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「山育」のススメー取組み編

ずいぶんと間が空いてしまったが、「山育」のススメシリーズ第二弾として、実際に山でこどもたちとどんなことに取り組んでいるのか、紹介することにしよう。

大きく分けて4つほどの活動をしている。

① 林業的活動 
② 植物の栽培や観察
③ 生き物観察
④ 火の体験

どんな活動なのか、それぞれ見ていくことにしよう。

① 林業的活動


もとは放置竹林だった我が山を、多様性のある強い森にすべく、適切に木を切っている。

林業について勉強する前は、森なんて木を切らないでそのままにしておくのが一番森林のために良いのだろうと思っていたが、どうもそういうわけではないらしい。

木にだって寿命がある。

元気な木は活発にCO2を吸収し、根っこでしっかりと土を掴み、土砂崩れなんかを防いでくれる。

古い木はこのように倒れて、土壌はゆるゆる


できれば杉ばかりになってしまっている箇所は、クヌギやコナラも混ざって生えるように変えていきたい。それらはカブトムシやクワガタなんかが好む木々だ。
いつかうっかり虫界のヒーローたちに我が山でエンカウントする、なんてことを夢見ている。

日本の国土の7割が森林だそう。
こどもたちには森林の管理について、体感をもって知ってほしい。
古い木を切り倒すと森に光が差し込み、新しい木が育つための日当たりのいい場所が生み出される。
愛おしい幼木に親しみ、どんなペースで大きくなるのか、こどもたちと一緒に観察していきたい。

② 植物の栽培と観察


たくさん土があるからには、農業の真似事をやってみたい。
こどもたちが野菜が好きになるかもしれない。
そんなわずかな期待とともに。

やってみると本当に難しい。なにしろ毎日見に来ることができないのだ。水が足りないとか、害獣害虫とか、いろんな理由があるとは思うが、ほぼ全ての作物がいつのまにか消失している。

このあと跡形もなく動物に食べられてしまったキャベツ

勉強を重ねて、やり方を変えて、少しずつ上達している。
今年は植えた種の倍量ほどのひと握りの枝豆と、虫も食わない甘くないマクワウリを収穫した。

ころんと実ったマクワウリ

それでも、雑草をかき分けて収穫物を発見した時の喜びたるや、絶叫ものである。大きな声を出してしまっても大丈夫。そこは人里離れた山の中なのだから。
できれば少しでも多く、美味しい作物を収穫できるようになりたいものだ。

③ 生き物観察


動きを感知したら動画を撮ってくれるカメラを設置して、どんな生き物がいるかを観察する。
今のところうさぎ、ハクビシン、たぬき、猪あたりがいるらしい。
鳥の巣箱も設置してみた。

巣箱に内見にくるシジュウカラ

生き物たちが季節とともにどんな生活を営んでいるか、垣間見ることは楽しい。普段はペットNGの物件に住んでいる。そして長女はペットを飼いたいと毎日呟いている。ちょっと住まいが離れているが、うちにはうさちゃんがいるじゃないか。こどもたちは納得していないようだが、わたしたち夫婦はうさちゃんらを立派な我が山のファミリーとして認定している。

大事な作物を守るためにも役立つ。
どんな柵を立てれば、食べられずに済むのか、生き物の動きの分析が大切だ。

これから力を入れたいのが、日本の固有種、ニホンミツバチファミリーの誘致だ。

フルーツや果実が結実するためには、虫たちの力が必要不可欠だ。
実際農業でも人間の手で受粉することは大変手間なので、未だ家畜としてのミツバチやハナバチが活用されている。お昼に食べたミニトマトは、ミツバチのおかげで実ったんだなぁ。
年々全世界の虫の総量は減少しているというが、それは由々しき事態だ。
こどもたちやその後の世代が果実にありつけるように、微力ながら虫の好む環境を残していきたい。

巣箱を設置し、草花や果樹を植える。
少しだけはちみつのおすそ分けをいただけたら、それで大成功である。

ミツバチ用の物件

ニホンミツバチの誘致はまだまだ目標のままだが、他の虫は増えてくれている。
余分な木を切って薪にするために積んでおいたら、いつの間にかクワガタの幼虫の住処になっていた。下の幼虫マンションの写真、幼虫が食べて分解していった道が見えるだろうか。幼虫嫌いの方のためにバナナのスタンプを上に重ねておいた。

幼虫マンションと化していた

来年は成虫になった彼らに出会えるのだろうか。楽しみで仕方がない。

④ 火の体験

火を見る機会って、今やこどもたちにとってはとても貴重だ。

近所に本来は焚き火ができたはずの公園がある。今は近隣から煙によるクレームが来るために焚き火を自粛しているのだそうだ。
でも忘れてはいけない。私たちは火を使い道具を使うから、人間である。

さあ、人里離れた山奥で好きに火を使おう。

これが点かない、大きな薪に火が移らない、目を離せばいつの間にか消えている。
やってみるとこれも難しいものだ。

火加減がわかっていない頃の自炊

普段スイッチをひと捻りで直ぐに得られる熱エネルギーは、火と薪ともなると扱い方がずいぶん違ってくる。天候によって気まぐれを発動させる。目を離せない世話の焼ける生き物のようなものになる。

この世話の焼ける生き物が愛おしく、暖かく、ありがたくて、恐ろしいのだ。
こどもたちには火のいろんな側面を知ってほしい。


普段の生活では野菜はスーパーで買えばいいし、寒かったら暖房のスイッチを入れればいい。ご飯を食べたければガスのスイッチを捻って、炊飯器のボタンを押す。
毎日お金を支払うことで文明の恩恵を享受する。

山に行って少しだけ、文明のないところに身をおく。
そしてこどもたちと一緒に文明のありがたさを感じたい。

文明抜きの私たちは失敗だらけだ。

知らないことがポコポコ無限に湧いてくる。
ありがたき知識欲の泉。
大人2人がかりで必死になって調べて学び続けている姿も、子どもたちの記憶の片隅に残ってくれていると嬉しい。

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