ということ

こそいだ意図の縒った繊維
誰かの天使だったあの人
泣けない朝に 窓越しのひかりを
窓越しのひかりを見ること

たぶんだけど
陰影の作り出す図形に
意味ではなく美しさを見出して
お下がりのエムエーワンを着てること

抽象的な曲線を持つウンベラアタ
花の蜜に似たゲヴェルツの話
ユキヤナギをゆびさきで愛でながら
ひたひたと温度を飲み続けること

この社会は生き辛くて
そんなもの ずっと昔からで
今更 死ぬほどのことでもなくて
ただ そばにいると
あなたのそばにいると
いつもよりは息がしやすいということ

傷ついてきたのだということ
髪型はあなたがすきなものということ
下に肌着を着ないと
まだすこし 肌寒い季節だということ

ひとの醜さを見て
ひとの弱さにうちひしがれ
きたない、きたない、きたない
誰も触れるなとさけんでは 痛くて
それでも世界を愛していて
だれかに愛されたくて
ひとを愛してしまうということ

珈琲豆の馨り
流線型のレコオドの話
白く焼けた川沿いの町
影を道路に 灼きつけて歩く
ということ

愛し方さえ知らずに
それでも愛しているという、こと

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