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忘却と美しさと踊る無音

見た目はどうでもよくはないけれど
別に全てでもないんだ
言っている意味がわかる?

どうでもいいってことではなくて
だからって全てってことでもない

いつのまにか雨も上がって
無音の点線 宇宙をかたど
もういいかい もういいよ

襟首を切ったティーシャツみたいに
ゆるやかなテンポで話してよ

"忘却は人類の敵か?"
博士はそう聞いた
胸ポケットになんでもいれる男は
眼鏡を拭くのに忙しい

yeを聞いてるわたしたち

深海で考えごと暗号たち
熱海で考えごと線香花火
彼は滲んだインクのような魂を持っている
コンセントをささないと動かないけれど

整形手術できみの問題は解決するかい?
ゆめのなかの図書館には
珈琲は置いていない
めがさめてしまうからね

真夏日に外に出しっぱなしだった
鉄板みたく暑くなった地平線
揺れて沸騰していた
夕日が沈んでゆくころ あのころ

心の中にある
いつだって解決方法は
深い心の森の中に
苦しくない 嬉しくなる
梢が太陽の力を借りて作った
光と影を踏んで踊る足の裏
もう何も言うな

汗をかいた肉体
筋肉に薄く脂肪がついていて
よろこびに打ち震えている
誰かは醜いと言ったが
わたくしには美しく見えている

さあもう一杯
濡れたグラスの中の酒
飲み干したら 踊ろう

満月を記念してあけられた
チューハイのプルタブの音が
野暮な質問はかき消した
放っておきなよ
わかっていないひとたちなんて

美しさってそんなものじゃない
きみは美しくって
けれどそれがきみの全てでもない
どうでもいいことだよ
博士はすべてを忘れてしまったよ
忘却は博士の敵ではなかった
ああわたくしも 忘れてしまいそうだ

きみのうつくしさのほかにはなにも


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