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こころの調律

転勤していた娘がGWで帰省して来ました。

特に旅行の予定もなく、友だちに会いに行ったり、前任地でお世話になった人や馴染みのケーキ屋さんを訪ねたりしていました。

ビジターでジムに行くと張り切って出ていきました。そのあとウォーキングをしてきたらしい。もともとぽっちゃり系で見た目に変化はありませんが、生活はすっかりマッスル女子です。

一緒に食べようとお菓子を買い集めていましたが、あまり食べてくれませんでした。毎夜、プロテインを飲んでいる姿はを見ると、単に歳を重ねて成長したのか、都会の生活がそうさせたのか皆目検討もつきませんでした。

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どこへ行くわけでもなく2人で近所を散歩したり、図書館へ立ち寄ったり、お寺に行ったりしながら喋っていました。仕事のこと、曽祖父の調査のこと、先の見えない未来のこと・・・彼女の言葉を借りるなら「絶望しかない時代を生きている」そうです。そしてなぜこうなったのか、どうすれば生き残れるのか、今何をすべきかをテーマに語り合いました。

健常な娘が生きやすい社会でないと、知的障害のある息子などは生きていること自体が難しいのではないかと、大いに危機感を持っている私です。

戦時中の障害者のおかれた境遇を知れば知るほど、今の平和な世の中を存続させていく大切さを痛切に感じるのです。だかこそ社会の問題に無関心でいられません。

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休暇の間、娘は仲良しの友だちや心やさしい人たちに話すことで、心の奥底に沈殿していた毒を吐き続けました。身体を動かし、ご飯を食べて、よく眠りました。こうして娘はすっかり元気になりました。人間の再生には休養、運動、栄養と何より安心できる人たちの中で過ごす時間が必要なのだと思いました。

その過程は、音程の狂ったピアノを調律しているようでした。実際、大学受験の頃から遠ざかっていたピアノを弾くまでに回復したようでした。本を手にする余裕もない日常だったようですが、図書館で数冊の本を読み、話題に上がった「日出処の天子」を大人買いをして一番で全巻を読んでいました。帰り際に私の本棚から吉村昭の「熊嵐」を持って帰りました。

こうして本来の娘に再生して帰っていきました。

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長い休暇を終えて、娘も会社が始まっているようです。私も遠ざかっていた日常に戻すかのように、パソコンを開けて机の周りの書類を整理しました。

娘も私もこころの調律を終えて、戦線復帰です。また会う日までお互いにがんばりましょう。


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