見出し画像

自分達が欲しいモノを作るというストーリー

こんにちは!安永翔太です。先週こちらの記事で、焚き火台の「役に立つ」と「意味がある」について書いてみました。

これを書いたあと、「じゃあ自分はこれまでどんな基準でアウトドアギアを買っていたんだっけ?」と気になり始めたので、今週はそれを振り返ってみたいと思います。

今まで色んなアウトドアギアにお金を使ってきましたが、その中でも思い出深い、モンベルに入社して初給料で買ったMSRドラゴンフライを買った当時のことを思い出してみます。

ドラコンフライは、屋外調理用の液体燃料コンロ。ガソリンや灯油など色んな種類の燃料で使用可能な優れもののガソリンストーブです。

22歳、初任給で"他社製品"を買う

冬のモンベル大山店、閉店後。

2011年、鳥取県のモンベル大山店。標高約800mの登山口付近にある、山遊びの拠点的な店舗です。社員数は店長と僕の2人。4月に赴任して2週間で1人で開店から締め作業までを教え込まれ、なんとか業務をこなしていました。

知らない土地で必死に働いていた僕は、初給料で買う物は決めていました。そう、MSRのドラゴンフライです

…これ、読んでいる方はピンとこないと思いますが、モンベル製品ではありません。モンベル直営店で取り扱ってはいますが、仕入れて売るだけのロイヤリティが低い他社製品です。

22歳の若かりし僕は、モンベルで働いた初任給で、アウトドアする為に必要なレインウェアやザックなどよりも先に、今後の店舗での接客や大山登山にはあまり必要がない(優先順位で言うととても低い)上に、かつ他社製品であるドラゴンフライを買うことを決心していたわけです。

当時ちらほらと耳にしていたのが、モンベルに入社したら、まず初任給で登山装備一式を揃えるものだ。という社内での通説。僕としては"そんなもん知るか。自分の給料やし自分の好きなモノ買ったらいいやん"という考えでした。そうです、昔は尖っていたのです(笑)。

しかも、わざわざ他県のモンベル直営店に電話して(大山店では取り扱いなかったので)、僕が買いたいのでドラゴンフライの在庫を譲ってくださいと依頼して郵送してもらい、購入。

もし、愛社精神の強いベテラン社員にバレていたら『お前、なめてんのか』と言われかねない行動ですが(笑)、当時の店長は何も言わずに面白がってくれていました。感謝。

自宅で広げて1人でテンション上がる(2011.8.18)


MSRドラゴンフライを買った理由 

ここまでして欲しかったドラゴンフライ。自分にとっては超が付くほど魅力的な商品でしたが、どんなところに惹かれていたかを【役に立つ】と【意味がある】に分けて考えてみました。

  • 【役に立つ①】寒さに強い上にトロ火可能→雪山でもグルメな料理ができる。

  • 【役に立つ②】車用のガソリンを燃料として使用可能→海外でも車が走っているところなら、燃料の調達が可能。

  • 【役に立つ③】簡単に分解してセルフでメンテナンスができる→長持ちする。

  • 【意味がある①】創業者(登山家)の「自分たちの手でよりよい製品をつくりたい」という想いや創業ストーリー。本当の山好きが作ったギアである。(MSRの創業ストーリーはこちら

3つの「役に立つ」要素に加えて、山好きの創業者が作った歴史あるブランドであるという「意味がある」要素に惹かれていました

とはいえ、ドラゴンフライを買った当時、僕はMSRの創業ストーリーまで詳しく調べて購入した訳ではなかったと思います。

ですが、周囲の尊敬するアウトドアパーソンや山岳ガイドがドラゴンフライの良さについて話す雰囲気や、ギアが醸し出す信頼感の裏には、MSRの想いや創業ストーリーがあったのだと感じています。


MSRのブレないビジョン

ここで特筆したいのは、MSRの安全基準を改善するために深く関与する姿勢、山こそが全ての中心という社風が、MSRの製品ラインナップやそれぞれのギアの機能に反映されていることだと思います。

例えば、ガソリンバーナーを例にとってみると、初代ガソリンバーナー開発の経緯を引用します。

脱水症状が急性高山病を引き起こす原因の一つであることから、MSRはより早く雪を溶かして飲料水を作ることができるストーブを設計し始めました。

MSRホームページより

その後、グルメストーブとも言われるドラゴンフライを開発した経緯はこちら。

バックカントリーを楽しむ人はドライフードを戻すためのお湯を作るためだけにストーブを使うのではなく、調理もしたいと考えていました。そこで1998年、MSRは火力コントロールのできるドラゴンフライストーブを発売しました。

MSRホームページより

このように、ハードな雪山でどれだけ安全に、そして快適に過ごせるかというビジョンやミッションを追求した結果が、低温下でも安定しやすいガソリンを燃料に使うバーナーという製品に、料理も可能にする火力調整つまみという機能に繋がっています。

「山こそが全ての中心」というビジョンに対して、生み出されるプロダクトに一貫性があればあるほど、プロダクトが放つ信頼感に繋がるのかもしれないとMSRを見ていて感じます。


自分達が欲しいモノを作るというストーリー

この開発姿勢は、MSRだけじゃなく、多くのアウトドアブランドに共通する特徴だと思います。

Patagonia、mont-bell、Mountain Equipment、MAMMUT、ARC'TERYX…たくさんのアウトドアブランドがありますが、ほとんど全てのブランドで、創業者がアウトドア好きであり、自然での冒険において使える製品、自分が欲しいモノを作るところからスタートしています。

なおかつ、アウトドアで使う製品はハードな自然環境下で耐えうる品質であることが大前提であり、それをクリアしない製品を世に出すことは、アウトドアパーソンとしてのプライドが許さないからこそ、品質を追求する姿勢が生まれるのだと思います。

この「自分達が欲しいモノを作る」「品質を追求する」というアウトドアブランドの姿勢こそが、僕も含めて自然志向の人々を惹きつけてやまない「意味のある」ストーリーとなっているのだと思います。

今週は以上です。では、良い週末を!

(表紙写真:Yuya Nojiri)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?