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ただ 時が

ただ 時が過ぎた

時が過ぎて
季節も景色も何もかも
変わってしまった

わたしも変わって
あなたも変わった

ただ通り過ぎていった

玄関の前 星空の下
ぬかるみの中を歩く農夫の
ちいさな息を吐くおと

かこ は かこ
かわ ここ か

喉を潤す けものたちのよこ
かわのほとりで
腰を下ろして つちにふれる
すこしぬれていて すこしぬれている

暮れてゆく日の蝶番が
かちゃかちゃと音を鳴らすたびに
今が去って またやってくる

正しい 正しくないはわからない
心地いいか よくないかで
暮らしている ちっぽけな塵の粒
わたし ちいさないのちのわたし

どうせ金にもならない癒しにもならない
のならば 捨ててしまえ そんなもの
持っているだけ 手が疲れるだけ

やさしいけものが ぬれたはなを
みみにつけて あたたかい息をはいた
顔を寄せると 毛がふわふわで
なぜだか涙が出てくるのでした

まんてんのほし
球体の内側からみてる
魚眼レンズのような夜空

ぽつ とできた発疹も
いつのまにかきえた

だれがわるいとかはよくわからない

ねころがったつちがつめたい

あのひのわたしを構成していた細胞は
もうたぶん ぜんぶいれかわった

てをはなしたのはどちらからでもない

ただ 時がすぎた


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