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「小さな決断」が自然を身近にして、人を自由にする。

こんにちは!安永翔太です。

今日は、前回noteの最後でお伝えしていたので、「自然に親しんで自由な気持ちになる」ためにはどうしたらよいのか、僕自身の体験をもとに考えてみたいと思います。

前回はこちら。

フランピング施設で感じた不自由さ

先日、福岡県にある「フランピング※1」ができるという施設に行ってきました。そこは、丘の上にある温泉施設の敷地内に併設された、キャンピングトレーラーに宿泊できるキャンプ場でした。

綺麗に整備された芝生、コンクリートで舗装された通路、そんなエリア内に30台以上のキャンピングトレーラーが所狭しと並んでいます。炊事場、焚き火エリア、BBQエリア、ブランコなどキャンプを楽しむために必要なものが用意してあり、周囲は鉄製の柵で囲ってあり、至れり尽くせり。

しかし...自然の要素はどこに…?山でもない、川もない、エリア内には木もほとんどない。これはアウトドアと言えるのだろうか?確かに「屋外」という意味ではアウトドアなのかもしれないけど、この違和感は何だろう?

(※1)フランピングとは「もっとフランクにキャンプが楽しめる新しいキャンプスタイル」という意味がある近年作られた造語だそう。現在でそう名乗っている施設は全国でも九州に3施設のみとのこと。

先輩を連れて四万十川カヤッキング

僕がまだ四国に住んでいたころ、学生時代から仲良くしていた先輩が遊びに来てくれたので、カヤックの漕ぎ方レクチャーも早々に、四万十川へ漕ぎ出したことがありました。

この先輩はカヤック経験がほとんどありません。しかし、当時僕が持っていたカヤックは1人乗りが2艇だけ。未経験の先輩には少しハードではありましたが、1人乗りのカヤックで川下りしてもらうことにしました。

出発前に川の流れと危険箇所、漕ぎ方についてのレクチャーを簡単に行い、実際に漕いでみると、この手のカヤック(細長く不安定な)に初めて乗った先輩は、フラフラで今にもひっくり返りそう。まあ、四万十川を泳ぐのも良い経験かと(笑)、ひっくり返った際の対処法をレクチャーし、出発。

川下りも中盤に差し掛かり、瀬(流れが速く白く波立った区間)が見えてきました。先輩には、瀬に入る手前の流れが無い場所で待機してもらい、僕は、下流の安全を確認したら先輩のいる場所に戻るつもりで、瀬に突入…。ところが、僕は誤って瀬の最後まで下りきってしまい、先輩とは瀬を挟んで上流と下流に別れてしまったのです。

先輩には、リバーサイン(瀬の上流と下流など、声が聞こえない状況で使用するパドルを用いたサイン)を教えていなかったので「下ってきていいよ!」や「右岸側を漕いできて!」など、サインでの指示も出せない...。

さて、どうしようか...と、考えていると、上流にいる先輩がゆっくりと、かつ、力強く漕ぎ始めたのです。しかも、出発前に軽く教えただけの「流水への進入角度は斜め45度!」をきちんと守りながら。初めてのカヤックとは思えない軌道で、川の流れに上手く乗って下ってきたのです。

カヤックダウンリバー中の「決断」

これには正直、驚きました。あの状況で上流に取り残されたら、テンパってしまってもおかしくはなく、たとえ漕いで瀬に入ったとしても、水流に負けて転覆し、四万十川の美味しい水をガブ飲みするのが関の山です。先輩…なかなかやるな、と(笑)。

しかし、ここでお伝えしたいことは、転覆しなかったことではなく、先輩が自ら「決断した」ことです。転覆せずうまく川下りしたことは個々のフィジカルの強さにもよるので、ここでは重要ではありません。

僕は、パドルサインをレクチャーしていなかったので、先輩には「下ってきてください」の指示は出してはいません。(何かしらサインを出したかもしれませんが、伝わってはいないはずです)

今回、先輩は"瀬に突入する"という判断を下しましたが、"待機する"や"近くの岸に上陸する"という行動であっても、同じく自ら判断を下した(=決断した)ということになると思います

おそらくあの瞬間、先輩は色々なことを総合的に考えたと思います。自らのカヤックスキル、川の流れの速さ、レクチャーされた内容、転覆した際に泳げるか...などなど。そして、瀬に突入する決断をしたわけです。

「小さな決断」をすることで自由になれる

僕はアウトドア活動をする上で本当に自由を感じるのは、今回の先輩のように、自ら判断できる環境に身を置いている時であり、たとえ小さくても決断を下せた時です。

自然の中では、成功しても誰かに褒められる訳でもなく、失敗して多少の痛い目(※2)にあったとしても、誰かに怒られる訳ではありません。

それ自体がとても心地良いし、結果はどうあれ、自分がそう判断して決めた結果なら、納得感がある。

冒頭でお話しした、フランピング施設では、至れり尽くせりであるこそ、自然の中に身を置けば、おのずとあるはずの「自ら決断する機会」を失ってしまっていると感じます。

そしてそれは、カヤックほどハードなことである必要はありません。例えば、近所の山に入り、景色が良いところを見つけて座り、コーヒーを淹れて飲む。

これだけでも、自然の中にいるだけでいくつもの「小さな決断」をしているはずです。

例えば、自分の体力、時間、天候などを考慮しながらどこまで歩くかを決め、危険はないか、植生を傷つけないか、コーヒーを入れるスペースはあるか等を考慮して座る場所を決めたりすると思います。


より自然が多い環境であるほど、自分で考えて行動する。小さな決断が増える。だからこそ、大自然の中に行くと、より自由を感じることができるのだと思います。

(※2)大怪我や命に関わる取り返しのつかない失敗は例外です。その失敗を未然に防ぐためには、自然で活動する上での適切な知識が必要です。それはまた別の機会に。

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最後まで読んでいただきありがとうございます!また近々続編を書きますので、次回もお楽しみに!

(表紙写真:Yuya Nojiri)

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