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Dream Tröll / Realm Of The Tormentor

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Dream Tröllは2015年にUKで結成された正統派HMバンドです。NWOTHMのカテゴリ(タグ)でBandcampでセールス1位。2021年と最近のリリースなのにオールタイムで1位はなかなか凄い。NWOTHMってニッチなジャンルですが、それなりにBandcampにバンドもいる中で急上昇しています。あまり情報がないバンドですが、Metallumによれば本作が3作目。公式Tシャツでこんなデザイン(メイデンパロディ)を出しているからメイデン大好きなんでしょう。

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これ、メイデンのファンクラブ限定Tシャツのデザインなんですよね。メイデンパロディの中でも奥が深い。メイデン版はこちら。

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これを選ぶのはセンスいいですね。早速聞いていきましょう。

活動国:UK
ジャンル:ヘヴィメタル、パワーメタル
活動年:2015-現在
リリース日:2021年7月2日
メンバー:
 Paul Thornton Bass
 Matt Baldwinson Bass (formerly), Guitars
 Simon Blakelock Drums
 Paul Carter Guitars
 Ash Elliott Vocals (2019-present)

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総合評価 ★★★★☆

Bancdampの掘り出し物。80年代の華やかなメタル、NWOBHM好きなら必聴。しばらくの間、「正統派メタルで新しさを感じるフレッシュなバンド知らない?」と言われたらとりあえず本作をおススメすることにする。現代プログメタル的な手法も取り入れているがベースがあくまでも正統派ヘヴィメタル。いわゆるJudas PriestやIron Maiden的な音楽性の中でいかに新しさを出すか。王道のヘヴィメタルという音楽スタイル、枠内の中で進化を模索し、たどり着いた音像。

これは惜しい点でもあり、逆に言えば今の時点での魅力でもあるのだけれど、まだインディーズなので多少粗削り。演奏や楽曲は洗練されているし、音色にも強いこだわりを感じるけれど、やはり大手メタルレーベル所属のアーティストに比べると迫力に欠けるし、曲の調子もやや一本調子。ものすごく地力は感じるし、Beast In Blackみたいなシーンに衝撃を与える新星になるポテンシャルを持っていると思う。活動方針がDIYにこだわっているのかもしれないが、そうでないならこれから大手メタルレーベルと契約をつかんでより大きな規模で活動してほしい。

1.The Tormentor 05:20 ★★★★★

不思議なイントロ、タメのあるリズムにキーボードというかツインリードなのかな、メロディアスなリフ。そしてベースがタイト。面白い音像。80年代HRのリバイバルということにとどまらず、80年代の歌メロがポップで華やかなメタルを引き継ぎながら音色が新しい。コーラスはメロディアスなギターフレーズ、ボーカルだけでなくギターでメロディを奏でるのは北欧、ghostとかにも通じる感覚。これは新しい。うん、ベースの音が個性的だなぁ。弾むような弾力のある音。間奏はキーボードソロ。このあたりの構成とか音色は北欧的でもある。UKのバンドらしく構築美というかプログレ的な気品もあるな。回顧主義ではなくモダンな感覚。たまたま今月のBurrn!誌でKKダウニングが「今はJudas Priestみたいな音を出す若手バンドがいない」と言っていて、確かになぁ(回顧主義のバンドはいるけど、80年代的なHMの枠内で新しさを感じるバンドが少ない)と思っていたがこれはその答えかも。

2.She Got The Devil Inside 05:25 ★★★★★

またカッコいい。なんだろうなぁ、ベタなようでリフの組み合わせ方、リズムの抜き方とかが新鮮。のっぺりしていなくて、変拍子とかは使っていないのに緩急がきちんとついている。これは80年代の黄金時代のメタルファンは感涙ものじゃないか。パワーコードとブリッジミュートを使ったいかにもなリフなのだけれど、ボーカル、ドラム、キーボードとの絡み合いがカッコいい。ストレートなHMなのにプログ感もある。きちんと今のメタルのトレンドも入れつつエクストリームな方向ではなく、ポップで華やかさとエッジ、ギターのザクザクした心地よさ、そしてメタルの技巧性(テクニックによる快感)が全部バランスよく入っている。

3.Winner Takes Nothing 05:07 ★★★★

軽快で英国HRの薫りが漂うリフから。ハーモニーが効いたボーカルが入ってくる。細かいところのリズムのオカズが効いている。コーラスでボーカルが飛び跳ねる、LAメタル的な華やかさも持ちつつ一筋縄ではいかない、つっかかるようなリズム。なんだろう、聞いていると嬉しくなるな。この手があったか、的な。間奏では変拍子感が増す。NWOBHMと90年代、00年代のテクニカルなプログメタルを組み合わせたような音像。音像はあくまで爽やか。ちょっと歌メロが前2曲に比べると弱い(というか、パターンが前の曲に似ている)が良い曲。

4.Here Comes Chaos 06:42 ★★★★

ややミドルテンポでポップな曲。ただリズムの切り刻み方は徹底している。パーティー感がある明るい音像。これはキーボードの音によるところも大きいな。間奏部はちょっとドリームシアター感。ユニゾンのギターとドラム。ただ、テクニカルをひけらかすというよりはバンドのアンサンブルが主体になっている。これ、全体としては新世代のプログになるのかもな、レバノンのタービュランスとかにも近いかも。

5.Watch It Burn 04:44 ★★★★☆

雰囲気が変わった、リフやリズムの組み合わせ方が面白い。やはりプログ的に方に偏ってしまうとやや弱いかも。それだとありがちになるというか、そこまで超絶技巧という感じでもない。全体の組み合わせ、マスロック的な複雑さを持っているのだけれどあくまで曲は華やかなパワーメタル、NWOTHMというのがこのバンドのキラーコンテンツ、特別感を出すと思う。あとはボーカルも味が合ってよい声だけれどハイパーボーカルという感じでもないので、歌メロや音域がどのあたりが活きるか。中音域が魅力的なのでそこを生かせる歌メロかどうか。間奏ではちょっとDjent的な、プログメタル的なギターとリズムの掛け合いからキーボードソロへ。ただ、この曲はバランスがいい。

6.As Death Rains From The Sky 06:49 ★★★★

これ、完全にインディーズなんだよな、どこかのレーベルから出しているわけでなくBandcampと自分たちのサイトでの販売だけっぽい。それにしては凄くクオリティが高い。ただ、やはりインディーズの音ではある。ミドルテンポで展開していくメロディアスな曲。

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