逮捕された頂き女子「りりちゃん」のマニュアルには何が書かれていたのか
「頂き女子」を名乗っていた「りりちゃん」が逮捕された、というニュースを見た。リンクは以下。
「頂き女子りり」を逮捕 恋愛感情利用し男性から金をだまし取るマニュアルを販売か 詐欺幇助の疑い
「頂き女子」とは、「男性からお金を頂く女子」という意味で、恐らくりりちゃんの作った造語だと思われる。
パパ活をする女性に、男性から現金をだまし取るためのマニュアルを販売した詐欺ほう助の疑いで逮捕されたようだ……が、正直「逆に今まで捕まってなかったのか」という感想が先に来てしまった。詐欺は立件が難しいから本人は詐欺で捕まらず、マニュアルの販売で逮捕されるというのもすごい話だが。
そういえば、このりりちゃんが販売していたマニュアルを持っていたので、読み返してその辺のことを書こうと思う。ただ、このマニュアルにはいくつかバージョンがあるらしく、俺が持っているこれが逮捕の決め手になったものかどうかは知らない。
記憶が正しければ、りりちゃんは3年くらい前から「頂き女子」を名乗っていた。
りりちゃんの販売していたマニュアルによれば、りりちゃんは「元限界風俗嬢」で「元限界ホス狂い」らしい。「頂き女子を極めたおかげで、毎日ホストに通いながら毎月平均200万円を担当に貢献することができた」と書いてある。
このマニュアルには「今は風俗もホス狂いも上がって、自分のためにお金を頂いている」と書いてあったが、マニュアル販売後も関東のソープに在籍があったりしたので、書かれていることがすべて本当かどうかは知らない(し、興味もあまりない)ことに留意していただきたい。
マニュアルによれば、「頂き女子活動」は大きく分けて3ステップに分かれるという。
1・信頼関係構築
2・お金を頂くための会話
3・アフターケア
ちなみにテキストはとんでもなく長い。2万5000字くらいある。全てに触れていくとキリがないので、概要を説明していこうと思う。
1・信頼関係構築
ここでは、相手との信頼関係を築くための会話スクリプトと、どんな相手を狙ったらいいか、が書かれている。
かいつまんで書くと……
相手(りりちゃんは「おぢ」と呼んでいる)のことを知ったうえで、相手に「自分と話すと楽しい」と思わせることが大切。相手の喜ぶ会話を心掛けたほうがいい。
そして、狙う相手は「エロ目的を表に出してこなくて、かつ友達が少ないおぢ」がいいとのこと。
また、「毎日ラインをすることが大切」とも書かれている。これは後々詐欺をする際に重要な布石になるようなので、詳しくは後述する。
日常会話を続けていく中で、返信速度が上がってきたら相手を褒めることが重要らしい。
「相手のことが好きだというスタンスで会話することがポイント」とも書かれている。「付き合っていることが前提の会話をすることで、誰かの特別な存在になったことのないようなおぢはすごく喜んでくれる」とのこと。
2・お金を頂くための会話
信頼関係が構築できたら、狂言を使って金を引き出すフェーズに入る。ここで毎日ラインをしていることが大切になってくるらしい。
毎日ラインをしていた相手から急に返信がなくなることで、トラブルを匂わせる。そして数日経ってから「家賃を滞納している」「借金取りに追われている」などの嘘をつき、おぢに「僕がなんとかするよ」と言わせるのが基本の流れのようだ。
家賃を滞納している場合は、「何月何日から滞納している」「滞納した理由」など、狂言の設定を詳しく練ることの重要性や、いきなり全ての設定を出すのは下策で、情報を小出しにすることで相手の理解を深めることが大切だという、詐欺を行ううえでの下準備が書かれている。
ここはかなり読んでいて面白い。また、ラインを送る時間も「仕事中ではなく相手が家にいる時間を狙う」と書かれており、よく考えられていることが分かる。
「金に困っている」ということは伝えつつも、「金を出してくれ」とは言わないことがポイントのようだ。
「おぢだから相談した」「金目当てではない」ということを会話で伝え(例文も載っている)たうえで、おぢの方から「僕がなんとかするよ」と言うように誘導していくことが大切だと書かれている。
また、「お金を出すよ」と言われた際も、必ず1度は断ることが大切だとも書かれている。
「そんなおぢに迷惑かけるぐらいなら、自分で闇金申し込むから。」
などと、根本的な解決にならない案を出して、相手に助け舟を出させたほうが成功率が高いらしい。
また、1度に引っ張る額の目安については「欲張りすぎると成功率が下がる」という趣旨のことが書かれていたり、「金を出す」以外の代案(弁護士に相談するとか)を突っぱねる理由をあらかじめ用意しておく…ということも書かれていた。
3・アフターケア
アフターケアは大事らしい。アフターケアをしないとトラブルにつながるうえ、ちゃんとアフターケアをすることで、次の頂きに繋げることもできると書かれている。トラブルって通報のことだろ。
・相手のおかげでどう助かったか
・何にいくら使ったのか
・これからどうするつもりなのか
・相手の助け舟がなければ、どうなっていたか
・将来を予感させるようなこと
を伝えることで、相手の満足感を持続させるらしい。
このあとは、最初に戻って頃合いで「おぢに嫌われたくなくて言ってなかったんだけど……」と言って、また狂言で金を引っ張り、相手がパンクしたらフェードアウトというのが一連の流れのようだ。
そしてこのあとは、「おぢを捕まえやすい場所」や「相手が自分に本気になっているか(ガチ恋)」を見極める方法や、金を持っていかれて病んでいるおぢをケアする方法などに続く。
金を引っ張りやすいおぢの特徴は
①寂しがりや、孤独を感じている
②特に趣味もなく生きる意味を見いだせていない
③人に頼られたことがない
④女がらみが少なく恋愛をあまりしたことがない
⑤借金経験があり金銭管理が得意ではない
の5つらしい。
これを見極めるために、「何の仕事をしているのか」「恋愛経験は多いか」「友達が多いか」を日常会話の中で探っていこうと書かれている。
逆に、
・体目当てな人
・金を払う払うといって払わない人
・生活が充実している人
・自己中な人
は、「くそおぢ」と言って関わらないことが推奨されている。
その辺の注意点が続いて、マニュアルは終わる。
読んでいて最も印象に残ったのは、りりちゃんはおぢを馬鹿にしていない、ということだ。(少なくとも文章の上では)
金を引っ張る前段階でコミュニケーションを取って相手の人となりを知ることや、相手を引き付けるために毎日LINEをすることなどを強調しており、単に「モテないおっさんにタカれば楽勝楽勝」というノリの文章ではなかった。多くの場合、自分がコントロールしている相手や、見下している相手のことを書く際はどうしても人を舐める気持ちが出し、文章にも出てしまうものだが、このマニュアルに限っていえばそれはなかった。
「嘘をついて金を引っ張る」というのは普通の神経ではできない行為だと思うが、それに真剣に向き合っていたと思う(それがいいことか悪いことかというのは別にして…)。
当時は詐欺幇助で捕まらないようにリーガルチェックをしていたから穏健な書き方をしていたのかと思ったが、その後の振る舞いを見て違うなと思った。
詐欺の解説本はいろいろなところから出ているが、心理学の用語などが使われていて読むのは割と疲れる。しかし、このマニュアルでは理解しやすい言葉で「どうしたら嘘をついて金を引っ張れるか」が書かれている。
たとえば、金がないという話をして、おじさんが疑心暗鬼になっている際は「本当はこんな話じゃなくてもっと楽しい話がしたいよ」という形で切り返せ……と書かれている。
その理由は
「こう切り返すと『お金のために付き合っているのではなく、おじさんが好きだから付き合っている』と思わせることで、不安を解消させることができるからだ」と説明されている。
逮捕された今でもりりちゃんが若い女性から支持を集めているのは、必ずしも言葉を扱うのが得意でない人たちに寄り添ってこのマニュアルを書いたからだと思う(意図してそうしたのか、ナチュラルでそうなったのかは知らない)。
「欲しいものやホストのためであれば、嘘をついて金を引っ張ってもいい」という考えには共感できない。しかしそう考える人にとって、同じ目線まで降りたうえで詐欺の指南をしてくれたりりちゃんが神のように扱われるのは理解できる。
りりちゃんが支持される理由には、このマニュアルが「詐欺の指南書」としては良心的だということもいえる。これを欲しがる層は誰かの食い物にされることも多いだろうが、りりちゃんはこのnoteを売る以外では特に集金をしていなかった(と思う。すべてを見ているわけではないので実際にはわからない)。
これは購入後に追加でタカられる情報商材などとは明確に違う。マニュアルさえ購入すればそこにすべてが載っていて、本人は逃げも隠れもせず(薬でフラフラになっていることはあったが)聞けば質問にも答えてくれるし、自分も現在進行形で頂き女子を続けている。情報商材としては、相当に良心的な部類だと思う。まあ、それでもやっていることは詐欺の幇助なので許されることではないのだが、同じ境遇の女性から支持される理由はわかる。
で……頂き女子がターゲットにしてきたのは、「孤独で生きる意味を見出せない、モテないおじさん」である。
俺もモテないほうだし陰キャだからわかるが、モテない人というのは人と向き合うことに慣れていない。それだけに、自分を理解されようとすると惹きつけられてしまう。
向き合ってくれたのが詐欺師だったというのはとても皮肉なことだが、頂き女子の被害に遭われた方が希望を捨てないで生きてくれることを祈るばかりである。
以上。またね
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