見出し画像

入居時にチェック! 鍵の交換費用の負担について【賃貸・不動産事件】

こんにちは、スマート法律相談の弁護士のカツベです。

【質問】
退去するときに鍵の交換代が引かれているのですが、これは許されるのでしょうか?
鍵は大家の方で取り換えるのが当たり前だと思っていました。

ガイドライン上は?

この点について、「国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン (再改訂版)」では、破損、鍵紛失のない場合の鍵の取替え費用は貸主(大家)負担となっています。

●鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)
(考え方)入居者の入れ替わりによる物件管理上の問題であり、賃貸人の負担とすることが妥当と考えられる。
●鍵の紛失、破損による取替え
(考え方)鍵の紛失や不適切な使用による破損は、賃借人負担と判断される場合が多いものと考えられる。

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/honbun2.pdf より

この考え方によると、借主が鍵を紛失、破損していないのに鍵の交換代を借主負担とする合意は無効であるようにも思えます。

事前に契約書の確認を

しかし、家主の中には鍵の交換代は借主に負担してもらうことを前提に家賃を設定していることもあり、そういった場合に、相応の鍵交換代を賃借人に負担させることも、直ちに無効とまではいえないでしょう。

この点については、立場によっても説明が異なっています。

 賃貸アパートの広告チラシ等に、鍵の交換費用は借家人負担とする旨を明記しているものがあります。そのチラシによる広告活動を行い、借家人と契約を締結した場合に、賃貸借契約書にもチラシと同じく「鍵交換費用は借家人の負担とする」との条項が規定されていれば問題はありません
賃借人が居住目的で建物を借りた場合には、消費者契約法の適用があるので、消費者を一方的に害する特約は無効とされます。
よって、単に鍵の交換費用を賃借人の負担とする特約を定めているだけでは無効と考えられます
例外的に、こうした特約が有効になるとすれば、特約について事前に賃貸人から賃借人に説明がなされ、鍵の交換費用を考慮して賃料が相場よりもその分安く設定されている場合などがあるでしょう。

裁判例は?

清掃費用負担特約並びに鍵交換費用負担特約について消費者契約法に違反しないとされた事例(東京地方裁判所判決 平成21年9月18日)があります。

(国土交通省のウェブサイトより)
https://www.mlit.go.jp/common/001005066.pdf

そして、鍵交換費用負担特約は特約そのものが明確に合意されていること、鍵を交換することは前借主の鍵を利用した侵入の防止ができる等賃借人Xの防犯に資するものであること、鍵交換費用の金額も1万2600円であって相応の範囲のものであることからすれば、賃借人にとって一方的に不利益なものであるということはできないから当該特約は消費者契約法10条違反ではない。
また鍵交換費用について、賃貸人が本件ガイドラインに沿った内容と説明したと認めるに足りる証拠もなく、消費者契約法4条2項違反でもない。

この裁判例は鍵の交換代の特約を全て有効とするものではありませんし、また、今後解釈変更の可能性もありますので絶対的なものとまでは言えません。

しかし、1万円~2万円の負担のみで裁判をするというのも現実的ではありません。

交渉の余地があるとしたら入居契約前で、国土交通省ガイドラインでは「破損、鍵紛失のない場合の鍵の取替え費用は借主負担」ということを指摘して契約の変更を求め、それが受け入れられないのであれば、別の部屋を探すか、それでも入居したければ合意を受け入れるのかいずれかを選択するしかありません。

LINEチャットボットで法律相談を受け付けています

「スマート法律相談」は法律相談に回答するLINEのAIチャットボットです。
「個別相談」で弁護士に直接質問することもできます。

↓↓↓↓↓ 友だち追加はコチラ ↓↓↓↓↓

画像1


リリース時に朝日新聞にも紹介されました!


スマート法律相談は、株式会社リーガル・テクノロジーズと、証券会社のシステムを開発する株式会社トレードワークス様が共同で開発しています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?