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アウトドアで見る景色は人を豊かにする

カヌーの聖地、四万十川

高知県を流れる四万十川(しまんとがわ)は、「日本最後の清流」と言われ、僕も大好きなアウトドアフィールドの一つです。

約200㎞の本流に大規模なダムがないこと、水量が豊富であること、そして川沿いに住む人たちが少ないことで、本来の川の姿が保たれている。

そんな四万十川は、カヌーやカヤックで下る川としても、素晴らしい。

カヤックで四万十川に浮かぶと、目の前には、雄大な流れがどこまでもつづく。見渡すと、広い川幅を囲む豊かな緑がある。すこし見上げると、ゆるやかな山の稜線と空。原生的な風景に包まれ、自然と一体化した気分になれる。

そして、ところどころに、キャンプに向く河原がある。川を下り、ほどよい河原で流木を集めて焚き火をし、夜にはきれいな星空を見上げる。季節が良ければ、ものすごい数のホタルが見れたり。

そんな、ありのままの自然を楽しむ川旅ができる、日本でも数少ないフィールドです。


しかし、若かりし頃の僕は、吉野川・大歩危小歩危峡のようなエキサイティングな川下りが、面白くてたまらない時期。

なので、四万十川を実際に下るまでは、”あんな穏やかな川を下って何が楽しいんだろう”くらいに思っていました。

そんな、穏やかな川に興味がなかった僕(当時25歳)でも、仕事やプライベートで四万十川下りを重ねるうちに、この川の奥深い魅力にじわじわと引き込まれていきました。

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四万十川に流れる時間、"四万十time"

四万十川の魅力の一つとして、特に僕が好きなのが、そこに流れるゆっくりとした時間です。

この流域は、近くに民家が少なく、大きな道路も無い。それにより、水面に浮くカヤックからは人工物が見えないし、生活音が届かない。

外界から遮断された感じで、車が走る音もほとんど聞こえなくなる。空が広くて、川の水はゆっくり流れている。

そんな雄大な川に、手漕ぎのカヤック。一番聞こえる音は、自分のパドルで水面をかく音。

そんな色々な要素がうまく重なりあって、時間の流れをゆっくりと感じさせているのかな、と思います。


四万十川に浮かぶと感じる、この独特のゆったり感を、お世話になったリバーガイドの先輩は”四万十time”と呼んでいました。

当時のカヤックツアーのお客様も、そんな"四万十time"目当てにリピートする方もいらっしゃいました。


そしてさらに、そんな”四万十time”に包まれながら見る夕陽は、とにかく美しい。

僕が今まで見てきた夕陽のなかでもトップクラス。(そんなにたくさんは見ていませんが笑)



”四万十time”に包まれ、こんな夕陽を見たら、そりゃあ誰でもハマります。四万十川の包み込まれるような魅力に。

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四万十川に出会い、どう変わったか

四万十川で、そんな時間と景色の中に包まれる経験をして、自分の中で、アウトドアをする目的が少し変わったような気がします。

それまでは、激流カヤックやサーフィンなどの”エキサイティングで気持ちいい!”と感じるアウトドアスポーツに心惹かれていました。また、そんな危険と隣あわせのスポーツにチャレンジすることが、カッコいいと思っていました。

ですが、四万十川に出会い、素晴らしい景色や時間の中に身を置き、自然を満喫するだけでも、心が満たされるということを知ります。

そして、もしそれだけでも自分が満足できるのなら、人と違うことをしてカッコつける必要はないかもな、とも思うようになりました。

それ以来、山の麓の、なんでもないところに座り込んで、ただ山の姿を眺めたり、運転中に素敵な夕陽を見かけたら、車を停めてガードレールから眺めたりすることを覚えました。

日常にそういう時間があるだけで、満たされるし、心がハッピーになれる。

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現在の僕は子どもができて、自分が好きなアウトドアスポーツである、サーフィンやカヤックはなかなかできません。ですが今は、"妻と子どもを置いて無理してまでやらなくてもいいかな"と思えています。

それは、この四万十川が気付かせてくれた、”ただ、自然を愛でるという楽しみ方”を一つの選択肢として持っているから。

これなら、日常生活で外を眺めるゆとりさえ持てれば、どこでも楽しめる。

こう考えると、自然の楽しみ方の幅が広がって、アウトドアライフをより充実させることができ、豊かな人生に近づけるかもしれないなと思います。

そしていつか、大きくなった子どもとサーフィンやカヤックをしながら、素晴らしい景色を一緒に見ることができたら、最高だろうな。


(1,2枚目の写真:Yuya Nojiri)

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