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NFTを活用したマーケティングとはなにか? 始め方や国内外の事例も紹介

今回の記事では、クリプトリエも大きく注目している分野である「NFTマーケティング」について、その概要、事例、やり方などをまとめてみました。

この記事を見ればNFTマーケティングについて全体感がわかると思います。


NFTマーケティングとは?

NFTとは

NFTとは、「Non-Fungible Token」の略称であり、日本語では「非代替性トークン」と表されるものです。

NFTは、Ethereum等のブロックチェーン上で作成、保存されたデータであり、ERC721などの規格・フォーマットに則り作成されています。

一般的なデータと比べて、

  • 複製が困難であり、複製した物とオリジナルを簡単に区別できる

  • 強いトレーサビリティがあり、誰の手をどのように渡っていって、今誰が所有しているのかをリアルタイムで判別できる

  • 画像や音楽、特徴などをメタデータとして紐づけることができる

という独自の特徴を持っています。

NFTは登場した当初から、「唯一性を持たせることができるデータ」として、Bored Ape Yacht ClubやAzukiなどを筆頭としたNFTアートプロジェクトや、デジタルアートを作成するアーティストによって利用されていました。

しかしその後ゲームにおけるアイテムとしてブロックチェーンゲームで使用されたり、現在ではWeb3ネイティブでないWeb2企業のためのマーケティング施策にも利用され始めています。

また、ほとんどのNFTは基本的に同一または互換性のある規格(ERC-721、ERC-1155等)によって作成されています。ブロックチェーンを基盤としたデジタルアセットを同一の規格で作成することで、複数のプロジェクト間でNFTのアイテムに互換性を持たせることが技術的には可能です。

NFTマーケティングとは

NFTマーケティングとは、単純なNFTやデジタルコレクティブルの販売による収益ではなく、自社のサービスや商品のプロモーション・ブランディングを目的に、NFTをマーケティングツールとして活用することです。

NFTマーケティングにより、新規性の高いデジタル施策による新規顧客獲得や、既存顧客のロイヤリティの向上・LTVの増加を実現し、ユーザーとの新たなデジタルコミュニケーションが可能になります。

NFTマーケティングが注目されている理由

web3市場は数年以内の利用者数や市場規模の爆発的な成長が見込まれている領域です。

また、日本は2022年ごろから国家戦略としてweb3を推進する動きがあり、国内でのWeb3に関する体制は年々整っていっています。
2022年1月に、自民党が「web3プロジェクトチーム」を設置したり、同年6月には、日本政府が国の成長戦略にWeb3.0の環境整備を盛り込むことを閣議決定したり、改正資金決済法が施行されステーブルコインが国内で発行できるようになるなど、様々な発表が前回バブル後に起こりました。

また最近は、2024年4月1日に「日本DAO協会」が設立されるなど、Web3に関連する概念を国レベルで取り入れ、発展させようとする姿勢は続いています。

また、2024年に入り新たに暗号資産バブルが到来しており、ビットコインが円建てドル建て双方でATH(All Time Hi…全期間最高値)を達成、その他アルトコインも軒並み価格が上昇しており、Web3へ資金や人材の流入が増えていることも確認されています。

これらのバックグラウンドを含めて、2024年もWeb3やDAO、NFTに関連する事例は増えていっており、またそれに伴いNFTマーケティングへの注目度も上昇しています。

NFTマーケティングを実施するメリット

NFTマーケティングを行うメリットには、大きく分けて以下の3つがあります。

メリット1:新しいユーザー層に対する効果的なマーケティング施策

NFTを活用した新規性の高いデジタルマーケティング施策の実施により、スマホユーザーを中心とした目新しい施策に敏感な若年層を中心とした新規ユーザーの獲得を期待できます。

電通の行った調査によると、Web3という単語は、Z世代の男性、つまり10代∼20代の男性による認知度が最も高いという結果になっています。NFTマーケティングは、デジタルネイティブなZ世代への効果的なマーケティングの手段の1つだといえます。

メリット2:ユーザーとのエンゲージメント強化と新しいユーザー体験の提供

NFTをマーケティングに活用することで、ユーザーとの新しい関わり方を生み出すことができます。例えばNFTをユーザーに配布し、NFTホルダーのみ特別な体験を提供したり、コンテンツにアクセスできるようにしたりすることで、ユーザーのエンゲージメントとロイヤリティを高めることができます。

NFTには単なるデジタルアイテムとしての価値だけでなく、NFTホルダーに対してさまざまな特典(ユーティリティと呼ばれます)を付与することも可能です。配布したNFTをきっかけとした、リアルイベントへの参加権や限定商品の購入権、メタバース内での特別な体験などを提供することで、ブランドとユーザーを結びつけ、新しいユーザー体験を創出することができます。海外でも大手ラグジュアリーブランドのNFT活用が相次ぐ理由はここにあるのかもしれません。

また、SNSを活用してNFTホルダー同士のつながりを促進し、コミュニティを形成することも可能です。ブランドはこのコミュニティを活用して、ブランドとユーザーとの双方向のコミュニケーションを促進したり、ユーザー同士の交流を活性化させることで、ブランド価値とユーザーロイヤリティの向上に大きく寄与します。このようにNFTはファン同士のつながりを可視化したりすることにも長けているので、ファンコミュニティの形成にNFTの活用が期待されています。

メリット3:従来にはない新たなマーケティングデータの取得と分析

ユーザーの持つウォレットやNFTを通して得られるオンチェーンデータと、企業がクローズドに持つユーザーの個人情報や活動履歴などのオフチェーンデータを掛け合わせることにより、今までにはないアプローチでマーケティングデータの取得と分析が可能になります。

またオンチェーンデータはすべてブロックチェーン上にオープンに公開されているので、既存のユーザーでないすべてのウォレットからデータを収集することも可能です。

オンチェーンデータをマーケティングデータとして処理、分析する方法はトークングラフマーケティングと呼ばれています。これは従来のメールアドレスなどのソーシャルグラフを使用したマーケティングを、Web3版に置き換えたものだと言えます。

しかし、ウォレットを持つ人がそれほど多くなく、使用できるアプリケーションも発展途上である現在は、オンチェーンデータだけではなく既存の手段であったオフチェーンデータの使用を組み合わせて、マーケティングの成果を出すことが求められています。

NFTマーケティングを実施する際の課題点

しかしながら、NFTマーケティングは万能なマーケティング手法というわけではありません。以下のような課題に気をつけないと、かえって悪い効果を生み出してしまう可能性があります。

課題1:NFTの配布のみで終わってしまう

何も考えずにNFTを配布するだけだと、NFTを使用した施策の成果として得られるのは、NFTを配布した先のウォレットアドレスのみになってしまいます。また、ウォレットアドレスに対して、現在は特に効果のあるアクションを企業が取ることができないため、継続性のある施策に繋がらず単発の施策に終わってしまう場合があります。

そうならないためには、ただNFTを配布するだけでなく、その後のアクションを事前に設定したり、ウォレットアドレス以外の情報も収集して、NFTをしっかりと活用する仕組みを検討する必要があります。

課題2:NFTを受け取るユーザーがNFTに価値を感じない

ユーザーが価値を感じないNFTを配布しても、すぐに忘れられてしまう可能性があったり、かえってユーザーの満足度を下げてしまいかえってブランドイメージを損なってしてしまう可能性があります。

それを防ぐために、ユーザーがNFTを受け取ったことにより価値を感じてもらえるようなユーザー体験やユーティリティ(特典・権利・証明などの付与)の設計を行う必要があります。

例えば、コレクター欲を刺激するような特定のファン層に向けたコンテンツと連動したNFTや、ターゲット層を絞らずともクーポン・チケット・会員証などの実用的価値のあるユーティリティを提供するNFTであれば、ユーザーの満足度を高めると同時に、企業・サービス・商品に対するロイヤリティを向上させるのに役立つでしょう。

課題3:初心者に優しくないUI/UX

現在において、暗号資産・NFTの保有という行為は、全くそれらを触ったことがない人たちからすると、ウォレットの鍵の管理などハードルが高いものになっています。

NFTの受け取り時にユーザーにMetaMaskのようなWeb3ウォレットを使わせるのはハードルが高いため、いかに簡単にNFTを受け取れる仕組みを提供するかが鍵となると我々は考えています。

また、NFTの発行と配布にあたり、ガス代等の支払いのために企業は暗号資産を保有する必要があります。

しかし企業による暗号資産の保有は会計上の論点となる場合があるため注意が必要です。

NFTをマーケティングで活用する方法の例

それでは、具体的にNFTマーケティングについて考えてみましょう。

NFTマーケティングと相性の良い分野ををジャンル別に分け、それぞれの施策の例を考えてみます。

NFTxスポーツ・エンタメ

スポーツやエンタメ領域はNFTマーケティングと特に相性が良いとされており、先行事例も多く存在します。

例えば、試合やライブなどの各種イベントの参加者に参加証明的なNFTを配布することで、初期・古参のファンであることを証明できるようなります。

また追加のユーティリティとして、初期・古参または何度も参加してくれているようなファンに対しては応援してくれたことへの感謝も込めて、特別な特典を付与できます。この特典については、初期のNFTのホルダーに対し特別な限定イベントへの招待状を送付したりなどが考えられます。

また、特にファンコミュニティや推し活のコミュニティに対しては、NFTによってできるデジタルコレクティブル(コレクションとしての価値があるもの)という特性は訴求力が高く、高いマーケティング効果が期待できる他、NFTグッズの販売を通してマネタイズポイントにもなり得ます。

例えばアイドルのグッズをNFTのデジタルブロマイドなどとして販売することを考えてみます。

既存のものではデジタルブロマイドはただのデータなので、客観的に証明ができる発行枚数やレア度などを設定することは難しかったのですが、ブロックチェーン上のNFTであれば発行枚数を限定したり、レア度を含む特徴を細かく決めることができます。

また物理的なアイテムと違いトレーサビリティがあるので、誰から誰にどのような金額で二次流通されたかなどの計測も可能であるほか、インタラクティブなNFTにすることでデジタルデータならではの特殊なギミックを搭載することも可能です。

またこれらの他にも、シンプルに電子チケットをNFTにすることによって、トレーサビリティを活用し追跡や管理を容易にすることもできます。

NFTxO2O / OMO

NFTはO2O(Online-to-Offline:オンライン上の活動を通じて、オフラインの実店舗での購入やサービスの利用を促進する取り組み)やOMO(Online Merge Offline:オンラインとオフラインを融合させシームレスな消費体験を提供する取り組み)とも相性が良いと言えます。

店舗送客や購買促進を目的として、顧客が来店するためのフックとしてや、あるいは商品購入時の特典としてNFTを配布するという形式が考えられるでしょう。

その際、ただNFTを配布するだけでなくユーティリティーを追加しても良いでしょう。NFTをクーポン等の店舗で使用可能なモノにすることで、より顧客に価値を感じてもらうことができます。

また別のユーティリティの例として、一定数集めると追加の割引や特典などを付与することによって、ユーザーのロイヤリティを高めると同時に来店人数や顧客単価の向上を実現することが可能です。

NFTxSNSマーケティング

SNSマーケティングにNFTを利用することを考えてみましょう。この2つの分野はどちらもZ世代への訴求力があるという点でシナジーがあります。

例えば、SNSを用いたオンラインキャンペーン・デジタルマーケティングを行う際に、ユーザーの行動の対価としてNFTを付与するなどが考えられます。

X(旧Twittet)の公式アカウントのフォローや特定投稿のシェアをしたユーザーにNFTをプレゼントし、またそれらの所有の度合いによってクーポン等の特典を与えるようにするなどが考えられます。

これについては他のジャンルの施策と併用するとより効果を促進できます。

NFTxゲーム

ご存知の方もいるかもしれませんが、NFTゲーム、ブロックチェーンゲームと呼ばれるものがNFTマーケティングとは別で存在しています。Axie Infinityなどがその際たる例ですね。

ゲームを使用したNFTマーケティングの例としては、既存のWeb2企業がブロックチェーンゲームとコラボし、ゲーム内で使用できるアイテムとして、自社の製品やIPなどをモチーフにしたNFTを実装する等が考えられます。NFTという企画を利用して、複数のゲームに対応させることも技術的には可能です。

また、逆にゲームプロダクトを持っている企業は内部にNFT等を組み込むことによって、部分的にNFTゲームにすることで、純粋なゲームプレイヤーだけでなく通常は断絶されているNFTに興味ある人の層にもリーチできます。

NFT化に関しては、スキンなどのゲームバランスに関係ないグッズをNFT化することにより、ゲームのエコシステムに影響を与えずにレア度の調整や二次流通市場が作成でき、追加のキャッシュポイントにもなりうると言えるでしょう。

NFTx地方創生

NFTマーケティングは地方創生とも相性が良いと言えます。

例えば、地方創生を目的として、NFTを使用して観光地の各スポットでデジタルスタンプラリーを行うという施策を考えてみます。

スタンプをコンプリートした人には地域で使えるクーポン等を配布することで、地方創生・地域活性化を狙うことができます。

また、SNSマーケティングなどと併用することによって、Z世代などの若年層へのリーチも可能になります。

関係人口の増加を目的に、NFT保有者のコミュニティを作り、地域を盛り上げていく等の取り組みも増えています。

NFTマーケティングの先行事例

ここでは、上記に紹介した例などを含む実際の先行事例を紹介します。

NBA TopShot

NBA Top Shotは、ファン向けグッズのNFT活用の例として、大きな成功を収めているプロジェクトです。

これは全米バスケットボール協会(NBA)が公式に運営しているNFTプロジェクトで、バスケットボールの試合のハイライトをNFTにしてコアなファン向けに販売しています。

2020年後半あたりにローンチされ、2021年1月に爆発的に成長しました。CryptoSlamによると、2021年1月だけでTop Shotは19,000人以上のユニークユーザーから合計4,050万ドル以上の売上を達成しており、さらに2月には、1日で4,500万ドル以上を売り上げるなど、合計で2億2,400万ドル以上の売上を記録しています。

販売されている選手・試合のハイライトのNFTは「モーメント」と呼ばれ、ユーザーはNFT化されたモーメントをクレジットカードやイーサリアム(ETH)などを用いて購入できます。

クレジットカードで購入できるという点で、触ったことのない初めての人にも優しい設計になっています。

またモーメントは二次流通市場であるマーケットプレイスから単品で購入できるほか、ランダムなモーメントが複数封入されたガチャのような販売形態として「パック」というものが存在しています。

これはNBAのファン向けに、NFTを利用したデジタルグッズを販売するという施策です。単純なデジタルデータでなくNFTにすることにより、二次流通市場の作成が可能であり、この市場を通じて新たな体験をユーザーに与えられています。

Asahi 十六茶「新垣結衣NFT」

飲料品メーカーのAsahiは、2023年5月から9月にかけて、十六茶30周年を記念するプロモーションとして、新垣結衣NFTを含む様々な特典が当たるキャンペーンを行いました。

このキャンペーンには、LINEを通じて参加でき、応募者は十六茶を購入し専用の二次元コードをスマホで読み取ることによってキャンペーンに応募できました。

景品の中には、楽天ポイントやPayPayポイントなどの電子ポイントのほか、電子カタログギフトもありましたが、その中に女優の新垣結衣氏の写真がNFTになった「新垣結衣NFT」が含まれていました。これは大当たりとして用意されたものであり、他の景品はそれぞれ1,000人かそれ以上に当選していたものの、このNFTは100人限定となっていました。

また、このNFTはLINE Blockchain(Finchia)を使用して発行されており、受け取りにはLINE BlockchainのウォレットであるDOSI Walletが必要でした。そして、これは転売、移管のできないように設定されていました。

NFT Mediaによる取材によれば、うまくいった点として「新垣結衣さんのNFTというフックの強さを活かしきれたこと」と話しており、「ガッキーのNFTをもらえるならやってみようかな」という反応はSNSで多く見られた」と話しています。

確かに私の記憶でも、これが出た当時は様々な人がX等で話題にしていたことを覚えています。

キャンペーンとNFTの配布を通じて、顧客のロイヤリティが高まったと評価しているともありました。

ANA 「ANA GranWhale NFT MarketPlace」

ANAは、2023年5月から独自NFTマーケットプレイス「ANA GranWhale NFT MarketPlace」を展開しています。Opensea等に似た形のマケプレで、独自のNFTを作成し販売しています。

現在は航空機ファンやANAのコアなファンをターゲットとしており、価格帯は数万円以上のものから数千円のNFTまで様々なものがで販売、取引されているようです。
有名な航空写真家とコラボし、その写真家がとった写真のNFTが良く販売されているほか、ANAの飛行機内で流れる音楽をNFTにしたもの、Meebitsを模したAirbitsというプロフィール写真に使用できるNFTなど、さまざまな種類のNFTを取り扱っています。

このマーケットプレイスは、Web3などを活用したデジタル事業の拡大と地域創成での関係人口づくり、またZ世代や海外顧客へのマーケティングを目的に展開されているもので、航空関連のNFTの販売だけでなく、地方創生なども目的にした地域の名産品などをNFTと紐づけることも視野に入っているようです。


博報堂/JAL「KOKYO NFT」

KOKYO NFTは、博報堂とJALが協業してプロデュースしているNFTです。

このNFTは有料かつ比較的高価なもので、そのユーティリティーに大きく焦点を当てたものになっています。

また「保有することで各地域の特別なアクティビティを体験できるNFT」であり、購入、保有することでそのNFTに沿った日本の観光地への旅行と、その地域での特別な体験ができます。

2023年2月にKOKYO NFTの第一弾が出ており、現在行われているものは2024年2月に発表された第二弾です。

第二弾では6種類のNFTが提供される予定で、「洞爺湖花火NFT」や「越前打刃物NFT」といった、観光地とその場所で有名なものがセットになったものが販売されています。

「洞爺湖花火NFT」では、

  • NFTホルダーオリジナル花火の打ち上げ体験

  • 花火製造ワークショップへの参加権

  • 遊覧船からの特別な花火鑑賞

「越前打刃物NFT」では、

  • 越前打刃物の職人とMY包丁作り体験

  • 和紙・漆・木工職人が手がけたオリジナルの柄からお好みを選ぶ

  • 越前鯖江の伝統工芸に触れる産地ツアーへの参加

といった風に、NFTを所有することによってその地域特有のイベントへの参加権が得られるようになっています。

NFTを所有するとともに、これらの体験を同時に行えるようにすることによって、所有者に新たな価値を感じてもらい、地方創生にも繋げるという狙いを持つプロジェクトです。

NFTマーケティングの始め方

NFTを活用したマーケティングを始めるにあたり、いくつかのステップが存在しています。まずは何をNFTにするのか、ブロックチェーンの特性を活かした設計ができるのかを「企画」する必要があります。企画が完了したら、次に技術的な設計の「発行」と「配布」、その後は長期的な「活用」施策と「効果測定」など、色々考えないといけないのですが、まず前提としてNFTを活用したプロモーションなどのマーケティング施策で何を向上、もしくは改善させたいのかを明確にする必要があります。

いちばんよくあるのが、買い物したらもらえるポイントや会員権システムのようなロイヤリティプログラムの実施によるLTVの向上、NFTという新規性の高い取り組みを実施することによる企業の先進性のアピール、ブランド愛や最近の言葉で言う「推し」の強化、新規顧客獲得のためのフックを増やすことなどが期待できます。また、これらの施策を活用して新製品や値引きのプロモーションを打ったり、ブランド認知力の向上が狙えたりと様々な活用が可能です。

このような活用方法の中からゴールを設定することで、どのユーザーにどのようにアプローチしたいか、そしてNFTを活用したプロモーションが本当に相性がいいのかを判別することができます。特にゴールを新規顧客や新規認知の獲得、ロイヤリティプログラムなどの顧客のエンゲージメント向上とする場合はNFTの新規性と相まって相性がいいと言えるでしょう。次に最初に触れたいくつかのステップを分解して解説していきます。

  • 企画:設定した目標をNFT活用によってどう達成していくのかを設計するために、どのようなNFTを作り、どのような層に届けたいかを企画します。利用券やクーポンのようなチケット代わりにNFTを利用するのか、それとも何かのコンテンツやイベントへのアクセス権にするのか、実際の想定されるターゲットに応じたニーズにマッチするか、ブランドイメージの毀損にならないかなどを考える必要があります。

  • 発行:少し技術的な話になりますが、どのブロックチェーンの上にNFTを発行するかもこの段階で決まっているとすごくスムーズに全体の設計が可能です。例えば銀行口座にも、安心感のあるメガバンクや老舗の地方銀行、流行りで手数料が安いネット専業銀行などの種類や特徴があるように、ブロックチェーンもいくつかの特性をそれぞれに持っています。例えば、手数料は高いけど資産の安全性が高いとされるイーサリアムや、手数料が安いPolygonやAvalancheと言ったような新興チェーン。どれだけの人数に配布するかはもちろん、サステナビリティを重視したチェーンもあるので企業の「ESG」的な意向に沿ったチェーンを選択することももちろん可能です。

  • 配布:チェーンを選んだ後はNFTをどう配布するのかを決める必要があります。無料かつ手動で配布する仕組みなのか、クーポンのように自動で受け取ることができるものなのか。それともチケット形式で販売したいのか、どのようなNFTにしたいかなどの条件に応じて、それぞれのニーズにあったツールがあり、ゼロから開発しなくても大丈夫な場合は、発行配布部分のコストを押さえて施策を打てるので、少ない予算感からでもNFTマーケティングを始められます。

  • 活用:企画と発行、配布をして終わりだとせっかく獲得したユーザー情報を活用しきれていません。従来のマーケティングにもあるように、集めたユーザー情報を継続的に活用することは、新規にマーケティング施策を実施してユーザー情報を収集するよりも低いコストで高いマーケティングの効果を得られるため非常に重要です。例えばロイヤリティプログラムの実施で、会員権的にNFTを発行した場合、そのNFTを保有するホルダーに継続的に特典を付与するのは一つの手です。その他にも二次流通によって収益が生まれる設計にするなど活用法は様々です。

  • 効果測定:最後に効果測定です。従来のマーケティングではユーザーの導線を取得したり、アクセスやコンバージョンを解析したりする手法が一般的ですが、これらの情報に加え、NFTは勝手にブロックチェーン上でNFTの動きが記録されていきます。いわゆる「オンチェーンデータ」として溜まっていくNFTの動きの情報は、次のマーケティング施策への活用や、顧客からのフィードバック材料として適しています。NFTホルダーのウォレットを分析することで、ホルダーの属性なども分析することができます。

NFTマーケティングを成功させるためには

NFTを活用したマーケティングにおける「成功」とはなにか、それはNFTの施策を始めるときに設計した「目標」を達成できたかどうかだと言えます。そしてその中でも「NFT」によって生み出された付加価値が大きければ大きいほど、NFTマーケティングに置いては「良い施策」だったと言えるでしょう。

このような新たな技術や分野のものを活用した施策では、成功させるための黄金パターンというよりも、どのようなことを行ってきて「失敗」したのかという部分から解析する方が近道なケースが多いです。私たちが見てきた中で、こういうケースだとうまくいってないなという事例をいくつか正直にまとめました。

  • 自社のアセットとブロックチェーンのシナジーがあまりないまま使用してしまったといった相性の誤解

  • 短期的に効果が見えづらいので、すぐに撤退してしまったというタイミングの悪さ

  • 単純にコストをかけすぎていて、施策の効果が見合わないという設計ミス

  • 過激なプロモーションやニーズの見落としによる顧客からの信頼度の低下

他にも細かいものがありますが、ざっくりこのような点が挙げられます。その他にも成功事例や失敗事例はたくさん情報がでてきており、このnoteでも事例を頻繁に取り扱っているので興味があるかたはそちらも見に行ってみてください。

まとめ

長くなってしまったので、最後にまとめておさらいしていきましょう。

NFTマーケティングとは?

→単純なNFTの販売による収益ではなく、自社のサービスや商品のプロモーション・ブランディングを目的に、NFTをマーケティングツールとして活用すること。

NFTマーケティングにはどのような利点があるのか?

  • 新しいユーザー層に対して効果的に到達できる

    • 特にZ世代へ効果的にマーケティングできる

  • ユーザーとのデジタルコミュニケーションの創出

    • ユーティリティや特典のあるNFTを配布することによってロイヤリティの向上が見込める

  • 従来にはない新たなマーケティングデータの取得と分析

    • オンチェーンのデータとオフチェーンのデータを組み合わせることでより効果的な分析が可能

NFTマーケティングを実施する際の課題点は?

  • 配布のみで終わってしまう

    • NFTを配布してウォレットの情報だけ収集するのではなく、それ以外の情報と紐付けたり、その後のアクションを想定することで継続性のある施策に

  • NFTを受け取るユーザーがNFTに価値を感じない

    • NFTの配布を行う際は、ユーザー体験やユーティリティー(特典・権利・証明などの付与)を考えなければいけない

    • 収集欲を刺激する、あるいは実用的価値のあるNFTの設計をして「NFTを受け取った価値」を感じてもらい、ユーザー満足度を高める

  • 初心者に優しくないUI/UX

    • 暗号資産の保有という行為は、初心者にとってはとてもハードルが高いため、いかに簡単にNFTを受け取れる仕組みを提供するかが重要

    • 企業による暗号資産保有は会計上の論点になる場合が多いため注意が必要

NFTを利用したマーケティングはまだ開拓され始めて時間が経っておらず、NFT自体もまだ浸透していない新しい領域です。しかし、同時に大きな力を秘めた領域であると考えています。NFT技術やブロックチェーンがマスアダプションしていくにつれて、これらの問題は解決されていき、NFTマーケティングはより大きな効果をあげてくれるようになるでしょう。

また我々は、企業がNFTマーケティングを効果的に行うためのプロダクト「MintMonster」を提供しています。

NFTやトークンを普通に扱うにはUX等のさまざまな問題がつきまとってきます。

これを初心者が違和感や離脱なく受け取れるように整備するのにはとてもコストがかかります。

これらの複雑な工程を計画から配布まで一括でサポートするのが「MintMonster」で、誰にでも手軽に、NFTを配布・活用できます。

興味のある方は、MintMonster公式サイトまでお越しください。

今回はNFTマーケティングの事例についてはそこまで細かくは取り上げなかったので、次回以降に投稿予定のnoteで細かくNFTマーケティングの事例を紹介する予定です。

乞うご期待ください!

また、私はこのnote以外にX(Twitter)でもWeb3に関する情報発信をしていますので、ぜひnoteへのスキ/フォローに加えてXのフォロー/いいねもいただけたら嬉しいです!

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https://twitter.com/yasuo_tezuka

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