見出し画像

【「やぱ好き」創刊までの母子手帳3ーー「日→英」「英→日」音声の課題】

前回、英語学習に使える音声素材の可能性について、少し触れてみました。

簡単に振り返ると、
「英語(例: Good morning)」→ポーズ→「日本語(おはよう)」
「日本語(おはよう)」→ポーズ→「英語(Good morning)」
という音声教材は、通勤などの“すき間”時間の学習に便利なはずで、目の不自由な方や家事をしながら学習をしたい方のニーズにも対応できます。

「英→日」だけのシンプルなものであれば、既存の単語帳にも音声データが付属されているのはご存知だと思います(これはすき間時間のための学習素材というより、音声を聞いて英語の発音を確認することが目的ですね)。

既存の教材の全てに、「英→日」「日→英」の音声が用意されていない理由を、あらためて整理したいと思います。

大きく2つの理由があります。
①CDに入れられる音声容量
②音声データを使って勉強する人の実数(つまりニーズ)、制作する手間


①CDに入れられる音声容量


CDには容量の限界、60分強の制約があります。
「英→日」あるいは「英語のみ」の音声だけで50分程度のデータ容量を占めてしまうと、そこにさらに「日→英」まで用意しようとすれば、単純にその2倍は必要になります。2枚の CDを付属させて販売することも(やろうと思えば)できますので、そうした商品も見かけはしますが、CDにもコストがかかるため一般的、現実的ではありません。
 この点は、近年、アプリを使用しての学習に移行しているため、環境が大きく変わっています。2010年代は、出版社などのコンテンツメーカーが自前でアプリを制作してきましたが、開発から運用、保守までのコストはかなり厳しく、2020年代の流れとして、abceedなどのプラットフォーム(出版社などからコンテンツの提供を受けて、より使いやすく学習できるサービスを提供するグループ)が立ち上がってきたため、音声ダウンロードをそのようなサードパーティで行ってもらうという流れが加速化してきました。こうしたサービス上では、容量の問題は無くなります。
 補足ですが、世の中にはCD付属を(意識的、無意識的に)希望する人がたくさんいます。年配の方は特にスマートフォンやパソコンでのダウンロードに慣れていないため当然です。いっぽう、2010年代から、ノートパソコンにCDドライバーが付いていないタイプが主流となり、CD付属して商品を販売しても購入者が(ドライバーがないため)聞くことができないという事態が発生しており、否が応でもダウンロードするしかない事態も生まれています。ダウンロードを難なくできる人たちにとっては、プラスチック製品であるCDが商品ついていても捨てざるを得ません。
 こうした経緯から「CDをとにかく付けてほしい人」と「とにかく廃止してほしい人」の数が日に日に反比例することとなっています。この点は、現時点でいまだ過渡期であり、今回の本題とは少し離れるので別の機会に書いてみたいと思います。


②音声データを使って勉強する人の実数


みなさんは、単語帳や問題集を購入した後、そこに付属している音声を聞いたことがありますか。
今回はその実数を書きませんが、想像の半分ほどです。CDをプレイヤーに入れる、あるいはPCにCDデータを取り込むのが億劫だったり、音声ダウンロードタイプものでも、実際はメーカーに個人情報を登録するなどの手間があったことが要因として考えられます。また書籍をリーディングしながら、「あとで音声を聞いて確認しよう」と言いながらそのままーーで終わってしまっている人も少なくありません。
 また、製作費面で言えば、音声を録音する際には、英文にせよ和文にせよ、当然読み上げるプロのナレーターと、その音声を編集するエンジニアが必要で、その人件費、そしてCDそのものの生産コストがかかります。
 こうした各要素を総合すると、手間をかけて「英→日」「日→英」の音声素材を用意するのは、民間会社にとってはかなりハードルが高かったのだと思います。ただ、前述した通り、学習環境の変化やサービスの広がりを受けて可能性は高くなり、ハードルは低くなっている気がします。


「やっぱり英語が好き!」プロジェクトの一環として、音声素材の可能性に挑戦していきたいと考えております。今回はすでにかなり長い文章になってしまったので、どのような素材が理想的なのかについては次回に。


MASANO-RINGO
『日本の論点』編集→記者→英語雑誌編集長→「やっぱり英語が好き!」編集主幹/新宿高校/SILS/Getty Images contributor/国際交流グループPhotowalk Tokyo創設/簿記2級/ニュース検定1級/1985年生まれ
Twitter: @WMasanoringo
YouTube: https://www.youtube.com/@yapasuki


この記事が参加している募集

英語がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?