見出し画像

休日の過ごし方問題<モールクエストからの脱却>

思い返すと親の幸せそうな様子ってどんな姿だったか。
父の、旬の秋刀魚にホクホク顔で箸を入れる姿。
母に関しては無数にありすぎて難しいけれど、最近ではおいしいコーヒーを淹れてくれて、それを妹と口々に褒めたら「淹れる人が上手だけん!」とにっこり笑っていた瞬間が印象的だ。

さて、私も6歳と2歳の親だが、どんな時に幸せそうな表情を見せられたかなと振り返る。
ここには休日の過ごし方問題も絡んでくる。

夫と6歳と2歳と休日を過ごす。家族でショッピングモールに出掛けることもあるが、それは我が家ではごくたまにということにしてある。
かわいいかわいい6歳と2歳、こんな服を着せたらかわいいだろう、こんなおもちゃは夢中で遊ぶかな、魅力的な商品の数々に親の財布は緩む。
こどもたちも巧みな宣伝と広告には敏感だ。親の本来の目的とは全く別のものの前でキラキラ輝いた目をがっちり目標物にロックオンしてテコでも動かない。
極め付けの昼ごはん難民。先手を打ったつもりではあったが、レストランは長蛇の列でフードコートへ流れる。時は物価高、ちょこんとこれしきの食事にこのお値段でお野菜不足。外食産業の皆さんの努力は理解する。でも毎日自炊で地味に生きてきて、たまの外食が、こんな感じ。驚きなのはこれでまだお昼の12時を回っていないことなのである。

帰宅した直後にガチャガチャのおもちゃで足を滑らせる。さっきあんなに欲しいと泣いて騒いでいたよね。消費で得られる幸せって、一瞬で消え去ってしまうんだろうなと遠い目をする。

お母さんも自分の服を見たかったよ。そんな本音はさておき、モールクエストを制する者は休日を制するのだろうか??たくさんの戦利品を手にホクホク、幸せという親の姿もいいが、もっと違った姿を見せたい気がする。
お母さんは実は、消費させられることにうんざりしている。

我が家の休日は猛暑や悪天候でない限り自然の中で過ごすこととしている。

2時間車を走らせる。
田んぼが見える。今の稲は緑なの黄金色なの。
どこかで野焼きの煙が上がっている。車の中まで入ってきて少し煙い。
近所では見たことのないような巨大な鳥が翼を広げて頭上を旋回している。
不意に道路を何かの動物が横切る。
木々の葉は色づいたの、落ちたの。
車を止める。雑草が伸びていてドキドキしながら足を着地させる。

到着したらまず、手頃な枝を探す。
マイ・ステッキで蜘蛛の巣を払いながらサイトまで進む。
木々に囲まれる。思い切り吸った空気がひんやりして新しい。

草むらを触るとバッタがぴょんぴょん跳ねる。
お母さん火花パチパチ、火をつけようとしてる。なんか諦めた。ガスバーナー出してきた。昨日の晩雨だったからって言い訳してる。

待ちくたびれた頃にやってくるふにゃふにゃの焼き芋。
所々焦げてる。スーパーの焼き芋みたいにねっちり甘くはないけどホクホクしてる。
お父さんとお母さん、一匹の秋刀魚をありがたそうに分けあってる。
黒いとこが全然苦くなくなったんだとか、喜んでる。
炭火は違うんだとかなんか語ってる。

焚き火臭くなって帰る。
帰る頃にはもうぼうぼうの草も虫軍団も恐ろしくて家が恋しい。

家はなんだか何もなくて綺麗だ。
ちいとは片付けよう。
しばらくするとなぜかまた焚き火しに行きたくなる。
クセになる香ばしい焼き芋のせいかしら。

繰り返す四季は、消費を煽ってきたりこどもたちを物欲で支配したりしない。
ただそこに新しい発見や、何度も同じように巡ってくる喜びがある。

冬が終わってポンと弾む開放的な春の感覚。
夏は虫と猛暑が危ないので割愛しよう。
焼き芋との再会を喜び、葉の色づきを待ち侘びる秋。
焚き火の温もりが嬉しい、そして厳しい冬。

夫婦で季節のうつりかわりについて語らうのが、お母さんの一番幸せな時間です。

大人になっても覚えていてほしいな、という思いで今週も2時間車を走らせる。

#ウェルビーイングのために

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?