見出し画像

バリ島 音楽と芸能の旅2024 -4.ガムラン楽器を購入する

少し間があいてしまいましたが、久しぶりにバリ紀行の続きを書いてみます。今回は、この旅行の2つ目の大きな目的であった、ガムラン楽器の購入に奮闘した話について書いていきます。

私は現在、ジャワガムラン、バリガムランの両方を東京でそれぞれ習っています。ジャワのほうはここ数年、バリはまだ始めて半年程度です。中部ジャワのガムランは宮廷を中心に発展し、王宮内で演奏されてきたため、とても優美で陶酔するような音楽です。バルンガンと呼ばれる骨格旋律のループをもとに、テンポが伸び縮みしたり、緻密な装飾が加わったり、無限に変化していきます。対してバリガムランはとても力強く、テンポもものすごく速く、トランスへと一気に連れて行かれるような音楽です。先の投稿にもバリガムランの特徴は書いていますが、コテカンと呼ばれる他者と対話するようなインターロッキングな表現にその音楽哲学が凝縮しています。バリとジャワ、どちらも異なる魅力や哲学があり、私には甲乙つけがたく、本当にどちらも好きなのです。

もともと私が先にジャワガムランの勉強を始めたのは、きっかけがありました。それは2021年度に高知県立美術館で実施されたプロジェクトで、子供たちのためにジャワガムランの新作を作曲するという機会をいただいたからです。高知には、姉妹都市スラバヤから贈られた立派なジャワガムラン楽器があり、それを活用するべく、小学校で子供たちに演奏を継承していってもらうための新曲「カメカメKura-kura」を作曲させていただいたのです。

プロジェクト「ガムランの練習曲をつくる」の詳細はこちらhttps://moak.jp/event/performing_arts/outreach_gamelan.html
プロジェクト実施時のダイジェスト映像は以下


この作曲の過程やまつわるエピソードは、先の投稿で紹介した本「そして私も音楽になった -サウンド・アッサンブラージュの人類学」に書いていますので、興味があればぜひ読んでいただければ幸いです。

その際に、人生で初めてジャワガムランの作曲をすることになり、まずはジャワガムランを習い始めたのです。

また2023年には、サントリーホールサマーフェスティバル2023「ありえるかもしれない、ガムラン」という企画にて、再びジャワガムランのための新作を作曲する機会をいただきました。


『S i n R a』演奏風景


その際作曲したのが「S i n R a」という作品です。この曲で使用されているのはもちろんメインはジャワガムラン楽器なのですが、一部バリガムランの楽器も使用しました。それが、今回どうしても手に入れたかったGentorak (グントラッ)という楽器です。

Gentrak

まるで風鈴がたくさんついているような、澄んだよく通る鈴の音で、また多数あるのでそれぞれ微妙に音色が異なり、とても複雑で美しい響きがします。(音色は以下の映像からぜひ聴いてみてください。)

この楽器にすっかり惚れ込んでしまい、せっかくバリに行くのならぜひともこの楽器を手に入れたい!と思っておりました。
ただ、日本と違って楽器屋さんで売っている、というのではなく、基本的に工房に行って注文制作なのが普通。しかも外国人がふらっと行って買えるものでもなく、信頼関係のあるミュージシャンに連れて行ってもらわないとなかなか辿り着けないのです。また、事前に日本から連絡を取って確認したり、注文したり、というのもなかなか難しいお国柄ですし^^;今回はちょうどお祭りが多数重なる休日期間でもありましたので、工房も当然休みな可能性もあり、本当に手に入るのか、かなり未知数ではありました。

結局、今回も力になってくださったのは、先の投稿でもご紹介した、ガムラングループ「Cudamani」の方々。事前に相談していたリーダーのDewa Berataさんが話を通しておいてくださり、楽団メンバーで、楽器の管理や買付けなどを担当されているOgenさんが楽器工房に連れて行ってくださることになりました。

場所はウブドからバイクで30分ほど行った、ブラバトゥ村。Cudamani楽団の方々が長年楽器の制作や修理をお願いしている工房で、Yandeさんという若い職人さんが楽器を見せてくださいました。

始めにすでにあるものを見せていただいたのですが、それは現代的なGentrakで、柄も含めて全て金属製、また金メッキ加工をしているのかキラキラ!台座もくっついているタイプでとにかくめちゃくちゃ重たい!
先に写真で見せたような、風格のある木製の柄のものがいいのだ、と話をすると、「Oh, you like antique!」と言いながら、作ればあるよと言ってくれました。ただ、どのくらいの制作期間がかかるのか、今回の滞在中には持ち帰れず、また次に来たときに受け取る形になるかな?と聞いてみると、数日あればできるよ、とのこと!おかげさまで滞在期間中に受け取れることに。

合わせて、見せてくださった木製の柄の見本は、赤と黒に彩色されているものだったので、彩色なしでシンプルなのがいいと話しました。そして、鈴も昔の古い鈴がたくさん見つかり、「これを使って作ってあげるよ!」と言ってくださいました。
なんと、理想通りのものを、しかも滞在期間中に作っていただけるとは!
合わせて他の楽器も色々見せていただき、欲しいものがどんどん増えてしまいます笑。さらに、制作現場も見せてくださいました。青銅を溶かして鍵盤を作り、さらに調律していきます。すごいですね!

鉄を溶かす場所
鍵盤の金型が並んでいます
型取りされた鍵盤たち

約束通り、数日後のニュピ明けの日に、再びOgenさんとその友人が車を出して工房に連れて行ってくださり、無事に出来上がった楽器と対面できました。
それはまさに理想通り!欲しかった風格のある、そして音色の美しいGentrakが手に入りました!

楽器を作ってくださったYandeさんと
楽器屋さんに案内してくれたOgenさん(右)と製作者Yandeさん(左)

また、合わせてガンサと呼ばれる鍵盤打楽器の鍵盤だけ、近い音程で4枚うなりが生まれるよう調律してもらい、購入しました。吊るして叩いて使おうかと考え中。

ガンサの鍵盤だけ調律してもらって4枚購入

他にも欲しい楽器はたくさんありましたが、現金のみでの支払いということもあり、予算オーバー。。またお金を貯めて新たな楽器を買いに行けたらと思います。
今回もまた、連れて行ってくださったOgenさんやお友達、そして制作してくださったYandeさんなど、多くの素敵な人との出会いと、その優しさに支えられ、宝物を手に入れることができました!
必ずやこの楽器たちを、次の自身の作品に活用したいと思います。^^

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?