私はeスポーツは盛り上がってないと思うよ
めんどくさいので経緯の説明は端折るけど、Yahooニュースに「eスポーツは盛り上がってない」という旨の記事が掲載され(※該当記事は削除されている)、
「そんなことないんだ!」と、記事のコメント欄やらSNSやらnoteでもたくさん反論があったよ、という背景だけ知っておいてもらえれば。
で、この件に関してはどうでもいい。例の記事はクソだし、くだらないので別に反論する気にもならん。
んで、この件とは直接関係ないんだけど、まあせっかくの機会なんで、私はeスポーツは盛り上がってないと思うということについて、記事を書こう。
もとから書きたかった内容だし。というか書いてた。2年前ぐらいに。それの一部。
できるだけ短くわかりやすく書きたいけど、期待しないでいただいて。
目次の項目は少ないけど、全部読んだら20分ぐらいかかるかもしらん。
◯前提
前提として、二つ。めんどくさいけど、書いとかなきゃ誤解を生む。
・「盛り上がる」という言葉
上に「くだらない」と書いた要因の一つとして、それは議論がくだらないという意味なんだけど、「盛り上がる」という言葉の意味することが曖昧だからというのが一点。
言葉狩りをしたいわけじゃない。ある事象に対して、それを「盛り上がっている」と評するかどうかに、定義もないし個人の印象によるものが大きいと思う。
あるいはそれは、相対的なものかもしれない。
「何かと比べて盛り上がってるかどうか」という話なら、もちろん比較はできるのだけども、それに意味があるかは別の話だ。
例えば日本のプロ野球と比べたら、知名度も観客動員も選手の給料(年俸)も全体的な経済効果も桁が違う。
だけども、別にeスポーツを野球と比べてどうこうという話じゃあないなんてのは誰もが思う。
「野球と比べるとショボいから盛り上がってないんだ!」なんて言ってるやつがいたら、アホかと思うだろう。
逆に、少しでも盛り上がっていれば、それを「盛り上がっている」と言うのだろうか。
例えばあるeスポーツの視聴者が50人で、次回は100人になっていたとしたら、そりゃ1回目と比較したら増えてはいるが、それを「盛り上がっている」とは言わない場合が多いだろう。
しかし、もしかするとそれに参加している選手やスタッフたちは「盛り上がっているぞ!」と喜ぶかもしれない。
あるいはもちろん、ゲームタイトルやチームによっても成功度合いは異なる。
一つのゲームが、一つのチームが、あるいは一つのイベントが成功していたら、もうそれで「盛り上がっている」というのか。
もちろんその逆も然りで、全てのチームや選手・スタッフが、一般人が羨むほどの額を稼げていなければ盛り上がっていると言わないというわけでもないだろう。
したがって、一部の例を挙げて「盛り上がっている・盛り上がっていない」というのは短絡的だ。
eスポーツの話でよく挙げられるのは、さいたまスーパーアリーナに観客がたくさん入っただとか、CRカップの視聴者数が、あるいは選手・チームの問題行為がどうこう。
それらの一部を取り上げて、全体的な話にするのは、あまり適切ではない。
したがって、結局は「盛り上がっている」という言葉は曖昧で相対的であり、「盛り上がっているかどうか」という議論は、「盛り上がっていると思うんならそうなんじゃない?」「それを盛り上がっていると言うんなら、そうなんでしょう」とか、そういう感想にしかならない。
あくまでも私にとっては。
私はeスポーツ自体はもちろん好きだが、別に選手でも関係者でもないので、別に「盛り上がってることになっててほしい」とは思わない。
本質的な意味でeスポーツが盛り上がってほしいとは思っているが、現在の事象に「盛り上がっている/いない」と定義づけることはどうでもいい。
関係者からすると、「盛り上がっているということになっている」ことが重要なのかもしれない。イメージ的に。
私は関係者じゃないのでそんなの知らん。「ボクの好きなものを悪く言うなあああ!!」的なメンタルでもないし。
・「eスポーツ」という言葉・概念
曖昧なもののもう一つとして、「eスポーツ」という言葉だ。様々な文脈で語られるeスポーツというのは、何を指すものなのか。
私は過去にeスポーツに対する記事を結構書いてたりするんだけど、そこでは「ゲームの競技的な要素・楽しみ方」をeスポーツというものだとして扱っていた。
で、概ねその使い方に同意してもらえるとは思う。間違ってるとは言われないだろう。
なんだけども、それ以外のあらゆるものを取り込んで「eスポーツ」というカテゴリに当てはめてしまっているケースは非常に多い。
もちろん、どこからどこまでがeスポーツかなんて線引きはできないだろうし、私もするつもりはない。
ただ、「流石にそれは」と思うようなことまで、eスポーツという概念で纏められているケースも少なくない。
コロナ以降の、動画や配信でのゲーム界隈の盛り上がりは疑うべきもない。
なんだけども、そういう「界隈」を全てeスポーツというのか、というと、それには疑問が残る。
みなさんもご存知のような、いわゆる「ストリーマー」の方たち。元プロ選手だったりする人も多いだろう。
で、その人が普段やっている配信は、eスポーツと呼ぶものだろうか。
あるいは、何かのゲームで他の配信者たちと一緒にゲームをし、対戦していたとする。それを、eスポーツと呼ぶだろうか。
上記のように、線引きはできないだろう。なんだけども、だからといって何でもかんでもeスポーツという概念に押し込め、それらのものを『eスポーツの手柄にする』のは間違っている。
とある真面目なeスポーツの経済効果の調査報告に、いわゆる「ストリーマー」の人たちはSNSのフォロワーも多いですよ、Z世代はそういうのよく見てるんで、広告効果も大きいですよ、という記述を見たことがある。
それもeスポーツに含めるのか?
しまいには、ヒカキン氏や加藤純一氏がマインクラフトをやっててもそれをeスポーツにカテゴライズしはじめるんじゃなかろうか。
それはeスポーツが凄いんじゃないでしょ。
ーーー
あるいは、私はeスポーツは「プロ」のような活動だけじゃないとも思っている。
一般的なスポーツでも、プロの興行が成立・成功しているスポーツのほうが少ないが、それでも多くの人たちがスポーツを楽しんでいる。
したがって、「プロが上手くいってないから・プロでも食っていけないからeスポーツは盛り上がっていない」とは、私は思わない。
むしろスポーツというのならば重要なのは数多のアマチュアの方であるとも思う。(オリンピックも基本的な理念はアマチュアのためものである。)
ここまで、「盛り上がる」「eスポーツ」という二つの言葉について確認した。
上述のような理由から、「eスポーツ」が「盛り上がっているか」は、非常に曖昧であり、明確に定義も線引きもできるものではないと思う。
したがって、「そういう意味では盛り上がってるね」「そのチームは成功してるね」「その観点・要素は上手くいってないね」「それを盛り上がってると言わないなら、そうなんでしょう」という話にしかならないと、私は思う。
なので、私が以下に書く「eスポーツは盛り上がっていないと思うよ」という内容も、曖昧な概念であり、何かと比較した相対的なものであり、「それを盛り上がってないと思うなら、そうなんでしょう」というものでしかない。
これは、「個人の意見です」というような批判を避けるための免罪符ではない。
上で散々述べたように、定義付けもできないし曖昧なのだ。だから、「私はこれらの事象について盛り上がっていないという評価を付けるよ」、という話にしかならない。
300円のケーキを食べて、「この味・内容で300円なら、私は安いと思う」というようなもんだ。
主に、二つの観点から。「昔からやってるよ」と、「競技性への興味」。
◯昔からやってるよ
これは、特にeスポーツなんて言葉や「プロ」という概念が生まれる前からそういう活動をしてきた方たちの名誉のためにも、声を大にして言いたい。
「昔からやってるよ」と。
それこそウメハラ選手なんてのは代表例だ。決して、若い頃は順風満帆ではなかっただろう。稼ぎだって少なかったはずだ。しかし、そういう人たちのおかげで今があるんだ。
あるいは、元プロと呼ばれ、今はストリーマー等として活躍している人たち。当時はeスポーツなんて言葉はなく、プロですらなかったかもしれない。全国大会で優勝しても10万円貰えれば良いほうだったろう。
そういう人たちの活動により、今があるんだ。
eスポーツの文脈で、よく「昔はゲームは悪いものとして考えられれていたがーー、今ではスポーツとして認められーー」みたいな文言がある。
私はアレが大嫌いだ。昔から立派に活動してる人たちがいて、今があるんだ。ウメハラ選手の活躍は悪いものだったとでも言いたいのか?
(話が逸れるから割愛するけど、ゲームは昔から別に悪いもんじゃないよ。
今では立派な大人として各分野で活躍している私の同級生たちも、ゲームばっかやってる。東大行ったやつは某ゲームの上から何番目とかだし、弁護士になったやつはApexプレデターだし、税理士になったやつは月に200時間働いて100時間ゲームしてる。
引きこもってゲームしかできないやつが悪いだけで、それは今も変わってない。eスポーツって名前がついたからそういうものが認められるわけじゃない。問題なのはゲームじゃなくて人間の方なのは、昔から変わらない。)
eスポーツと呼ばれる、ゲーム大会。昔からあるでしょ。それこそウメハラ選手も活躍してた格ゲー全盛期。
漫画「ハイスコアガール」でも題材になった、「インド人を右に」で有名な雑誌「ゲーメスト」が主催するゲーメスト杯だとか。
あるいは時代はもう少し進んで、KONAMIのアーケードゲームの日本一を決めるKONAMI Arcade Championshipってのは前身のBEMANIトップランカー決定戦も含めれば2005年から行われている。
挙げ出すとキリがないが、ゲームってのは大会とともにある。ポケモンだって初代から全国大会があったはずだ。
当時は紙媒体なのでeスポーツとは呼ばないかもしれないが、カードゲームだってもちろんそうだ。
そういう観点から比較すると、別に大会だのなんだのが行われるのは昔から同じなので、特段「盛り上がっている」とは思わない。
例えばよく挙げられる、Valorantでさいたまスーパーアリーナに1万3000人×2日集めた、って話。もちろん凄いことだし、こういうことが続いていけばいいと思う。
ただ、ゲーム大会で人数集めるのって、昔からだ。
例えばぷよぷよ。1996年の全国大会には、1万8000人が訪れたという。
もちろん、Valorantのほうはそこそこ高い入場料を取ってーーという部分が凄いことは言うまでもない。
なんだが、金の話を始めると現代のeスポーツのほうに逆に不利になるかもしれない。
別に客が入場料を払うことだけが正義ではない。「金払ってるから凄いんだ!」ならば、今の多くのeスポーツは無料の配信なので、それらは凄くないことになる。
あるいは「黒字・赤字」の話は単純なものではない。ただ客が金払うかどうかにとどまらず、全体的な経済効果や持続性・発展性、企業の広告効果など、非常に複雑な話だ。規模がデカくなるほど、「赤字だからダメ」という話でもなくなってくる。
そして御存知の通り、多くの場合でeスポーツは金の面で上手くいっていない。「スーパーアリーナを埋めたからいいんだ!」という話ではない。(厳密には埋まってはないし。最大キャパは37,000人。)
ぷよぷよのほうも大会の普及もあり、コンパイル社は当時はクソ儲かってた。調子乗って事業広げようとしすぎて、一瞬で潰れたけど。
ーーー
上の前提で、「相対的な比較にしかならないよね」、「盛り上がってるかは曖昧だよね」ということを述べた。
それらの意味で、昔から行われているあらゆるゲーム大会というものと比べると、現代のゲーム・インターネット・動画配信等の隆盛を鑑みれば、別に取り立ててeスポーツが盛り上がっているとは、私は思わない。
もちろんあらゆるものは「増えて」いるだろう。人だったり金だったり。しかし、言うほどでもないよね、という話だ。
当時はオフラインのアーケードだとか、スーパーファミコンとかだ。携帯電話も普及していなかった。そんな時代でも、ゲームの対戦・大会は非常に盛んに行われていたんだ。
今の時代、それぞれのゲームの利便性も向上し、圧倒的に大会は行われやすくなった。
オンラインで出来るし、各種SNSなんかでも告知・募集もしやすい。それを動画や配信に乗せるのだって当たり前だ。
それほど爆発的にゲームの大会・競技というものに追い風が吹いているにもかかわらず、もちろん増えてはいるかもしれないが、その増加量の傾きはゆるやかであるように思われる。
それらの意味で、「eスポーツ(と呼ばれるもの)は昔と比べて言うほど盛り上がってはなくない?」と、私は思うのだ。
「増えてはいるだろうけど、こんなもんか」と。
◯競技性への興味
私が、eスポーツは盛り上がっていないと感じるもう一つの観点が、「競技性への興味」だ。
私の主張は一言で終わる。「みんな言うほど好きじゃないでしょ?そんなに興味無いでしょ?」と。
ーー
「前提」にて、eスポーツという言葉は曖昧なものだって話をした。
別に何にeスポーツって名前をつけてもいいかもしれないが、それでもやはり限度はある。
上にも書いたが、ヒカキン氏がマインクラフトをやってる動画が何百万再生されても、「eスポーツが盛り上がってる!」とは思わないだろう。
あるいはeスポーツと呼ばれるタイトルのゲームだとしても、超有名なアイドル歌手がApexをやっていたとしても、それをeスポーツの盛り上がりとは言わないんじゃなかろうか。私は言わない。
そういう意味で言えば、私は「昨今のゲーム界隈の隆盛」を、直接イコールで「eスポーツ界隈の盛り上がり」と繋げられるとは思わない。繋げてる人も多いけど。
もちろん1か0かの話じゃない。eスポーツ的な要素もあるし、盛り上がっていると言えるような要素もある、という話になる。
その要素は様々だが、私はeスポーツを「ゲームの競技的な楽しみ方」だと思っているので、「競技性への興味」というのは非常に重要な要素だと考えている。
「競技性」というのは、「競技シーン」などとよく言われるが、それは別にプロ活動とかそれに準ずるものだけの話じゃない。
上にも述べたように、「ゲームの楽しみ方が競技的であるかどうか、それはどれほどか」という話だ。
例えば、ApexやValorantをプレイする形式は様々だ。もちろんどんなふうにプレイしてもいいが、「野良マッチで一人でプレイする」よりは、「チームvsチームで対戦する」ほうが、競技性は高いと言えるだろう。
あるいは自分一人でプレイするにしても、「なんとなく遊ぶ」よりは、「練習や研究を重ね、上達を目指してプレイする」ほうが、競技性は高い。
「試合や大会を観戦する」という行為においても、「自分の好きな人・有名な人・美男美女が出てるから見る」よりは、「ハイレベルなプレイヤーたちの試合を、戦術や技術に注目して見る」というほうが、競技性は高いだろう。
それらは全て程度問題だ。1か0じゃない。ただ、そういうものを比較していった時に、やはり私は、「みんなあんまり競技性に興味ないよね」と思う場合が多いのだ。
例えば、ApexやValorantを野良のマッチでプレイしている人は非常に多いだろう。一方で、試合や大会に出てプレイしている人はどれほどいるだろうか。
「野良のマッチじゃ満足できねえ!試合したい!大会に出たい!そういう人多すぎ!じゃあ自分が主催する!毎週どこかしらで試合・大会やってるぞ!」という状況なら、競技性という観点から、「eスポーツが盛り上がってる」と私は思うだろう。
しかし、もちろん私が知らないだけかもしれないが、多くのプレイヤーは野良のマッチにとどまっているだろう。
繰り返すが1か0かじゃない。野良のマッチはeスポーツじゃないと言いたいわけでもない。しかし、程度問題で大きいか小さいかで言えば、野良のマッチで遊ぶだけでは競技性は小さいと言えるだろう。
「いや、eスポーツ大会は開かれてるし、参加者は多いんだ!」というかもしれない。私も色々と調べてるし、いろんな大会があることはもちろん知っている。
ここで、とあるスポーツの大会の開催実績を見ていただきたい。ウェブサイトで確認できる公式大会をリストアップしていったものだ。
学生はあんまりいないと思う。ジュニアの部とかもあるけど、ほとんどは大人・社会人。
全てを網羅しようと思ったのだが画像がデカくなりすぎるしめんどくさいので、1枚に収まる部分までにした。このあとも11月ぐらいまで同じように続いていく。
見ての通り、各都道府県で数十チームが集まる大会が幾度となく行われている。
さて、このスポーツとはなんだろうか?
正解は、ペタンクである。
ペタンク。知ってます?
金属球を目標に投げて、相手の球を弾く。地上でやるカーリングみたいなルール。
このマイナースポーツのペタンクの大会が、全国各地で上の図表ほど行われ、あれ程のチーム数が集まっているのだ。
ペタンクでこれだ。野球やサッカー、バスケと比べようってんじゃない。
「eスポーツの大会には◯◯チームが集まり~」なんて文言をよく見る。
各種タイトルのチーム数やそれぞれの大会を合計して、多いぞ!と言っている。
ペタンクは、ペタンクだけで埼玉に36チーム、愛媛に36チーム、大阪に64チーム…集まる。それが1年中各地で開催されている。
オフライン大会。プロでもないアマチュア。もちろん交通費も参加費もかかる。
だから、eスポーツが盛り上がってるとは、私は言えないんだ。
ペタンクはもちろんプロなどいない。金を払って大会を見に来る客もいないだろう。
だったら、プロがいて金を払って大会を見に来るような客が何万もいるeスポーツは、さぞかしみんな大会とか興味あるんだろう、という話になる。
が、現状では大会はスポーツに比べると少ない。なんならプロの試合も少ない。
試合だの大会だのなんて、スポーツやってればやるのが当たり前すぎて、取り立てて言及されることさえない。
私だって小学生のころからスポーツの試合・大会に出続けているし、大学の部活やサークルともなれば、運営からなにやらまで自分たちでやるのが当たり前だ。
大学の部活では全国大会の会場設営や運営に携わったし、サークルでは私が主催して地域の対抗戦を開いたりもしていた。別にそんなの当たり前だ。
なんなら小学生の頃から、サッカーの試合だとアシスタントレフェリー(線審、オフサイドとかの旗上げる人)をやるのも普通だ。
だから、別にやっている人をけなすつもりはないが、eスポーツの大会に出ました!手伝いました!携わりました!みたいなことがあるが、別に何ということもないと思う。
私だってゲームの大会に出たことは何度もあるし、運営の手伝いに回ったこともある。そんなので、盛り上がってるとは思わない。当たり前だから。
(※話は逸れるが、私がeスポーツに興味を持ちはじめたころに、そして今でも思っていることが、試合数の少なさだ。
オンラインなら会場の制限もないし、一般的なスポーツに比べれば疲労も少ないはずだ。なのに非常に試合数が少ない。
「プロ」と呼ばれる存在なのに、なんならトーナメント形式だったら1シーズンに数試合しかしないこともあるだろう。
「スクリム」と呼ばれる練習試合はたくさんしてるだろうけど、だったら公開する大会をもっとやりゃいいのにと思う。
まあ希少価値がなくなるし採算も取れないからなんだろうけど。)
ーーー
競技性への興味ってのは、自分でプレイすることだけじゃない。観戦・視聴することにおいてもだ。
これは深く言及する必要もなく、一般に認知されていることだろう。「プロよりストリーマーのほうが儲かる」というワードが、実に端的に表している。
それは形式・役職の話じゃない。そのコンテンツの中身の話だ。
ストリーマーの方たちが行う配信の内容が、競技的なものがメインであるならば、それは競技性が高いと私は判断するだろう。
例えば現役を引退した人たちで試合をするとか、カジュアル大会に参加するとか、皆で上達のために・上達に繋がるコンテンツを配信するとか。
もちろんそういう活動は少なくない。しかし、割合として多いとは決して言えないだろう。
eスポーツタイトルのゲームを配信していても、野良のマッチをプレイすることが多いはずだ。
あるいは、そういうのは視聴者から不評で、「試合とかやってよ」「大会に出てよ」という意見が多くなるのならば視聴者も競技性への興味は高いと言えるだろうが、現状のほとんどはそうはなってはいないように思われる。
一昔前のApex全盛期に、あらゆる大会が行われてきた。主にプロや元プロ、配信者やコンテンツクリエイターのような人たちを集める大会もたくさん行われてきた。最も有名なのはCRカップだろうが、それ以外にもたくさんあった。
そういう大会が積み重なるに連れ、「ガチな試合が見たい」「もっと練習して研鑽している様子を見たい」「上手い参加者が増えてほしい」という意見が増えていくのならば、それは競技性への興味が増えていることになるだろう。
しかし、実態としてはそうなっていかなかったように思える。
「スクリムが多い」というような不評も多かったようで、チーム分けも当日に決めるようなぶっつけ本番の大会形式のものもあった。
競技性を求めるのならば、練習は多いほうがクオリティは上がる。しかし、多くの視聴者はそういうものを求めていないのだ。
ーーー
あるいは、それぞれのゲームに対する熱量。競技要素のある、eスポーツタイトルのゲームにおいて。
もちろん野良のマッチしかしなくてもいい。だが、それに対してどれほどの熱量を持ってプレイしているだろうか。
「テキトーに野良のマッチしてりゃ楽しいや」という場合よりは、「そのゲームをより深く理解して上達していきたい」という方が、競技性への興味は高いと言えるだろう。
それらの熱量を、個人個人に尋ねるのは不可能だ。だが、一つの指標となりそうなものがある。
動画だ。
別に、良い悪いの話じゃないし、正しいとかどうとかでもない。そういう動画を投稿してる人や見ている人についてどうこう言うわけでもない。
その上で、少なくとも日本においては、eスポーツタイトルのゲームであっても、競技性への興味は低いんだろうなと思われる動画は多い。
上述のように、「競技性に興味がある」「そのゲームをより深く理解して上達していきたい」というような人が多いのだったら、あるいはそういうものを布教していきたいんだったら、そういう動画が増えていくはずだろう。
しかし、YouTubeに投稿されるものは、例えばプロと呼ばれるチームに所属する人によるものでも、「簡単・短時間・カジュアル」なものが多い。
日本でもプロの競技シーンが確立されているようなタイトルのゲームでさえ、15分ぐらいの「誰でも簡単に◯◯ができる!?」のような、申し訳ないが浅い動画が非常に多い。
(私はそういうのって逆に競技シーンへのネガキャンになると思っている。簡単じゃないからプロの人たちは凄いんじゃないのかよ。プロの凄さを伝えなきゃ。)
「日本と比べて海外は~」みたいなことを言うのはアレだが、例えば私が多く記事を書いてるオーバーウォッチ。
海外の配信者や動画投稿者は、1時間オーバーの動画なんて珍しくもない。しっかりと伝えたいことを存分に伝えようとしている。
あるいは、私もよく参考にしているSpiloコーチのサポートヒーローに関する動画。5時間50分である。
ちなみにタンク編は6時間39分、ダメージ編は13時間47分ある。
eスポーツタイトルのゲームは競技性に富んでいる。選手たちは日々の練習により上達しており、到達点などない。
そういうゲームにおいて、競技性への興味が深いのであれば、やはり多くのこと・詳しいことを知りたかったり、伝えたかったりするんじゃかろうか。
「オーバーウォッチは日本で盛んじゃないから」と思われるかもしれないが、じゃあValorantやApexだったらそうなってんのかって話で。
もちろん例外はいくらでもあるのだけれど、日本では多くのeスポーツタイトルのゲームの動画でも、15分程度の簡単で浅いものがほとんどだ。
別に私がどうしたから何だって話でもないが、例えば私は上記のような英語の動画を見て、翻訳して要約して記事にしたりする。
別に私はオーバーウォッチの選手でもコーチでもない。なんなら野良のマッチだってそんなに積極的にやる人間でもない。
しかし私は、オーバーウォッチというゲームの競技性は素晴らしいものだと思っているし、その競技性に興味があるから、より深く知ろうとして英語の動画だって見るし、それを翻訳・要約して記事にすることもある。
私の英語は受験まで。遠い過去の話。当時も得意じゃなかったし。それでも、海外の数時間の動画を見ようと思うぐらいには興味がある。
もちろん私以外にもそういう人はいる。ゲームの競技が好きで、競技シーンを追いかけている、競技性を知るために色々と調べ、研究していくような楽しみ方をする人が。
しかし、やはりそれは比率としては多くはないだろう。そういう需要も供給もあるのならば、もっとそういうコンテンツが増えているはずだ。
ーーー
eスポーツという言葉が生まれてからもう数年が経った。
その間、それこそ配信や動画で活躍していく人たちは増え、少なくない額の収入を得られる人も多くなっただろう。
なんだが、それらの増加量に比べると、やはり「競技性への興味」は伸び悩んでいると言わざるを得ないのではなかろうか。
動画や配信で競技的なことをするから人気が出て収入も増えた、という人よりは、むしろそういう活動から離れていき、反比例して人気も収入も増えているような人のほうが多いように見受けられる。
これらのことより、eスポーツという言葉は様々な意味を持つかもしれないが、「競技性への興味」という観点からするならば、大して盛り上がってはいないと私は思っている。
◯追記:賞金
書き忘れてたんで追記。あとから追加したから文脈がおかしくなるんで、軽くだけ。
eスポーツの文脈では、よく「日本では賞金のシステムがー」という話になる。
「eスポーツの盛り上がりとは、大会に十分な額の賞金が出ることだ」と定義するなら、そうかもしれない。
が、私としては、意味がわからない。なので申し訳ないけど、eスポ関連のこの話題で賞金がーて言ってる人は的外れだと思ってる。
理由として、私としてはなんで賞金の話をしてるのかがわからない。
「あの魔王を討伐した勇者は娘との結婚を認め次期国王の座を与えよう」みたいな話に思える。「eスポーツは優勝しても国王の娘と結婚できないから盛り上がらない」なんて言われない。
それと同じ。「賞金」。日常生活において、学校生活・社会人生活において、これほど馴染みのない概念。なんでeスポーツではそれがさも基本的なシステムのように思われてるんだ。
みなさんが普段の生活でやってること、あるいは一般的に盛り上がってると言われてること。賞金が出るからやってんの?違うでしょ?
みんな原神にめっちゃ課金してんじゃん。パルワールド買ってやってんじゃん。賞金出るから盛り上がってんの?
部活とかスポーツとか、普通のゲームとか趣味とかなんでもいいけど、賞金なんて出ねえよ。当たり前じゃん。
それこそスポーツ。中学生・高校生・大学生の部活。賞金なんて出るわけねえじゃん。
スポーツジムに行く、サッカー観戦に行く、ゲーセンで連コインして、麻雀の大会に出る。やりたいことって、金払ってやるもんでしょ?
それが、なんかeスポーツは賞金がーとか言う。「賞金が出ないならやりません」ということなら、そりゃあ盛り上がらないよ。
日本中を見渡してみて、盛り上がってると呼ばれてるものが賞金のおかげのものなんてほとんどないでしょ。ギャンブルとかをそう呼ぶならそうだけど、eスポーツてギャンブル的にやるもんじゃないでしょ。
※というか、言ってるの外部の人間だけじゃないのか。チームとか選手が賞金をアテにして活動してるなんて聞いたことないんだけど。
◯結:重要なのは「これから」
初めにも書いたように、「eスポーツ」も「盛り上がる」も曖昧な概念なので、別に定義づけしたいわけでもないし、もっと言えば「盛り上がっているかどうか」もどうでもいい。
書いている通り、「そう思うんなら、そうなんだろう」としか言えない。だから私の書いたこの記事も、「こういう観点から考えて、私は盛り上がってないと思ってるよ」というだけの話だ。
重要なのは、今の事象に対して「盛り上がっている/いない」という裁定を下したり議論することではなく、「これから盛り上がっていくかどうか」ということではないだろうか。
それは、eスポーツについて非常に深刻な問題でもあると思う。
角川でゲーム関連のマーケティング分析をされていた但木一真氏は、2019年にはもうその警鐘を鳴らしている。
あるいは昔読んだ海外の記事で、ブックマークしてなかったのでソースは出せないんだが、「eスポーツは今から成長すべきコンテンツなのに、もう完成したもののように考えている」という主張を見た覚えがある。
これから成長していくからこそ、それに投資する価値があるのだ。その投資というのは単純に金銭をスポンサードするというだけの話ではなく、時間・人間・ノウハウといったものも全てだ。
「安い時に買う」というのは基本だ。重要なのは、それがこれから成長するかどうかである。成長する見込みがないものを買っても・投資しても意味がない。
その点に関して言えば、eスポーツはどうやらあまり明るい話ばかりではない。主に海外にて、チーム・スポンサーが撤退したという話はいくらでも聞こえてくる。Valorantで、AMERICASリーグ入りのためのAscensionを勝ち上がったThe Guardが参入を取りやめたことは記憶に新しい。
金の話で言えば、「今儲かっていない」のは大した問題じゃない。多くの事業でそうだ。規模が大きくなるほど、初めは赤字で、数年~十数年単位で黒字転向を見込んでいくもんだ。
例えばAbema TVはクソ赤字で、株主からも辞めろと言われ続けているらしいが、藤田社長は10年で黒字にするつもりらしい。今7年目ぐらいだろうか。どうなんでしょうね。しらんけど。
その繋がりでいうならば、麻雀のMリーグは、eスポーツなんて吹けば飛ばせるような超一流企業たちがチームを持ち、麻雀ファンなら誰でも知ってるような有名プロたちが集まって始まったのだが、それでも初年度は数億円の赤字だったという。
それでも数年経って好転し、Mリーグ自体は黒字っぽい。(いやAbemaが赤字覚悟で放映権買ってたらMリーグは黒字にもできるだろうよ。そのへんの詳しいことは知らんしどうでもいいけど。)
ともあれ、eスポーツの話なら、今儲かってないかもしれない。しかし重要なのは、「今後儲かるようになるのか」ということだ。
今後儲かるようになるのなら、今の二束三文で買えるようなチームや選手は、今のうちに買っておくべきだろう。しかし、多くのeスポーツタイトルでそう上手くは行ってない。
ということは、投資家・企業からは、「今後も儲かるようにはならない」と思われているのだろう。もちろん成功した例もいくらでもあるが。
あるいは競技シーンの金銭的な問題だけでなく、上の項目でも書いた「競技性への興味」のような事柄について。
今はまだ、競技性に興味を持つ人が少ないかもしれない。では、今後は増えていく見込みがあるのか?増えていくような活動が行われているのか?
どうだろう。簡単に否定はできないだろうが、簡単に肯定もできないだろう。
簡単に肯定もできないということは、やはり今後の発展性に疑問が残るということだ。
上にも書いたが、動画や配信の活動、それを見る人たちの好みが、「昔は野良のマッチをテキトーにプレイするのを見ることだけだったのが、最近ではチームでの試合や競技活動のような配信を見たいという人が増え、そういう活動が盛んになっていっている」と、なっているだろうか。
もちろん全否定はしないし、全肯定もしない。そういう活動もいくらでもある。
そしてもちろんそれも、「今、そういう活動があるからOK」という話ではない。「今後、そういうものが盛り上がって・普及して・需要と供給が高まっていくのか」という話だ。
ーーー
私は盛り上がっていないと思うが、繰り返しているように、「現在盛り上がっているかどうか」は、くだらないと思う。どっちでもいい。
重要なのは、「これから盛り上がるかどうか」だと思う。そして、その点に関しても、私は微妙だと思っている。今のところは。
ただし、それもやはり今のところだ。今後はわからない。
現状で成長性が低くても、これから成長性が増してくるかもしれない。
特にモバイルのeスポーツタイトルは若い選手が多い。そういう選手たちが現役を引退し、コーチのような役職につくかもしれないし、あるいは学校の教師となってeスポーツ部の顧問になるかもしれない。
子どもが生まれ、その子がeスポーツに勤しみ、プロの選手となっていくかもしれない。
成長性なんてものは、そこまで経ってはじめて評価できるものかもしれない。
私だって子どもの頃からスポーツやってたから、ゲームにおいても競技性が好きなんだ。
子どもの頃からeスポーツという概念が染み付いてる子が大人になったら、そして子どもが生まれて成長したら、ゲームの競技要素も浸透しているのかもしれない。
だからこそ、現状での「盛り上がっているか」議論はどうでもいい。
いや、どうでもいいというよりは、「盛り上がっていると言ってはいけない」とさえ思っている。
上手くいっていることもたくさんあるが、そうでないことがたくさんあることも知っているだろう。
だからこそ、こんな現状で盛り上がっていると満足しちゃあダメなんじゃなかろうか。もっともっと上を目指さなきゃならないんじゃないだろうか。
競技選手として食えてる人は少ないです、スポンサーは撤退していきます、ゲームの視聴者は競技性に興味ありません。
こんな状態を「盛り上がってる」とは言わず、「今は盛り上がってないけど、これから盛り上げていくためにはどうすればいいのか」ということを考えていくほうが、よっぽど重要だと思う。
私は、eスポーツは盛り上がって欲しいと思っている。それは、盛り上がっていないと思っているからだ。
eスポーツが現状で盛り上がってると思ってる人よりは、そう思ってるんじゃなかろうか。
最初の方にも少し書いたが、「eスポーツをけなされた!くやしいよう!そんなことないんだあああ!」のようなメンタルでは成長しない。
「今は盛り上がってないから、盛り上げなきゃダメなんだ」というほうが、よっぽどeスポーツのためである。
なんなら、「今は盛り上がってないですよ!」というほうが良いまである。
「今は盛り上がってないから、選手もチームも安く買収できますよ!今から盛り上がっていくですよ!成長性が高いんですよ!」という方が、投資する立場に対してはセールスポイントなはずだ。
「今の現状で、eスポーツってのは盛り上がってることになってます。」だったら、そりゃあ投資はしないでしょうよ。
「今、盛り上がってるかどうか」ではなく、「今から盛り上がっていく」ことのほうが、重要だろう。
2024/01/29 山下
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