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川遊びでのリスク③~ファーストエイドの重要性とやり方を知る~

事故が起きた時に私たちができること

たとえば自分の家族が、川で事故に遭ってしまった際、まず私たちが一番冷静に対処しなければいけません。
冷静な対処を行うためには、事故が起きた際、”自分は何をすべきで、何をしないべきか”知っておく必要があります。

救助の専門家ではない限り、水難事故に対して経験豊富な人なんてほとんどいません。でも、川遊びをする誰もが水難事故に遭う可能性があるのです。

前回も書きましたが、川に水があるということは「溺死」「低体温症」のリスクがあります。溺死は当然ですが、重度の低体温症も命に関わります。
川で事故に遭い、死に至るまでの時間は、溺水で1分、低体温症で1時間と言われています。

この時間の意味すること。それは川での水難事故は、初動がとても重要ということです。
今回は、川遊び中に身近な人が事故やケガをしてしまった場合に、”私たちは何ができるのか”について書かせていただきます。


ファーストエイドについて

水難事故に限った話ではないですが、事故に遭遇した場合に知っておかなければならないことは、私達は医師でも救命士でもなく、診断や治療を行う知識も技術も持っていないということです。(一部の専門家の方を除く)

「ファーストエイド」とは応急処置のこと。
「ファーストエイダー」(救急救命用語で「バイスタンダー」とも言います)とは応急処置をする人のことで、救急現場に居合わせた人(発見者、同伴者等)のことを指します。

私たちが、ファーストエイダー(=バイスタンダー)としてやるべきことは、その必要性と可能であれば、傷病者を安全な場所へ移送し、症状を悪化させないようにしつつ、救急隊や医療機関に連絡をとること。引き渡すまでの間、傷病者にケアし続けることです。

要は、私たちは、子供や家族、友人と川遊びに行くと決めた時点で「水難事故で一番重要な、ファーストエイダーとしての役割を担うことになる」ということです。


世界共通のファーストエイド優先順位

では、水難事故が起きたとき、私たちはどんな順番で行動すればよいか、応急処置の優先順位は世界共通とされているマニュアルがありますので、それを参考にお伝えしたいと思います。

1.Danger(状況把握・二次災害防止)
まず、周囲の状況を確認し、自分の安全や周りの人や被害者がさらなる危険に追い込まれる状態にないかを確認する。
可能であれば、安全な場所や安全な状態になるように、移動などを行う。

2.Responce(意識レベルの確認・意識の喚起)
次に、被害者の意識状態を確認します。
①正常な状態である
②混乱状態である
③眠っているようだが、声をかけると反応する
④声には反応しないが、痛みを与えると反応する
⑤声にも痛みにも反応しない
※ここで救急車を呼ぶかが決まりますが、救急車を呼ぶ基準については、後述します。

3.Airway(気道の確保)
口の中の異物を除去し、気道を開放する(顎をクイッと上にあげる:頭部後屈あご先挙上法)。
特に意識レベルが低いときには、反応があっても気道を確保しておかないと、意識の低下と共に気道が閉じてしまい(舌根沈下)、息ができなくなる恐れがあります。

4.Breath(人工呼吸)
胸の上下運動があるかを、見た目や呼吸音・吐息等を、視覚・聴覚・触覚を使って確認する。
自力呼吸をしていない、呼吸が弱い場合は人工呼吸を行う。※感染症予防のため、専用のマウスピース推奨。

5.Circulation(胸骨圧迫)
胸骨圧迫を行う。人工呼吸と胸骨圧迫を行うことをCPRと呼ぶ。CPRを一度始めたら、救急隊に引き渡すか、自分の体力が尽きるまで行う。

6.Bleeding(出血のコントロール)
出血の有無の確認。止血の方法は、直接出血箇所を圧迫する「直接圧迫法」、出血箇所を心臓より高い位置に揚げる「高揚法」、出血箇所より心臓に近い動脈(止血点)を手や指で圧迫する「止血点圧迫法」があるが、その3つを組み合わせて行うと良い。

3~5(CPRに当たる)を繰り返して観察しながら行い、同時に、6(出血が無いか)の確認を行い、必要があれば止血。という流れで行っていきます。


出血はどのくらいになると危険か

体内の血液量は体重の約8%です。体重60㎏の方で約5リットルあります。

一般に、体内の血液の20%が急速に失われると出血性ショックという重い状態になり、30%を失えば生命に危険を及ぼすといわれています。

体重60㎏の方なら、1〜1.8リットルで命が危ないということです。

とはいえ、実際に流れ出た外出血の量を直接計測することはできませんし、地面の状態に左右されるため目測することも容易ではありません。

ですが目安として、アスファルト上では、200㎖の出血は直径50㎝程度に拡がり、500㎖では直径1m程度に拡がります。また、タオルで出血を吸い込み、タオルがボトボトになれば、100㎖以上の出血があると思われます。

いずれにせよ、血が出ている場合は早急に止血を行なう必要があります。


救急車要請の基準

次に、どんな症状であれば救急車を呼んだ方がいいのか、救急車を呼ぶ必要があるとき、どんなことに気を付けておけば良いかをまとめます。

救急車要請の基準
・呼吸停止、心臓停止で人工呼吸まだは心肺蘇生法が必要な人
・呼吸困難の人
・胸痛を訴えている人
・大出血があり、ショック症状のある人
・腹部を強く打ち、ショック症状のある人、または腹全体が緊張して痛みが強く嘔吐や吐き気がある人
・頭部を打ち、またはその他の理由で意識状態に異常がある人
・脊髄を損傷している恐れがあり、手や足の一部が麻痺している人
・激しい腹痛を訴えている人
・吐血や下血がある人
・腕や足を骨折している人
・けいれんが続いている人


救急車の呼び方

次に救急車の呼び方の参考例です。119が通じたら次のことを慌てずはっきり伝えてください。

①所在地を伝える。誰でもわかるような目標物があればそれも付け加える。

②どうして怪我をしたのか、またはどんな状態で発病したのかを伝える。

③今、どんな状態であるか、みたままの状態を簡単に話す。

④係員の質問にはっきり答える。

⑤傷病者が複数いるときは、その人数を言う。

※川などの場所が特定しずらい場所で119する時は、携帯のGPSをオンにしておくと、位置情報とれるので良いそうです!(消防隊員の方より)

サイレンが聞こえたら、できるだけ人を出して誘導し、現場に到着した救急隊員に、次のことを伝える。

①救急隊が到着するまでの様態の変化

②あなたが傷病者のために行った応急手当の内

③病があればその病名、かかりつけの病院及び主治医名

救急に電話がつながれば、あとは救急隊員の方の指示にきちんと従うことが第一となると思いますので、上記は心構えとして、知っておけばよいかと思います。


とはいえ、救急車を呼ぶ判断などは難しいかと思います。
その際は「救急安心センター事業(♯7119)」にかけることで、救急電話相談を受けてくれるそうです。詳しくはリンクをご覧になってください。

または、判断の助けになるアプリもあります。スマホに入れておいて損はないです。
全国版救急受診アプリ (愛称「Q助」)


まとめ

最後に、自分の家族や一緒に遊んでいる仲間が川でケガしてしまった際の、私たちがとるべき行動をまとめます。


⓪事故発生

①2次災害が起きないか確認する
 →周囲を確認し、自分の身の安全を確保する

②ケガ人の意識を確認する
 →声を掛ける、鎖骨あたりを叩いて反応をみる

③近くの人に助けを求める
 →大きな声で「誰か助けてくださーい!!」
 →必要があればAEDを探してきてもらう

④必要があれば救急車を呼ぶ
 →判断に迷う際は、アプリや#7119へ相談

⑤CPR開始

 →気道確保→人工呼吸→胸骨圧迫を繰り返す

⑥必要があれば、止血を行う

 →直接圧迫、高揚、止血点圧迫を組み合わせる

⑦救急車が来るまでCPRを続ける
 
→救急車が来たら現状を正確に伝える


以上です。この流れを理解しておくだけでも、事故に遭遇した時に冷静に対処できるようになると思います。

注意として、消防などで推奨されているファーストエイドの方法は年々改善が加えられています。
より最新の情報や、より実践的な内容を知りたい方は、各地域の消防署などで開催されている救命救急講習会を受講されてみることを強くおススメいたします。


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以上で、3回にわたって書かせて頂きました「川遊びでのリスク」シリーズを一旦終了とさせていただきます。


今年は僕も、初めて自分の子どもを川遊びや海遊びなどに連れて行こうと思っています。

僕の家族含め、これを読んでいただいた皆さんが安全に楽しく水遊びできることを願っています。


最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました。


前回の記事はこちらです。

(表紙写真:Yuya Nojiri)

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