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Starbucks OdysseyとスタバのWeb3関連施策の解説

今回の「Web3事例紹介」マガジンでは、有名コーヒーチェーン企業「スターバックス」のブロックチェーン活用施策を紹介していきます。
この記事では、大企業のNFTの導入例の有名なケースとして語られている「Starbucks Odyssey」に関して深堀りし、解説していきます。
またこれに加え、スターバックスが実施したもう一つのブロックチェーン活用施策も紹介します。


Starbucks Odyssey

Starbucks Odysseyとは、2022年に開始され、現在米国でベータテストが実施されている、スターバックスのファン向けロイヤリティプログラムです。
Starbucks Odysseyは、米国で登録者が3,100万人以上存在するStarbucks Rewardsという既存のロイヤリティプログラムの拡張として2022年に発表されました。
Starbucks Odyssey参加者は、Journeysと呼ばれる特定の行動に応じてStampsというNFTを入手可能であり、それを使用することでより効率的にStarbucks Odysseyの特典を手に入れたり、ユーザー間でStampsをマーケットで取引することができます。
まずは、Odysseyの前にその土台となっているStarbucks Rewardsについて紹介します。

Starbucks Rewardsについて

2009年から米国で開始されているStarbucks Rewardsですが、これはいわゆるスターバックスの会員システムで、2017年には日本でも同じものが展開されています。
会員登録費と年会費は無料であり、登録するとスターバックスで使用できるポイントであるStarがスターバックスでの購入金額に応じて獲得できます。獲得したこのStarを使用することで、ドリンクのカスタマイズやフードを無料でもらうことが可能です。

展開されている国ごとに特典の種類やStarの獲得量などは違ってくるのですが、例えば日本では会員登録した時点からある程度Starを貯めるとゴールド会員となり、誕生月特典などを含む限定のコンテンツにアクセスできます。
また、会員向けにパスポートというシステムもあります。
パスポートでは、NFTではないですがコーヒー豆を買った時にコーヒー豆の種類によって違うスタンプをコレクション出来たり、店舗別の限定スタンプをコレクションすることができます。このシステムは少しStarbucks OdysseyのNFTの機能にも似ています。
なおStarbucks Odysseyは、このStarbucks Rewardsに登録しているユーザーのみ参加可能なプロジェクトです。Starbucks Rewardsを土台としていることを加味すると、Starbucks Odysseyの取り組みはそれだけを見るのとは少し違った見え方ができます。
それでは、本題のStarbucks Odysseyの解説に移りましょう。

Starbucks Odysseyの概要

改めて、Starbucks Odysseyとは、2022年に開始され、現在米国でベータテストが実施されている、スターバックスのファン向けロイヤリティプログラムです。
現在ベータテストが実施されているのは米国だけなので、以降は主に米国でのケースになります。
このテストの参加資格も「米国のStarbucks Rewardsのアカウント所持+米国に在住」となっているので、残念ながら日本からは現在は参加できないようです。
まずStarbucks Odysseyに登録したユーザーには、Passportというものが付与されます。こちらは先ほど解説したStarbucks Rewardsのパスポートとは違い、ブロックチェーンにおけるウォレットのようなものです。
パスポート画面には獲得したNFTであるStampsが表示され、これを使用して動かすことになります。
空港の税関を通った時に押されるスタンプを収集するイメージで、パスポートという名称になっているのかもしれませんね。

このツイートの画像にある画面が実際のPassportの画面です。JourneysStampsMarketの文字が見えますね。
これら三つの要素がStarbucks Odysseyの主要な機能となります。それぞれ解説していきます。

Journeys

Starbucks Odysseyの最初の機能に、Journeysというものがあります。
Journeysはゲームでいうクエストのようなもので、

  • Starbacks Odysseyに搭載されているミニゲームをプレイする

  • スターバックスでドリンクを購入する

  • コーヒーにまつわるクイズに答える

等様々な内容のものがあるようです。
Starbucks Odyssey参加者は、Journeysを達成することで、NFTであるStampsがもらえるほか、PointsというStarbucks RewardsのStarとは別のポイントが付与されます。
このPointsを貯めると、Starbucks Odyssey限定の特典へアクセスできるようになります。
なおこのPointsは消費するのではなく、一定量集めるとパスポートがレベルアップして、そのレベルで提供されるコンテンツへアクセスできるようになるというシステムになっています。
限定特典には、

  • エスプレッソマティーニの作り方を教えるオンラインクラス

  • 限定商品へのアクセス

  • スターバックス リザーブ ロースタリーへのゲスト招待

等、通常のStarbucks Rewards会員では得られないものが含まれています。


Stamps

Stampsは、Starbucks Odyssey上で取引できるNFTです。
発行と取引には、速度が速くガス代も比較的安いPolygonチェーンを使用しています。
Stampsの絵柄にはそれぞれスターバックスの店舗やコーヒーをモチーフにしたものが使用されており、Stampsによっては画像ではなくGIFとして動くものもあります。
この記事の執筆時点(2024/1/24)時点で28種類のNFTコレクションが発行されているようです。
各Stampsの見た目はMarketのwebページから確認できます。
https://odysseymarket.niftygateway.com/marketplace/publisher/starbucks-odyssey
Stampsの獲得方法は大きく分けて三種類あり、

  • Jorneysを達成すると無料でもらえるもの

  • エアドロップとして無料で配布されるもの

  • Marketにて限定販売されるもの

があります。
Market機能によって、これら全てがユーザー間でも売買できるようになっています。
またMarketで限定販売されるStampsには、持っているだけでPointsが貯まりやすくなる効果があるものなどもあり、シンプルなコレクション要素のみではなくしっかりとした購入者へのインセンティブを与えるものがあります。

Market

MarketはStampsを販売、購入、出品できる専用のNFTマーケットプレイスです。
Starbucks Odysseyのページは基本的にはログインしないと見れないのですが、このMarketページのみ誰でもアクセスできるようになっています。

https://odysseymarket.niftygateway.com/marketplace/publisher/starbucks-odyssey

このマーケットプレイスはNifty Gatewayというサービスを使用して作成されています。Nifty Gatewayは、海外の暗号資産取引所であるGeminiが保有・運営しているNFTマーケットプレイスです。Starbucks OdysseyのMarketは専用マーケットプレイスとして作成されています。もちろんStampsはMarket外のマーケットプレイスでも取引可能で、2023年の3月には限定のNFTがOpenseaにて0.99ETHで取引されたこともありました。MarketでのNFTの値段帯は安いものは5ドル、高いものだと600ドルほどで取引されているようです。Market上では、NFTはMaticトークンではなくクレジットカードで購入することができるようになっており、暗号資産を使用していることを気にしなくてよいUXになっています。

まとめ

Starbucks Odysseyは、Journeysとそれによって得られる特典、またユーザー間で取引ができるようにNFTなどを導入した、新しいスターバックスの顧客ロイヤリティ施策です。
大企業が顧客ロイヤリティのための施策としてNFTを活用する例はあまり多くはありませんでしたが、スターバックスが先導することによって、他の企業にもこの流れが伝播していく可能性が大いに考えられます。
最後に、スターバックス社のCMOの方の発言を紹介します。

Starbucks Odysseyでの体験は、サードプレイスとのつながりをデジタルの世界へと広げます。
スターバックス社CMO、Brady Brewer

上記からもわかるとおり、Starbucks Odysseyは、ユーザーの「サードプレイス(スターバックス)」とのつながりを、フィジカルな現実の世界からデジタルな世界へと広げるために考案されたプロジェクトです。StampsのMarketやJourneysを通じて得られる体験は従来のStarbucks Rewardsとは少し違う、新しいものになっています。
スターバックスはこの新しいデジタルでの顧客とのつながりを増やすことによって、顧客ロイヤリティを高めようとしていることがわかります。
スターバックスのように、会員制度やポイント制度が存在する企業には特にStarbucks Odysseyが参考になるかもしれません。

補足

Starbucks Odysseyには、非公開コミュニティなので我々は中身を確認することはできませんが、Web3のプロジェクトらしく参加者向けの公式Discordサーバーが存在するようです。
また、Starbucks Odysseyは米国のみの実施になっていますが、今年の1月16日から韓国のスターバックスでも同じようにNFTを使用したプロモーションが展開されています。まだ情報が少なく詳細はわかりませんが、「STAR LIGHT」と呼ばれるプロジェクトのようです。

コーヒー豆のサプライチェーンの可視化、Bean-to-Cup

情報が少なく、おまけ的な紹介になりますが、Starbucks Odysseyよりも前にスターバックスがブロックチェーンを活用した施策を行っていたので、こちらも紹介しようと思います。
こちらは前回のWeb3事例紹介記事で取り扱った内容と同じような、物流にまつわる活用事例です。
スターバックス社は自社が使用しているコーヒー豆の産地やサプライチェーンの情報について、顧客に対しても透明性とトレーサビリティを持たせるためにブロックチェーンを活用しています。
2020年から始まった https://traceability.starbucks.com/ で、スターバックス店舗で販売されているコーヒー豆をスキャンすることによって、その産地がどこなのかを顧客に提示し、だれでもその情報を知ることができるようになっています。
トラッキングの精度はコーヒー豆によってまちまちですが、農場を特定できる豆もあるようです。
また逆に、コーヒー農家たちが自分たちが作ったコーヒー豆が世界のどこに運ばれて消費されているかという情報を確認できるようになっており、生産者もコーヒー豆の流通経路を知ることができます。
この機能の基盤となるブロックチェーンは米マイクロソフト社と共同で作成されており、マイクロソフトのクラウドサービスであるAzureを使用して作成されました。
この機能は米国内では確認できますが、日本国内では使用できないようです。

さいごに

私が代表を務めるクリプトリエでは、企業によるNFTのビジネス活用を簡単かつ迅速に実現する、NFTマーケティング・プラットフォーム「MintMonster」を提供しているほか、法人向けにweb3領域のコンサルティングや受託開発サービスを提供しています。Web3 / NFTのビジネス活用にご興味ある企業様はお気軽にお問い合わせください。

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出典・参考元

The Starbucks Odyssey Begins
https://stories.starbucks.com/stories/2022/the-starbucks-odyssey-begins/
Starbucks Odyssey: From Pay-to-Rewards to Engage-to-Earn Loyalty Programs
https://medium.com/@M3LAB/starbucks-odyssey-from-pay-to-rewards-to-engage-to-earn-loyalty-programs-89633aa3cbda
Starbucks' crypto marketplace is selling pictures of coffee cups for $1,000
https://www.theblock.co/post/226873/starbucks-nft-coffee-cup-1000-crypto
Nifty Gateway tapped to power Starbucks Odyssey market, a Web3 experience
https://www.niftygateway.com/blog/nifty-gateway-tapped-to-power-starbucks-odyssey-market-a-web3-experience
Starbucks Customer Loyalty Statistics and Data (Latest)
https://www.onlinedasher.com/startbucks-statistics/#:~:text=Starbucks Rewards has nearly 31 million active members.&text=Starbucks rewards members are 5.6,10%25 returning within one day
Starbucks Taps Polygon for Its 'Starbucks® Odyssey' Web3 Experience
https://polygon.technology/blog/starbucks-taps-polygon-for-its-starbucks-r-odyssey-web3-experience-nbsp
From coffee bean to cup: Starbucks brews a blockchain-based supply chain with Microsoft
https://www.computerworld.com/article/3393211/from-coffee-bean-to-cup-starbucks-brews-a-blockchain-based-supply-chain-with-microsoft.html
New Starbucks traceability tool explores bean-to-cup journey
https://stories.starbucks.com/stories/2020/new-starbucks-traceability-tool-explores-bean-to-cup-journey/
スターバックス、ブロックチェーン技術で消費者とコーヒー豆農家を繋ぐ
https://coinpost.jp/?p=178010
What's the difference between "Starbucks Odyssey" and collecting stars?[Mblock Letter]
https://www.mk.co.kr/en/it/10917695


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