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ギザギザハートの陸上部 Ⅶ [木彫りの熊]

修学旅行の話を書きたい。徳島の田舎ヤンキーが♫ は〜るばるきたぜ 函館ー♪っと北海道に大挙した。

ニセコのスキー場に2泊して、札幌で1泊する行程であった。野郎ばかりの集団が200人超、さぞかし引率の先生は苦痛を伴ったであろう。

ニセコのホテルではビュッフェ形式で朝、昼、晩と食べ放題であった。ほぼ貸切り状態のホテルでは、周りに最低限の迷惑で抑える作戦が順調に進んでいた。

しかし最終日は札幌である。徳島にはあり得ない大きな高層ホテルにやってきた。

そこで僕はホテルのエレベーターを待つ行列の中で強烈な便意に襲われていた。

トイレを探したがどこにも見つからない。もうすぐエレベーターで部屋に行けると並んでいたが、もう我慢の限界を向かえようとしていた。

俺は全身から脂汗が出てきて、血の気が引くのがわかった。ツインの同じ部屋に泊まるツレに鍵を渡し、

「ちょっ、クソしてくるわ」

と目をカッぴらいた状態で、ラウンジを振り返った。そこにはヤシの木や南国風の植物が植えられていた。俺はその中に入りズボンを下ろした。

ツレが俺を指差して、ゲラゲラと笑っている。正直、恥ずかしいというよりも助かった〜と感じた。

ニセコのホテルでビュッフェを腹いっぱいに食べ、バスに揺られ、ようやく着いた札幌のホテルで長蛇の列に並ばされていたのだ。

しかし、快便であった。ティッシュを持っていなかったので、その辺の葉っぱを使った。

俺のツレは使い捨てカメラで何枚も記念写真を撮ってくれていた。

こんな北国のホテルで南国風の植えこみにウンコする話、これは何十年たった今でも鉄板のネタである。


さて、札幌観光に話を戻そう。テンション爆上がりの野郎どもが自由行動を許される。

「夜の7時までにこのホテルへ戻ってくださいね」

と担任のおばはん先生が声をかけてきた。しかし、それは「今夜中に帰ればいい」と勝手に変換される。

とりあえず同じフロアに泊まるツレと8人くらいで外に出た。

夕方になって、気温もグッと下がってきた。田舎ヤンキーの野郎たちは、

「札幌と言えばパチンコやろ〜」

と訳の分からないテンションの5人が抜けた。僕ら3人でラーメン食いにススキノを目指した。

こんな田舎ヤンキー3人が、初めての地下鉄に乗って、すすきの駅まで何とかたどり着いた。誰かが調べた味噌ラーメンの店を探すのだが、街がデカすぎて迷ってしまった。

風俗や飲み屋のボーイに声をかけられ、びびった田舎者は、摩天楼のような繁華街で怪しい熊の木彫りを買わされて帰ったのであった。



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