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【世界の論点】イスラエル・パレスチナ2023

このメディア「やっぱり英語が好き!」(やぱ好き)は、耳で聞くだけでもいい、あるいはウェブマガジンを読むだけでもいい、そんなプラットフォームを目指しております。
「学校でテストの点数が取れる方法」ではなく「英語を始める楽しみ」を伝えられる、あるいは「言葉の先にある世界」を伝えられる場所にしていきたいと考えております。
今回は、特別編として、2023年に生きているわたしたちが避けることのできない「世界の論点」に触れたいと思います。


中東問題が世界を一変させた

10月7日、とんでもないことが起きてしまいました。
パレスチナのガザ地区を支配している組織ハマスが突然、イスラエルの音楽フェスを襲撃し、数百人を殺害・拉致したのです。ハマスの襲撃部隊が上空からパラシュートで次々と舞い降り襲撃する生々しい映像がソーシャルメディアなどで流れました。

特に衝撃を与えたのは、ハマスがドイツ国籍を持つタトゥーアーティスト(シャニ・ルークさん)を殺害し、その遺体をトラックの荷台に乗せて連れ去る姿の動画でした。ハマスによる想像をはるかに超えた残虐行為が次々と明らかになり、その一方でイスラエル軍による空爆被害もviralして、怒りと憎しみが世界中を包んでいます。

2022年2月24日にロシアがウクライナを侵攻し、その戦争もまだ終わりが見えません。ここに中東危機が加われば、何が起きるのでしょう。かつての帝国・米国には地球上の2箇所で大規模な紛争に対応する力も意志もありません。たとえば、いま中国と台湾、あるいは北朝鮮と日本の間でincidentが起きたとしても、米国が関与できる能力は昔のそれとは明かに限定的なのです。奇跡的に、東アジアで抑止が働き続けたとしても、ウクライナ戦争と中東戦争が同時に起これば物価や治安はどうなるのでしょう。

目の前を通り過ぎていく日常の遠い先に、現実として起こっていることを、一緒に感じてみたいと思います(考えることや意見を持つことは各々がやることだと思いますから、ここでは論点の整理だけ)。

Oct. 7 Attacksーーあの日、何が起きたのか

この音楽フェス「スーパーノヴァ」はブラジルから派生したものらしく、イスラエルのレイム(Re'im)という場所の近くで開かれていました。報道では「イスラエル南部のキブツにハマスが襲撃」と伝えられたので、キブツというのが地名であるかのように感じますが、「キブツ」はイスラエルの農業共同体、村のようなものです。

音楽祭の開かれいたレイムはガザ(Gaza Strip)のすぐ近くに位置しています。

この日、何が起きたのかーー。多くのメディアが日々、さまざまな情報を伝えているので錯綜してしまいますが、ここではその中でもわかりやすくまとめてある記事を紹介していきます。10月28日までの最新情報をここに掲載しますが、新しい動きがあればこのnote記事を修正・加筆していきます。

BBC

The HEADLINE

日テレNEWS 

この時系列のまとめで示されているように、10月7日の奇襲を受けて、イスラエルはハマス・パレスチナに報復、その後双方が際限のない殺し合いが続いています。イスラエルは以来、ガザ地区に対して大規模な地上戦を実施すると喧伝して「鉄の暴風」のような空爆を続けており、日々緊張が高まっています(10月28日現在)。

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歴史的経緯が知りたい

とどのつまり、イスラエルとパレスチナの問題(というよりもパレスチナの地をめぐるユダヤ人とアラブ人の問題)は歴史的経緯に帰着するので、その点についてもわかりやすいものをこちらに併記しておきます。

ここ100年余りの中東を巡る歴史事項は以下。
1914年 第1次世界大戦始まる
1915年 フセイン・マクマホン協定 Hussein-McMahon agreement
    (アラブ人に独立国家を約束)
1916年 サイクス・ピコ協定 Sykes-Picot Agreement
    (英仏露が中東を分割支配する密約)
1917年 バルフォア宣言 Balfour Declaration
    (ユダヤ人に国家建設を支持)
1933年 ナチス政権誕生(ユダヤ人の迫害・虐殺)
1939年 第2次世界大戦始まる
1947年 国連でパレスチナ分割決議採択
1948年 イスラエル建国、第1次中東戦争(パレスチナ難民発生)
1956年 第2次中東戦争(エジブト・ナセルへの攻撃)
1967年 第3次中東戦争(イスラエルの領土拡大)
1973年 第4次中東戦争(エジブト・サダトが攻撃)

映像で理解したい方はNHK「映像の世紀 バタフライエフェクト」をどうぞ。

中東問題を理解する上で鍵となるのは、「紛争の原因は、過去の戦争だった」という点です。
直近の中東混乱の原因として、あらためて指摘されるのが、イギリスの「三枚舌(のように見える)外交」ですが、これは第1次世界大戦時の不道徳外交に起因しています。当時、イギリスの敵国オスマン帝国(つまりトルコ)のなかで抑圧されていたアラブ民族に対し、フセイン=マクマホン協定(1915年)を結んで、パレスチナの地における独立を約束。このとき、現地に派遣された軍人T・E・ロレンス(Thomas Edward Lawrence、1888〜1935年)、いわゆる「砂漠の英雄」を描いたのが映画『アラビアのロレンス』(Lawrence of Arabia、1962年公開)でした。
1916年にはオスマントルコ亡き後の中東分割をにらんで、英仏露で秘密協定を結びます。これがサイクス・ピコ協定(1916年)。さらに英国は、フセイン=マクマホン協定でアラブ人に対して都合のいい提案をしていた一方、戦費の確保のためユダヤ人に対してもバルフォア宣言(1917年)でパレスチナでの国家建設を約束してしまったわけです。

Lawrence of Arabia、1962年公開

『アラビアのロレンス』はAmazonで100円で視聴可能です。4時間近くある大作ですが、テンポよく進むので気軽に楽しめますよ。ちなみにファイサル役は、スター・ウォーズのオビ・ワン・ケノービを演じたアレック・ギネスです。

最初の5分間は音楽のみ

https://www.amazon.co.jp/アラビアのロレンス-字幕版-ピーター・オトゥール/dp/B00S0WTCY0


1915 フサイン・マクマホン協定 Hussein-McMahon agreement

最も重要とされる1915年10月24日のマクマホンからの書簡

メッカ(現サウジアラビア、当時はオスマン帝国領)の太守を務めていたフサイン・イブン・アリーというアラブの大物(ムハンマドの子孫とされていた)と、エジプトにいた英国の高等弁務官ヘンリー・マクマホンとの間でやりとりされた手紙。トルコとの戦いにおいて協力してくれるならアラブ人居住地の独立を約束した。

1916 サイクス・ピコ協定 Sykes-Picot Agreement

原文はなく、The Guardianの言及記事があるのみ

1916年5月16日に英仏露で結んだ、オスマン帝国領分割についての秘密協定。作成した、イギリスの中東専門家マーク・サイクス (Mark Sykes)とフランスの外交官フランソワ・ジョルジュ=ピコ(François Marie Denis Georges-Picot)の名前から。この秘密協定はそのまま闇に葬られるはずでしたが、その翌年(1917年)にロシア革命が起きてロシア帝国崩壊し、レーニンによってこの秘密外交がばれてしまったわけです。

バルフォア宣言 Balfour Declaration

原文

1917年11月に、イギリスの外務大臣アーサー・バルフォア(Arthur James Balfour)が、ユダヤ人の大富豪でシオニスト連盟会長を務めていたロスチャイルド家(ウォルター・ロスチャイルド Lionel Walter Rothschild)に対して送った書簡。第1次世界大戦が終われば、パレスチナにユダヤ人の国家を創ることを約束した。シオニズム(Zionism)とは、イスラエルにユダヤ人国家を復興させる運動のこと。

ユヴァル・ノア・ハラリは何を思うか

過去の流れをおさえたうえで、未来から見た私たちはどういう位置にいるのかについては『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』(Sapiens: A Brief History of Humankind)の著者で、イスラエル人のユヴァル・ノア・ハラリが日本のメディアで語っています。

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海外メディアが知りたい

海外の視点も(メディアのリンクは日々、付け加えます)。

TIME

The New York Times

The New Yorker

Foreign Affairs

The Japan Times

 クーリエ・ジャポン


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安全保障理事会の動きが知りたい

国連の動きもいまではダイレクトに視聴することができるようになりました。

United Nations(YouTubeチャンネル)
安保理の採択状況も知ることができます

上記の情報をつぶさにアップデートしてくれるのが UN Web TVです。
https://twitter.com/UNWebTV

Twitter(X)上には安保理の活動についての報告をしているシンクタンクもありますので、(情報は遅れますが)理解の助けにはなります。
https://twitter.com/SCRtweets

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詳しい人の意見が知りたい

中東や国際法に詳しい専門家の発信もいくつか。

曽我太一
ジャーナリスト@エルサレム(2020年〜) | パレスチナ問題、移民・難民、先住民族、テック | 記者経験 北海道→国際部 | Journalist in Jerusalem | Fmr.@stanfordVisiting Scholar | Views mine/Retweets not endorsement
https://twitter.com/soga_taichi

Junko Yasmin Otmazgin
気になるイスラエル/パレスチナのニュースをピックアップ 在エルサレム25年、元メディア従事者、現在は通訳、イスラエルとパレスチナ地域の公認ガイドなど
https://twitter.com/JunkoYasmin

橋本直子
Associate professor, refugee policy researcher, RLI research associate, exUN staff, Forbes official columnist, 一橋大学准教授、難民政策研究者、元国連職員、難民法イニシアチブ、Forbesコラムニスト
https://twitter.com/NaokoScalise

越智 萌
国際刑事司法 (国際法学、国際制度論、平和紛争論)/ 立命館大学・国際関係研究科 准教授Assoc. Prof. of Int'l crim law & justice at Ritsumeikan Uni, Kyoto, Japan/AIDP-YPC/Case Matrix Network senior fellow
https://twitter.com/ochimegumi

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追加情報があれば随時付け足し、修正していきます。




MASANO-RINGO
「やぱ好き!」創設←英語雑誌編集長←新聞記者←『日本の論点』編集/SILS(2期生)/新宿高校/Getty Images contributor
Podcast: https://podcasters.spotify.com/pod/show/yapasuki
note: https://note.com/yapasuki
YouTube: https://www.youtube.com/@yapasuki

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