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マロン内藤のルーザー伝説(その10 救世主Sさんとの出会い)

さて、ここで話をメインアジェンダである1976年製ポルシェ930ターボ(愛称ター坊)に戻そう。購入以来エンドレスに発生し続けるトラブルに抜本的対策を講ずべく、ポルシェの専門家が在籍するお店の門を叩くことを漸く決意したマロンは、可及的速やかに様々な情報を収集・分析・評価した。

「日本でのポルシェ輸入販売といえば何はなくともミツワ自動車」というのがマロン世代にとっての常識であったのだが、実は本国ポルシェが設立したポルシェジャパンの営業開始に伴い、ミツワ自動車は1997年からポルシェの正規輸入権を失っていたのである。「ドイツのご本社様が設立した会社であれば、絶対間違いないだろう」という、所謂だろう運転思考の私は早速最寄りの店舗を検索した。なんと奇遇にも職場から徒歩圏内に大きな店舗が営業しているではないか。灯台下暗しとはこのことである。すぐさまター坊を連れてその店舗に向かったのは言うまでもない。

ポルシェセンターというその真新しい大きな店舗は、1Fが広大なショールームになっており、自宅のそれよりはるかに分厚い真っ赤なカーペットの上にドイツから輸入された新車が整然と展示されている光景は実に眩しかった。

当然ながら、狙いの顧客層は富裕層であり、ショールームで展示車のハンドルを握り、営業スタッフと楽しそうに談笑している方々は、しがないサラリーマンの私とは見てくれからして全く異なる世界の住人ばかり。私は明らかに場違いであった。

気後れしている私にも、高級外車ショールームにふさわしい凜としたたたずまいの受付嬢から営業スマイルと共に香り高いホットコーヒーが供された。ポルシェの味がしたのは気のせいであろうか。うっかり高級クラブの扉を開けてしまい、チーママから「ここはあなたの来る場所でなくてよ、火傷する前にとっととお帰りなさい。ほほほ・・」と嘲笑される一見さんという構図であったことは否めない。私はありったけの勇気を振り絞り、アフターサービス部門責任者との面会を求めた。

実は綿密な事前調査の結果、ポルシェセンターでは中古ポルシェの無料診断・リフレッシュプログラムなる企画が展開されていることをマロンは知っていたのである。これで我がター坊もたまりにたまった30年間の垢をきれいさっぱり落とし、新車とまではいかないまでも、本来の輝きを取り戻すことができるはず、とリフレッシュプログラムに大いに期待を寄せたマロンであった。ター坊にとっては、スーパー銭湯ならぬ、高級エステサロンのアンチエイジングプログラムといったところであろうか。

程なくして現れたサービス部門のリーダーSさんは、他の接客スタッフとはやや雰囲気の異なる実に気さくで誠実そうな若きリーダーであった。「それは色々大変でしたねぇ。早速無料診断してみましょう」Sさんの口から出た心強い言葉に「これでやっとモグラたたき地獄から脱出できる・・」あたかも龍角散トローチを一気飲みしたかのようにそれまで私の頭上を覆っていた真っ黒な霧がすーと晴れていく気がした・・

無料診断の結果は次回に続く・・

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