかと思う動画を発見したので貼る。tab.1のほうが左耳の松本さん(以下左松本)、tab.2が右耳の松本さん(以下右松本)だ。(音は一緒に聞こえるところもあるけど、譜面がそう)

左松本
https://www.youtube.com/watch?v=UtTAfXL2mJ8

右松本
https://www.youtube.com/watch?v=i3V-PfpLw70

完全にわたしが言いたいことがおわかりいただけたと思う。

左松本は、ギターを始めたての中学生男児でも頑張って追える進行。わかりやすく、コードを一個ずつ弾いていく。ジャーーン、ジャーーン、ジャーーン、ジャララ〜ンという基本のストローク。稲葉さんのボーカルに寄り添い、その魅力を引き立てる。太陽のようにギターを愛するものすべてに微笑みかけ、豊かな水を与える。それは肥沃な大地、松本平野である。日々繰り返しひだすら練習し、やっと実を結ぶ、松本平野はそんな母なる大地である。大地をほめよ、頌えよ、土を!

対する右松本は、前出のようにピギャーーだのギュイーーンだドゥロロロロロだの、ギターってまじどこまでいろんな音出るんだよ、のオンパレードである。その物々しさは、正しい装備と経験値の持ち主以外は命を落とす、世界最高峰こと松本山脈と呼ぼう。氷に閉ざされ、足元はものすごい斜面、勇者が伝説の剣とか求めて行くような場所ですよ。HPいくらあっても足りないやつ。

さて、どれだけ頑張りゃいい?って訊かれたってこっちも困るし、むしろどれだけ頑張ったんだよって訊きたいくらいだけど、とにかくギターの練習を永遠に頑張った唯一神こと左右松本は、AメロBメロでそれぞれの持場、松本平野と松本山脈を奏で続ける。そして、夢じゃないあれもこれも、のサビで光が刺す。そう、スーーーーと長音で入るストリングス、これがまさしく大地と山脈の間の地平線のような効果があるのだ。

(ストリングスの長音とはこの人の演奏する鍵盤の音のことを言っています)

古くは、ナイルはエジプトの賜物と言ったが、日の出直前にシリウスが昇るとそろそろナイル川が氾濫し、その洪水によって、肥沃な土壌が運ばれてくると、古代エジプトの人は知っていた。そんなシリウスの光のように、ストリングスの音が左松本と右松本とあいまって、稲葉さんのボーカルを擁し、脳内に正三角となって響く。さっそく言っちゃうけど、わたしは、これこそがウルトラソウルの輝きなんじゃないかと思っている。

サブカルクソおばさんとしてはさ、ギターみたいなモテる花形より、ベースやドラムといったリズム隊のほうが気になる存在なんだけど、ことulrta soulに於かれましては、まったく目立ちません。かろうじて2番の「そして〜戦うウルトラソウ!(ソウ!ソウ!ソウ!…)」のあとに4小節だけ、ベースがフィーチャーされますけど、むしろその直後の左右松本がまさに風神雷神、もしくは阿形吽形のようなギターソロをお見舞いしてきます。その圧に倒されないように、腹に力を込めて続きを聴こう。

Cメロを挟み再びサビへ。左松本の肥沃な松本平野と、右松本の急峻たる松本山脈の中にも、様々な各種松本が奏でられており、ギターだけで何チャンネルあるんじゃい!と思うけど、それは野暮ってもの。松本孝弘さんはもはや興福寺の阿修羅(国宝)だから。いや、三十三間堂の千手観音(国宝)だから。我々市井の民には見えないたくさんの手で、この宇宙曼荼羅を奏でているのです!ドーーーーーン!!

サビを繰り返し、最後、そして羽ばたくウルトラソウ!で我々はもうすっかり素直に、全力で\ハイ!/と飛べる身体になったと思う。そして、イントロよりほんの少し近づいたウルトゥラソゥ…ウルトゥラソゥ…のつぶやきに、自分がこのループから逃れられない、むしろその一部となってしまったことに気づくのだ。

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