🔎小説人圢論『春秋山荘遺文』      䞭川倚理の創䜜十幎 第二章『小鳥たち』①

倜をこめお飛び続けた䌝什たちは、冷え冷えずした朝に、空音をたお、それぞれの目的地に降りたった。
なんだっおこんな時間に——。誰もがそう思ったが、それだけ緊急の甚件なのだろう ず、自分に蚀い聞かせお鳥たちを迎え入れた。老倧公劃の 我䟭、単なる気たぐれではないのかずいう懞念が頭をちら぀いたが、口に出すものはいない。すべおを飲み蟌んだふりをしお、忙しそうに廊䞋を走る者たちの足音が姊しい。そうしお小鳥たちの物語がはじたる。

召集状がずどいたのは、北端の萜石おちいし無線電信局ずその偎の萜石岬灯台。いわきは、䞇本桜回廊矎術通のツリヌハりス。蛭谷、君ヶ畑ずいう東西朚地垫の棟梁のすむ谷ず惟喬芪王隠棲の堎所を抱える最叀の茶畑をも぀政所の、巚倧枝垂れ桜。南端は玄界灘の孀島にボヌダヌの塗装をされた飛翔灯台、その付属鳥類医療院。䌝什が着いたのはそれぞれほが同時の時刻だった。叞什機胜のある萜石岬灯台では、すぐに評定がはじたり なかなか結論のでないたた、さざめきだけが郚屋から挏れ聞こえるはめになった。
「芋苊しい」灯台守は軜く舌打ちをした。
「鉄塔は機胜しおいたせんよ。ずおも南端の飛翔灯台たで指瀺電波はずどきたせん。たしお、鳥たちを誘導する電波の維持は 難しいかず。たた圷埚っおしたいたす。せっかく圌女たち萜ち着いお避難の日々を暮らしおいるのですから 今回くらいは招集に応じなくずも  
「ずおも、ずか、たしお、ずか煩いこずだ。䜕ゆえできないこずを前提にするのか——。」
実際に鳥たちず移動し前線を預かる者たちの心情は痛いほど分かる、だが灯台守はあえおこずを進めようずしおいる。元々——片腕に火をかけお野犬たちを脅し、灯台燈喪倱の危機に鳥たちを守っおくれた灯台守の蚀うこずに誰も䟝存はない。最終、什にはしたがっお飛翔するだろう。しかし小鳥たちの身の回りの䞖話をする庭垫の蚀い分にかなりの理があり、なかなか方針はきたらない。抵抗は本栌的になったころ 
「恩矩は返さねばならぬ、しかしできるだけ被害は少ないほうが良い。いた、ここでの考えが党䜓を決める。できるだけ小鳥たちに被害を少なく 最良の方法で送り出したい 」
庭垫が念をおす。灯台守のためにも 招集に応じるこずに吊はない。もずもず飛ぶのは決めおいた鳥たち。こくりずうなづく。萜石よりも過酷な条件のずころもある。どこの地域の鳥たちも安党に移動したいではないか。それがただみんなの願い。

「コむルを捲きたすか——。テスラヌ型に改造すればなんずか䜿えるかず 時折に匷い長波を送るこずはできたす。」庭垫が今床は技術担圓の顔で応じた。
「しかし今どき55メヌトルの鉄塔二基では、いかんずもしがたいな。たたたたお前たちに無理を匷いるこずになる 」
鳥は超短波で信号を送り合い、それを頌みに移動を続ける 
「最近、電波を倉換する倉圧噚のようなものが小型になりたした。通信筒に入れられたすので、長波でも短波でも超短波でもどうにかなりたす。」
そうか長波をリヌドに䜿うか 。ずころで刻限は
倏の終わりず聞きたした。
初倏にはここに銅版画家が䜜品を䜜りに来る。しかも生埒を぀れお。茶宀が内郚に組たれお人もくる。その前に飛びはじめないず。間に合うかな 準備が。
開かない幕はありたせん。間に合うものです。間に合わせおみせたすよ。
小賢しいいいぷりだな たぁ頌りにするこずにしよう。分かった、あずはたかせる。
集合堎所は政所の廃棄茶工堎の屋根裏郚屋。集合終わったらそこから車で山科に向う。䜕かあったらその郜床の凊理。しかたがない。緊急ずいうこずなのだから 。では、デッカヌ車を甚意しおおくように。
デッカヌ車ですか二階建おっおこずですよね。庭垫が急にため口になった。
軜トラじゃ駄目でしょうか。
改造しお二階建にするなら劥協しよう。ほんずうは叀いドむツ軍のゞヌプを改造したいんだがな  たぁよい。鳥たちは、人の䞀぀䞊の階に居䜏する。だから二階建おの車、倜行寝台車二段ベッドの䞊 その屋根裏。

その頃、いわき垂の廻籠矎術通では、欅のティヌツリヌの屋䞊 。倖から芋えないように蚭えた隠し郚屋でも評定䌚議になっお いや、いない 。ここはのどかな空気に包たれおいる。いわきでは、鳥の専門家でないSが、委蚗を受けお小鳥たちの䞖話を匕き受けおいる。ここに評定䌚議はない。すべおそこに居る者たちの自由意思だ。鳥たち 頬が薔薇色に染たっおいる 昚倜は、䞇本桜の花芋に5幎ぶりに蚪れたKずずもに鳥たちも倜を培しおおしゃべり遊んだ その朝のこずだから 。いくぶんか薔薇のワむンもたわっおいる。原発事故を契機に宇宙からも芋える桜の森を䜜る——。山の向こうの原発事故を氞䞖䌝える。はそう決めお桜10䞇本を怍林するこずを決めた。䞀本ず぀に別々の持ち䞻がいる。日本育ちの䞭囜人䜜家SAIがすぐに協力を衚明した。原発事故の起きたあず、誰も海倖からアヌチストの来なかった時期に。山䞀぀向こうは30キロ圏内だ。桜を10䞇本。広倧な蚈画。いやしかし、蚈画ではなくもう䜕十分の䞀かの桜は怍え終わっおいる。掻動はすべおはボランティアで行う。Kはさらにずいぶん昔、SAIのいわき矎術通での展瀺準備に呌ばれお浜蟺に打ち䞊げられた廃持船を掘り起こす手䌝をした。回廊矎術通にに匵られおいる圓時の展芧䌚のポスタヌに、若き日のSずずもに同じく若き日のKの姿を今でも芋るこずができる。最も病んでいる鳥たちをKはここに連れおきおに蚗した。鳥たちは自由に元気にしおいる。
「いいじゃないの。奜きにすれば 。䜙り倧切に拘ったらだめだよ。鳥は究極わがたたで自由なもの  。それを人間がコントロヌルしようなんおおこがたしいっぺさ。」
「じゃぁ出立は」
「奜きにしたらいいよっお、もう䌝えおあるから、奜きなずきに飛んでいくっぺよ。」
かなり攟任されおいる小鳥たちは逞しい。自分たちで身繕いをはじめた。矜を繕い身を繕い、ちゃきちゃきず荷物を纏めおいる。
「甚が終わったら戻っおくるんだよ。桜の朚もここにいるみんなも倧歓迎だっからね 怪我した仲間が居たら連れ来おいいから ね。」
小鳥たちは䜙り神劙にならないように頷いおいる。
あ、そうそうKにも連絡が来おる。ずは通信筒に入った灯台守からの手玙を手枡した。
「どうしおここに居るのを知っおいる。灯台守」
「たぁたぁ 。じゃあ枡したよ。」
 。

䞀方、飛翔灯台は玄界灘の離島にあっお颱颚で海が荒れれば船も朚の葉になり、飛翔灯台は灯䜓近くたで波頭が抌し寄せる。颱颚のずきには砕けおちる滝のような䞭に灯台はあっおそれがマニア達の被写䜓ずしおの垂涎の的である。しかし嵐にヘリコプタヌでも出さない限り、映像に残すこずはできない。たたたた今幎最初の颱颚が灯台を呑み蟌む可胜性が高く、鳥たちはそこから少し離れた療逊地病院に隔離されおいた。ちなみにここで「鳥ず電波」぀いお、療逊地病院の所長の研究を玹介するず 「近幎、電磁波の皮類も増え、鳥たちは混乱の極みだった。小鳥の䟍女たちは、緊急時に人の姿にや぀せるずはいえ、電波指瀺を倱えば遭難の危険にもあいかねない。鳥たちの防埡力はやや軟匱なこずもあり移動に関しおは慎重を芁する。実隓は、巚倧な挏斗が組み蟌たれ内偎には感熱玙が貌られ、小鳥たちは倖に出ようずするずきに、少々螠いお足で匕掻き傷を残す。傷の方向を集積するず鳥たちの電波特性が知れる。そのこずによっお電波に察しおの鳥たちの混乱床がどれほどDNAに反映されおいるのかをしるこずができる。研究の結果はかなり悲芳的であるず蚀える。」所長は、挏斗型の実隓装眮でのデヌタに自信をもっおいる颚であった。事実 鳥たちの被害は幎々、増えおいお、違法電波や異垞電波に方向を喪倱しお倱意墜萜した鳥たちの数は、鳥史以来最倧ずなった。わたりの数は枛っおきおいるのに 。わたりたちの野戊病院ずいえばここが䞀番倧芏暡で、治療の最新装備も調えおいる。䞀床、方向を倱ったわたりたちは、倱った自信を回埩できず、地元に居堎所をみ぀けお定着するものたちも倚い。街に溶け蟌んで定䜏するものが最も倚いのもこの地域だ。

無理やりにテスラヌ機胜をもたせた鉄塔から誘導甚の電波が攟出された。政所に焊点をも぀䞉角圢の集積、その線の奇跡。最終目暙は、山科春秋山荘。目的、老倧公劃の葬儀に参加するこず。安党を期しお、倜が耜たころに灯台守がおもむろにスむッチをいれる。加熱しおもう焌き切れる寞前たでパワヌを䞊げ続け、電波を解き攟った。灯台守は、か぀お通信斜蚭のあったずころを叀地図で遞りだし、枡る接戊を根気よく遞び出しおは匕いおいく。途切れればたた分岐に戻っおさがす。今は、民間でも衛星の情報を䜿うこずができる。デヌタず叀地図を照らし合わせながら、鳥たちのルヌトを確認しおいく。䜕もないずころに電波網は描けない。塔ずか氎道タンクのようなものでもいい。廃虚であっおも無線方䜍信号所のような通信斜蚭を付垯させおいれば、どうにかなる。あたりを぀けおは線を結んで、地図に赀線を匕く。䞉角が途切れたら終りだ。少しず぀慎重にルヌトをあたっおいく。灯台の通信斜蚭は機胜させず停止しおいるこずが倚い。飛んでいる小鳥たちには、随時指什が来る。鳥たちは倜の飛翔を嫌がるが、今回はそうも蚀っおいられない。昌間は盞圓に危険がずもなうので、倜を匷行する。移動自䜓が、本来は、垰属性だの埓順性などをもたない小鳥たちを鍛えるこずになる。地図を䞉角圢に結び領域を囲いながら政所たでいき、そこから車で山科春秋山荘をめざす。鈎鹿のあたりたで蟿り着けば、高圧送電塔があるので、それからはあっずいう間に぀ける 山科は昔から山を枡る電波の重芁ルヌトだった。しかし今は、猟垫たちの職堎でもあるので、そこからは地䞊を行く。

回廊矎術通でKの受取った庭垫からの䟝頌の䞀぀は政所からの小鳥たちの地䞊茞送だ。
「萜石の鳥たちですら姊しく手に負えないのに、あず、二ヶ所もあわせお連れお走るのは 正盎気が重い。だいたい俺でいいのか」
思わず愚痎もでる。
「たぁたぁそんなに気にするこずなかっぺ。なるようにしか、ならないから 」
は倧らかに埮笑んでいる。䞀緒に戻っおきたら、山葡萄の茶でも飲もうや、SAIさんも犏建からお茶持っおくるっぺよ。
「ああ、あの枝茶はおいしかったですね 。」
䟝頌の远䌞に曞かれおいたもう䞀぀の䟝頌は、「剱埌灯台に立ち寄り、もし誰か、䜕か居たら、政所に来るように声をかけるこず。しかしながらけっしお匷制はしないように。政所集合がかかったず。それだけを䌝えるこず。」
剱埌 。
思いがけない名前にKは 息を呑のむ 灯台守の声が頭に響いた。
「死んじゃ駄目だ。」
䞉浊半島にある剱埌灯台でKは二床呜を救われおいる。灯台守に。
䞀床目は、高校生最埌の倏。
Kは神奈川の公立高校に通っおいた。圓時は受隓校で有名な。文歊䞡道を掲げお、スポヌツず頭脳に長けた生埒を神奈川県党郚から集めおいた。孊区神奈川県。他にそんな公立高校は神奈川になかった。成瞟のたいしたこずのないKはぎりぎり卓球の鎌倉垂個人優勝のキャリアで入った。高校䞉幎間勉匷しろずは䞀蚀も蚀われず、それを良いこずに、絵に描いたような青春謳歌を愉しんでいた。北杜倫の小説にした旧制高校の雰囲気そのたただった。高校䞉幎の初倏、授業をさがっおは自転車で海に行き時間を浪費し、気が向けば友だちず雀荘に行き、映画の䞉番通で『りッド・ストック』を芋お気が狂い、倜は友人宅を転々ずしながら みんなずいっしょに 茪番で 飲み続けたり そんな孊園生掻ず送っおいた。Kは䞋戞でどんなに鍛えおも匷くならず、友人の䞭には二升酒をするような぀わものも居お これが矎少幎、頭も良くお、運動もできる 東倧に入れるのに商船倧孊に入っお、新歓コンパで先茩を朰すずいう前代未聞の事件を起こす そんな芪友Mが呑たなくお良いよ、介抱に面倒だから ず、呆れお蚀うほどに、酒は匱かった。それでも虚勢をはっお飲み続けおみなに迷惑をかけ続けおいた。早皲田倧孊挔劇郚志望のの家で倜ししたたかに泥酔しお匕っくり返っおいたずきに、の䞭孊時代の芪友がふらりずあらわれお もちろん高校生 Kのどこが気に入ったのか 「面癜い、借りおいくよ」ず背䞭に負ぶっお自転車で自宅に連れ垰った。 これは埌からに聞いた話で、Kが芚えおいるのは、朝、目を醒たしたずころから。どうも背䞭で吐いたりもしたらしい。朝Kは、知らない家にいるのを䞍思議にも思わず、䞀緒に朝食をしお 茅ヶ厎の海岞に連れだされた。二日酔いもあっお、Kはずっずだたったたたが海を芋おいるのに付き合っおいた。だいぶ、気分も良くなっおきたので、話しかけた。孊校はおれは倶楜郚だけやっおれば なんも蚀われないから 。授業にはじゃただっお むしろいないほうがいいみだいだな。ただでさえ䞉流校っお蚀われおいお、その教宀にできが悪いからいなくおいいっお、蚀われおる俺のこずは お前には分かんないだろうけど ず意倖に気さくに自分のこずを話しおいた それは皮肉でもいじけおいる颚でもなく、確かにKにずっおはあったこずのない人間だった。
お前、倶楜郚はなんかやっおんのず、聞かれお 野球ず卓球ず あず軟匏テニスが巧い。でも今は党郚やっおない。ゞャニスずゞミヘン知ったから どうしようもなくお 。
あ、そっちはず聞き返した。すらりず筋肉質の身䜓は、運動をしおいるに違いなかった。 
剣道。キャプテンやっおいおうちは党囜クラス。神奈川は倚分抜ける。
えっ凄いね。むンタヌハむ
囜䜓もね。でもこれだけっおのもね。
ず、片手で竹刀を振るそぶりをした。
クラスも倶楜郚も俺の腕が欲しいだけだから 。
 党囜クラスをさらりず蚀うのに、矚たしさを挂わせながら、それでもいろいろあるんだろうな ず、Kは蚀葉を継がなかった。
  。
あ、送っおくよ茅ヶ厎駅たで。孊校さがっちゃ駄目だよ。君は優等生だから 。
ず、明るく立ち䞊がったに。
いやぁ520人䞭475番だからね。䞭孊のずきからするず良く分かんないよ。でもね。嫌な奎にならないですむかもっお 高校に来お思った。成瞟の良いっお蚀うだけで、やっぱり嫌なや぀になるじゃん。成瞟悪いほうが友達できるし 自分にも正盎になれる 成瞟っおそんなに関係ないよ。でも䞀番ずかは面癜くお意味があるけどね。スポヌツだっお䞀番を争う戊いだからね。剣道で䞀番なれるかもなんでしょ。矚たしいよ。ほんずに。
お互いだよ。圌は別れ際䞀蚀そう蚀った。

次ににあったのは、やはりの家だった。培倜で卓を囲んで居お倧きな手が回っおきたずきに ちょうど 
「おい、K貞しおくれ。」
酔ったが、階段をだんだんず音を立おお登っおきた。䜕蚀っおんだよ。こんな真倜䞭に 。しかも 
「今、おっきな手が 来おんだよ 」
は委现構わず
「煩い、来るんだよ。」
矎少幎はにやにや笑っおいる。代わっおやるよずちゃっかりもうKに倉わっお牌を匕きはじめお、よしっず声を出した。
 だいぶ酔っおるな倧䞈倫か 家の倖に出るず、みるからに䞭叀のブルヌバヌドに゚ンゞンがかかっおいた。
え、これに乗るの
これずか蚀うな。いいから乗れ。だっお免蚱は
 んなものないよ 
あ、そう。
聞いお諊めた。危ないなず思ったが、この前の恩矩がある。酔ったのを介抱されただけだが、この頃は、そんなこずを倧事にしおいたものだ。助手垭に乗り蟌んだ。今日はKが玠面、は酩酊しおいる。
ほんずやばいな 。パトカヌに芋぀かっお終わるだろうず思ったら、そんなこずにはならず、猛スピヌドで、茅ヶ厎、江ノ島、由比ヶ浜 そしお湟岞を突っ走っお、葉山ぞのトンネルに入った。運転はうたいが、䜕せかなり呑んでいるし、間違いなく荒れおる。思わず聞いおしたった。
どうした


酒で停孊ずか 。自分のこずを思い起こしお聞いおみた。
酒じゃない。だらしないからちょっず扱いた。
あヌ 。道堎で
あたりたえだろ、裏でやるかよ。
じゃ、ちくられた
ああ、芪にね。退孊だ。
退孊 え、いきなりかよ。そりゃないじゃん。だっお倧䌚近かないか
どうでもいいんだろ。教垫は自分の身が第䞀。今なら揉み消せるずふんだんだろ。近いから切るんだよ。党囜に出おからだずこずが倧きくなる。
どうするの
どうにもできないだろ。退孊だぞ。
 。
ずこずん぀きあうこずにした。未来なんおどうでもいい。今思うず若いずそんな颚に思えるもんだ。しかし、この䞭叀のブルヌバヌド、やけにスピヌドが出る。チュヌンかなんかしおるのか
レヌサヌずかなったら
お前な 䞭途半端なこず蚀うなよ。簡単じゃないんだからそれも。
がちゃっず音を立おおカセットをほおりこんだ。湘南の海をブルヌスが流れる。そういうずカッコいいが、けっこうせっぱ詰たった状況だ。ずにかく危ない。
Nineteen お前の倏を焊がしたのは俺さ。西陜に溶けお汗ばむお前を愛したのは嘘じゃない. Thirty one 俺のナむフを奪ったのはお前。唇はわせ昇った午埌から魂さえ血を吹いた 。
マリヌズ・ララバむ。
嫌な予感のする倜だった。
䞉浊半島に入っお、誰も走っおいない道路をはさらに真剣に走り出した。アクセルをさらにふかす。カヌブにタむダが軋む。束田優䜜の声が颚に切れお、途切れ途切れに聞こえる。海を離れ内陞郚に入り、道は狭くなり、街路灯はなく そしお再び湟岞に出たずき——緑色の光の垯がブルヌバヌドをなぎった。吹っ飛ばされるかず思うほど力匷い、碧の光の垯だ。
あ、灯台。
そう剱埌灯台。神奈川で䞀番カッコいい奎。剣の先。いいだろ。鋭いけれどなぎ倒す力がある。䜕より奇麗だ。
剣道郚だからずいう冗談を挟めないほど、確かに剱埌の灯台はカッコよかった。光がどんどん近づいお来た。道が现くなっお 垰りどうすんだUタヌンできないぞ。オフロヌドかず思うほど、ブルヌバヌドは䞊䞋に揺れ あ、絶察、改造しおる ぐりぐりず畑を暪切っお、灯台を芋䞋ろせる厖の䞊たで䞀気にスピヌドを䞊げた。たさかあれをやるんじゃ 。厖ずか海ずか、ぎりぎりで止たる奎。どっちがぎりぎりか比べおの床胞比べ、湘南ではやんちゃなバむク乗りがよくやっおいた。
はブレヌキを螏んだが、だいぶ遅かった。あずから思うず、意思で遅く螏んだのだず思う。぀たり萜ちる぀もりだったのだ。は ここからはKの蚘憶ではスロモヌションになっおいる 厖から跳びだした車の助手垭のドアを開け、Kを䜓圓たりで攟り出した じゃあな ずいう声を聞いたような蚘憶もある ブルヌバヌドは萱の矀生しおいる厖をバりンドしながら滑り萜ち、途䞭の岩に圓たり、ごろんず䞀回転しお、さらに滑り萜ちお行った。 車は片ドアを開けたたた、灯台脇のさらに倧きな岩に激突しお、もう䞀床、もんどりうっお海に嵌たった。
Kはずいうず、攟り出されお、はじめはごろごろず、そしお終にはザヌッず滑りながら、車の埌を厖から転萜しお堕ちおいった。厖の䞋のコンクリヌトの平堎で、蟛うじお止たったKの目の先で、ブルヌバヌドはヘッドラむトをこちらに向けお沈んでいった。人圱は ゆっくりず氎面からヘッドラむトが沈んでいき 運転垭ではこちらを芋おいたんだろうか その氎面を2分眮きに碧ず癜色の倪い灯台の光りが舐めおいた。助けなきゃ 氎泳が苊手なKだが ふらっず海に飛び蟌もうずした、その瞬間に 孊生服の襟を埌ろから思いっきり摑たれお匕き倒された。䜕が起きたのか分からなかった。
「死ぬな。死んで解決するこずはなにもない」
事情も分からず、蚀う蚀葉だろうかず埌になっお思ったが、そこでぞなぞなず、文字通り、腰が抜けた。䜙りのこずに涙もでない。ブルヌバヌドは最期の息をするように沈み、ヘッドラむトが消えた。
「誰か助けを 
「無理だ。劔先岬はここらでもっずも荒れた海の突端。だから遭難しないように灯台があるんだ。そしお分かりやすい匷い光をだしおいるんだ。事故車を匕き䞊げるこずも難しい堎所なんだ」
Kはずるずるず匕きずられおいった。か぀おが 酔ったKにしたように。
「死にたかったんだろう。ほっずいおやれ。ここなら助けがこない。海を知っおいるや぀だ。持垫の息子かや぀は」
の家族のこずをたったく知らなかった。そうかもしれないず。思った。なんで人のこずに螏み蟌むんだこい぀は、芋䞊げたの目には巚人がいた。映画で芋たゎヌレムのようだな 。
「お前は生きるんだ。」
泣きながら、そしお最埌は黙っお、垰宅した。新聞には蚘事は出おいなかった。に聞いおも最近こないなぁずしか答えなかった。自分で自分を消去したんだず 。

二回目は 。
倧孊を出お、2幎にわたっおマスコミの詊隓を、そう30ほどもおちお、やるこずがなくなり、の写真の匟子になった。そしおやめるこずになった。いきさ぀は、面癜いのだがそれは眮いおおいお ふずあれ以来決しお近づこうずも、思い出そうずもしなかった、劔先灯台に行っおみるこずにした。ずもかく傷心のずきは灯台に限る。ずりあえず 
車を䜿わないで行くずするず、京浜急行を䜿い、バスに乗る。その時は、最終バスで、降りお、畑の畊道のような道を進み 道はわからなくずも、灯台の光が芋えるので、迷うこずはない。道なき道を進んで、厖の䞊に立った。か぀お萜ちたあの堎所、あのずころに。最終バスで来たのでもずより朝たでいる぀もりだった。
ここは、嵐でもないのに倪平掋の颚が盎接に吹き䞊げるスポットで、颚が束になっお吹いおくる。しばらく坐っお眺めおいたが、ふず立ち䞊がるず、正面から突颚がKの身䜓をふっず持ち䞊げた。うしろから巚倧な手で叩いたかのように巻いた颚が返っおきお、Kを厖の䞊から攟り出した。Kは湿った萱の䞊滑り萜ちた。䜕床も䞊䞋を入れ替え、したいには意識は倱っおいた。


枺々ず颚の音が錓膜の向こうで震え揺さぶられたような錯芚に意識をずりもどした。どこだ 薄めを開けたKの目に、灯台守Mのしかめっ面が飛び蟌んできた。どこかで芋た顔 。意識がぶるぶる震えお焊点があわない。
「たたお前なのか 」


8幎前ず同じ灯台守だった。そんなこずがあるのか 。
「䞀ヶ月、䞀床、点怜に来る俺に、どうしおお前は突き圓たるのだ。」


「そんなに死にたいのか」
「いや、そういう分けじゃ 脚を滑らせお、萜ちた。前のずきも死にたかった分けじゃない」
助けおもらったお瀌を蚀う前に蚀い蚳をした。若いな 。
「たぁいい。」
灯台の脇の小屋のようなずころを鍵をあけ、灯台守はKを぀れお入った。
「珈琲でいいか」
「あ、はい。」
灯台守は、キャンプで䜿うような道具で珈琲を淹れおくれた。しかも本栌のパヌコレヌタヌだ。暖かい珈琲が人の気持ちを䌝えおいる。
「どうするんだ。」
「写真の先生のずころ蟞めおきたんです。朝日ゞャヌナル読むようなや぀は写真家になれないぞ。俺は、6歳の時から取っおるが、ただただだ。どうやっお俺を越えるんだ。酔っお励たしおくれた、良い先生だ。あきらめろ、才胜ないからっお蚀っおくれるのは、本ずの愛情だ。この話の詳现ず顛末は、たたどこに残すこずもあるかもしれない。぀たりKは、自分の力に絶望したのだ。そしお悩むだけの才胜もない自分にうんざりしおいた。だから死にたいずいう蚳でもない。ほんずうに半ちくなんで どうにか自分を 。
Kの頌みに、灯台守は機械宀の奥の倉庫を開けわたしおくれた。掃陀をしたり窓を磚いたり、口ほどになく優しかった。䞀ヶ月ほどしお灯台守がたた蚪れ、Kは、匟子にしおくださいず頌み蟌んだ。
灯台守に匟子などあるかい。高所恐怖症で、船に酔いやすく、運動神経もない。酒も煙草も女もやらず、ばくちにも匱いっお 。ここは海の䞖界だぞ。圹立たずだな 。
それでも なんずか 。
しばらく目を芗き蟌んでいたが、
䞀幎ほど時間をやる。硝子を磚き、動物達の屍䜓を始末する。それから 。
瀕死の鳥も良く萜ちたすよね。
良く知っおるな それは奜きにしろ。面倒芋おもいいし だけど、最埌たで芋る自信がなかったら、匕導を枡しおやるんだな。そのほうが功埳ずいうもんだ。責任をも぀こずを芚えるんだな。自分にも他人にも。ここ、そしお今が——おたえの未来を決める。たぁ頑匵っおみるんだな。
それが灯台守Mだった。䞀ヶ月に䞀回、食料ず機械点怜のために蚪れる。灯台は無人ずいうこずになっおいるので、昌間は、時たた蚪れる人に気付かれないように、隠し郚屋に居るか厖の䞊たで䞊っお身を隠す。あるいは 。
倜になるず海を芋る。
それからKは、䜕日も、䜕日も 実は䜕幎も、そこで暮らした。食べ物は灯台守が定期的にずどけおくれた。
倜になるず灯台の燈䜓のずころで、背䞭に熱いほどの光を受けおこの身透過すれば ず 
そしお、Kは䜕矜も䜕矜もわたりを助け、黒い猫ずずもに灯台を䜏凊にしおいた。
剣厎灯台は、30秒毎に癜2閃光ず緑1閃光の光を廻す。光ず光の隙間にあるその僅かの空間に、挆黒の倜がある。明るい光の際は真っ暗だ。その闇をKは奜んだ。闇に光ず螊るダンサヌもいるが自分には関係ない。闇に光りなど射すものか。

剱埌の灯台を出たのは26歳のずきだった。友達が人を探しおいるから、手䌝っおやっおくれないかず灯台守に蚀われお、そういう時期亡き来たのだず思いながらも、「でも䜕もできないっすよ、俺」ず拗ねお芋せた。
たぁ行けばなんずかなる 。
そうしおKは灯台を出た。それから䜕十幎。その床ごずに仕事の圢から䜜らないずいけないこず、だれもやったこずのない仕事を転々ずしながら生きおきた。もうそんな新しい仕事がないず気付いたずきに、たた灯台守を蚪ねた。
「匟子にしおください」
「匟子じゃなかったのかお前は 。俺の」
灯台守が笑った。優しい顔だった。そんな顔は芋たこずがなかった。
「あんずき返事もらっおたせんよ。」
「そうか なら今しおやる。しかしこんな俺でいいのか。もうよがよがだぞ」
「䜕蚀っおすか。おれが埌を継ぎたす。」
Kは萜石灯台に荷物を移した。そしお今日。灯台守に掟遣された。剣厎灯台のこずは、䞀床も思い出したこずがなかった。䜙りに自分にずっお倧切で、か぀痛い蚘憶だから 。しかしながら仄苊い青春の蚘憶でもあった。その剱埌に立ち寄れず。
ずりあえず 京浜急行バスで近くたで行った。驚いた。灯台ブヌムずやらで敎備されおいお公園のようになっおいる。近づきがたかった。剣厎岬は、嵐でなくおも倪平掋の突颚が寄っおきお吹き䞊げる堎所で、厖の萱は育぀方向がたちたちになっおいる。今も 颚は匷そうだな。厖の䞊で倜になるのを埅った。あの時のポむントだ。海を芋぀めたブルヌバヌドは匕き䞊げられたのか今でも海の底に揺らめいおいるのか。灯台の鍵をこじ開けおいるずころを芋られたら倧倉だ。海を芋ながら暗くなるのを埅った。30秒に 癜2閃光、緑1閃光の光が薄暮の䞉浊半島を舐めはじめたずき、Kは、ゆっくりず立ち䞊がっお、泚意深く厖を降りおいく。空より暗い海が颚に癜くさざめいおいる。萜ちたら 今倜は灯台守はいない。今床こそ、ほんずにおじゃんだ。ふず、剣道郚の暪顔を思いだした。呌ぶなよ。昏い海に呟いた。————意倖にも鍵は昔のたたで 取っ手がKが付け替えたたたになっおいる。蛇の真鍮の圫り物が斜しおある。かちゃり 誰か䜿っおたな最近たで 。
それがもし翠の目をした子だったら、そのたたにしおおいおくれ。生たれおすぐに棄おられた奎だ。召集に応じる矩務はない。その他の子がもしいたら、政所経由で山荘に召集がかかったず 。
指瀺されたこずを思い出しお、気が重くなった。いたら どう䌝えればよいものか。たたずむ空気のから獣の匂いはしない。少し前から空き宀になっおいるようだ。思い切っお奥の郚屋の扉をあけた。䞍圚——。内に入っお、あたりを芋わたすず、コンクリの壁にいく぀もの匕掻き傷が跡になっお残っおいた。それは鳥類実隓宀の挏斗に残されおいる、鳥たちの匕掻き傷に良く䌌おいた。もしそうならば、ここにいたのは、巚倧な鳥ずいうこずになる。人間倧の 。傷は暎れお぀いたものではなく、自分の䜕かをチェックするような実隓的な、そしお慎重な態床が窺えた。䜕の傷。どうしお Kは跡からそれを぀けたものの姿を再生するこずができる胜力をもっおいる。䜜動率は30くらいだが、圹にはた぀。壁の傷に手を圓おお、頭を空にした。身䜓の匂い だが、この傷のこずは䜕も䌝わっおこない。星月倜が芋えた。剣厎灯台の空だ。倜には必ず光が走狗する。星だけの倜空がここにあるはずもない。どうしお芋れたのかこの空を 委现報告芁らずず灯台守は曞いおきた。Kの自由裁量ずいうこずだった。剱埌にくるたで、その䞀蚀が気を重くしおいたが 䜕もない 䜕でKをここに寄越したのか。芋おおけずいうこずなのか 自分の過去を いや、そうではないだろう。灯台守はリアリストだ。そしお、ここに居たのはいったい誰なのか、䜕なのか それでも任務完了しお、気が高揚たかたっおきお、Kは地図をだしお政所ぞ青の線を匕いた。行くよ。これから。みな、無事で 。いおくれ。

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