【開かれた解決】

【開かれた解決】

法律というと答えは一つ。

なぜかそういうイメージが頭の中にあります。

でも、「法律論」として一つの結論があるとしても、「現実に取りうる解決策」は無数にあるのではないかと思っています。

「法律論」と「解決策」は区別することができ、「解決策」の可能性はできるだけオープンに開いておくことが、よい解決に至るためには大切なのではないかと考えています。

あるとき、債務整理の相談を受けました。

債務整理のオーソドックスな手順としては各債権者に受任通知を送り、各債権者と支払金額や支払方法について協議することになります。総額を確定したうえ、3年払いを希望する、5年払いを希望する、などの話をしていきます。

このときも、債務整理の話と聞いて、そういう解決を念頭に置きました。

ただ、この方の話を聞いていくと、この方は賃貸不動産を持っているにもかかわらず、コロナで賃料収入が少なくなったため、様々な借入をするようになったという経緯があり、不動産のローンを払っているある金融機関からの借入だけは返済を続けたいという希望がありました。

最初は、通常の手順どおり、その金融機関のみ外して受任通知を送ればよいと思いましたが、考えるうちに、整理したい債権者だけでなく、ローンを払っているその金融機関からの借入についても、期限の利益喪失となり、返済を迫られることにならないかが気になってきました。金融機関は、信用情報機構を通じて、弁護士介入の事実を把握できるからです。

法律論というよりは、実際上の取扱いの問題であり、調べてもよく分からなかったので、直接、その金融機関に依頼者と一緒に相談に行くことにしました。

担当者に状況を説明したところ、他の債権者に受任通知を送ると、信用情報に載ってしまうのでやはり期限の利益喪失となってしまうという話があり、ああ、やっぱりそうかと思いましたが、なんと、これまでの依頼者と金融機関の関係などから、その金融機関が、他の債権者に対する返済に必要な資金をまとめて貸すという提案をしてくれました。

他社より利息も安くなるし、月額の返済額も減り、返済は一社にしぼられるので、依頼者にとっては、とてもよい話でした。
空室が多く、有効に活用できていない不動産の売却の提案もしてくれました。

このような提案は、法律的な答えがどうこうというところからは出てこない話であり、やはり、実際に、その金融機関に相談に行ったからこそ、提案が受けられたものだと思います。

弁護士は解決に向けて「答えを持っていなければならない」と言われることもありますが、具体的な解決策は「どこからやってくるか分からない」というのも真であり、常にオープンな心を持っていたいと改めて思った案件でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?