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構造的な賃金引き上げを実現するための医療・介護・障害報酬改定について     参議院予算委員会 動画&会議録             2023年11月28日@その2

<質疑要旨>
・ 今回の報酬改定においては、医療や介護などの現場で働く方々の賃金が確実に引き上げられるようにしていただきたい。
・医療や介護など福祉の現場で働く方々の賃金を確実に、かつ単発ではなく継続的に引き上げていくため、報酬改定の財源については「歳出の目安」に含まない、別枠とする新たな仕組みを導入すべきではないか。
・医療や介護などの現場における光熱費と食材費の高騰に対して重点支援交付金だけではなく、制度的な対応が必要ではないか。
・今年8月、人事院が地域手当の級地区分設定を広域化するなど大くくりな調整方法に見直すことを決定した。これを契機に、介護や子ども子育て支援における地域区分についても、同じ都道府県内で市町村格差がないような新たな仕組みを検討していただきたい。

答弁者 厚生労働大臣 財務大臣 内閣総理大臣

<会議録>
○山本香苗君
 次に、賃金引上げにつきましてお伺いしたいと思います。
 物価高に負けない構造的な賃金引上げを実現することは至上命題です。しかし、医療や介護、障害福祉、保育等、社会保障分野においては、国が定める公定価格で運営されていることから、価格転嫁ができません。また、現下の光熱水費や食材料費の高騰の影響によりまして、過去にないほど厳しい状況にございます。低賃金のため、介護にやりがいを感じつつも家族のために辞めざるを得ない、過酷な労働を使命感と責任感で何とか補ってきたが、もう限界、介護の現場にはこうした切実な声があふれております。
 身寄りのない高齢者が増える中で、ケアマネジャーは、通院同行や申請書類作成、入院時の必要物品の購入など、いろんなサポートを一手に担っておりますけれども、こうしたサポートは一切報酬になりません。
 医療現場においても、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士といったリハビリテーション専門職の給料は二十年間変化がない上、賃金が低く、人材の流出は十年間で七倍です。兵庫県のある大学では卒業生の半数以上が理学療法士としての勤務を辞めて、福井県では理学療法士から製造業など全く異なる異業種への人材流出が起きております。
 診療報酬による看護職員の処遇改善というのは全体の三分の二に当たる約百万人の看護職員が対象外でありまして、看護職員の人材流出も深刻です。歯科衛生士、歯科技工士、医療事務も不足をしております。
 こんな状況の中で、仮に財務省が言うように今回マイナス改定となったら、民間の給与水準に追い付くどころか、更に賃金格差が広がって、人材流出は加速して、医療や介護、福祉の現場、崩壊してしまいかねません。
 先般の政労使会議におきまして、総理は経済界に対して、来年の春闘に向け、今年を上回る水準の賃金引上げへの協力を要請されました。医療、福祉人材、今や全就業者の約一四%を占め、約九百万人に上ります。一大産業です。制度があっても、それを担う人がいなければ制度は成り立ちません。
 国が先頭に立って医療や介護など福祉現場で働く方々の賃金引上げを実現すべきと考えますが、厚生労働大臣、いかがでしょうか。

山本かなえの質問に答弁する 武見 敬三 厚生労働大臣

○国務大臣(武見敬三君) 委員御指摘のとおり、この公定価格に基づくこうした医療、介護、福祉の分野における賃金の引上げ、そしてまた物価対策というものは、これもう喫緊の課題であろうというふうに認識をしております。 御指摘のとおり、約九百万人がこの分野働いているわけでありますから、今回のこの賃上げ、処遇改善というものは、間違いなく来年のこの賃上げというものをしっかりと支えていく大きな役割も担っていくことはもう必至であって、そうしたことを確実に実現していくために、成長と分配の好循環実現する、まさにその役割を果たすということが重要であると考えます。 このために、医療・介護分野については、人材確保に向けた必要な財政措置を早急に講じることとして、補正予算案においても施策を盛り込んだところでありますけれども、令和六年度の同時改定において、さらに、この物価高騰、賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材の確保の必要性、患者、利用者負担、保険料負担への影響を踏まえまして、この患者、利用者が必要なサービスが受けられるよう、必要な対応を行ってまいりたいと思います。
○山本香苗君 財務大臣にもお伺いしたいと思いますが、財務大臣はリハビリテーションを考える議員連盟の会長でもいらっしゃるので現場のこともよく御存じだと思いますが、御答弁お願いいたします。

山本かなえの質問に答弁する 鈴木 俊一 財務大臣

○国務大臣(鈴木俊一君) 政府全体として賃上げを最重要課題とする中で、医療、介護等の分野、先生は先ほど理学療法士の方々の状況についても言及されましたが、そういう方々も含めまして、現場従事者の処遇改善、これは喫緊かつ重要な課題と私も認識をしているところであります。一方におきまして、国民が負担する保険料等が増加すれば現役世代の賃上げ効果を損なう面があることも留意をする必要があるんだと思います。 
 こうした観点から、二〇二四年度の報酬改定においては、国民負担を最大限抑制しつつ、現場の方々の処遇改善に構造的につながる仕組みの構築が重要であると思いまして、厚生労働省とともに検討を深めてまいりたいと考えております。
○山本香苗君 今、国民負担を極力抑える、そのために報酬というものを引き下げていく、一見すると良さそうに聞こえるんですけれども、それによって人が確保ができなくなって、そして医療や介護の必要なサービスが提供できなくなったら、もう元も子もないと思うんです。 
 先日、総理は衆議院の予算委員会で、社会保障費をどのように拡大していくのか、このことについて議論をし、そして必要なものにはしっかり用意をしていかなくてはならないと答弁をされました。
 私、おっしゃるとおりだと思います。でも、そのためには、社会保障関係費の伸びをこの高齢化の伸びに抑えるといういわゆる歳出の目安というやり方は見直すほかないと思うんです。もちろん、合理化、効率化が必要なところもありますが、歳出の目安というやり方は、このインフレ局面においては通用しないと思うんです。 
 財源もないわけではありません。消費税の増収分もございます。労働者全体の賃金が上がる中で保険料のこの増収ということも見込まれております。そうした中で、今喫緊の課題であると、一番必要な賃金の引上げのための報酬改定を抑え込むということはあってはならないと思います。既に、総理、年金の物価スライドと賃金スライド分については、この高齢化の伸びと別に国で予算を確保する仕組みもございます。 
 医療や介護など福祉の現場で働く方々の賃金を、このインフレ局面においても、単発ではなくて継続的に引き上げていくためのこの新たな仕組みが必要です。賃金引上げのためのこの報酬改定の財源については、この歳出の目安に含まない、別枠とする、こうした仕組みを導入しては、導入していただけないでしょうか。

山本かなえの質問に答弁する 岸田 文雄 内閣総理大臣

○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、医療・介護分野等におけるこの処遇改善、賃上げ、これは、産業全体の賃上げを目指していく、経済の好循環を目指していくというこの流れの中にあって、また、この人の確保、人手不足、こういった大きな社会課題が議論されている中にあって、この分野における賃上げも大変重要な課題であると認識をしています。
 そのために、まずは今御審議いただいている補正予算の中にあってもこうした分野で働く方々へのこの予算の確保を行ったところでありますし、加えて、御案内のとおり、令和六年度の同時改定に向けて、この処遇改善も含めてこの議論を深めていかなければならない、こういった状況にあります。
 是非、たちまち、この目の前の医療・介護分野の皆さんの賃上げという観点から、今のこの同時改定の議論等も、この議論を深めなければならないと思っております。
 そしてあわせて、社会保障費について別枠を考えたらどうかという御指摘でありますが、これについては、この目の前の令和六年度のこの予算編成における社会保障費については、これ、二〇二四年度までのこの社会保障関係費、これは、委員が御指摘のような従来のこの方針、実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びに収めるこの方針、すなわち必要な措置と財政規律との両立を図るという趣旨での方針、これ、たちまち目の前のこの予算についてはこの方針に基づいて両立を図っていくことを考えているところでありますが、これ、今後の少子高齢化、人口減少、こういった社会の変化を考える中で、必要な社会費をどう維持していくのか、これは全世代型社会保障改革の議論等において従来から大きな課題となってきたわけですが、この議論、大きなこの議論の中で考えていくことは必要だ、これを先日私も答弁の中で申し上げた次第であります。
 問題意識を共有しながら、まずは目の前の賃上げに向けて努力をしたいと思いますが、それから先のこの我が国のありよう、我が国の社会保障のありようという観点からあらゆるこの選択肢について議論を深めていく、こういった姿勢は政府としてもこれからも大事にしていきたいと考えています。
○山本香苗君 総理、確認でございますが、御丁寧に御答弁いただいたんですけれども、別枠とするということを御検討いただけるということでよろしいですね。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、目の前の予算編成に向けては、この財政と必要な措置との両立を図る基本方針、これを維持いたします。
 将来に向けて、様々な選択肢を我々としては考えていかなければなりません。別枠という御指摘もいただきました。御指摘も踏まえながら、未来に向けてこの議論を深めていきたいと思っております。
○山本香苗君 総理、暗に別枠のこともしっかり検討していただけるとおっしゃっていただいていると認識をしております。近々、公明党といたしましてもこの点につきまして緊急要望させていただきますので、またどうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。
 医療や介護現場における光熱水費や食材料費の高騰の影響というものも大変深刻でございます。地元大阪、堺の介護施設関係者の方から、来年四月以降、一食六十六円値上げをしなければ、質と量を下げるか撤退という選択を迫られているというような話も伺いました。
 光熱水費や食材料費の高騰は一時的なものにとどまりません。重点支援交付金だけではなくて制度的な対応を必要だと考えますが、武見厚生労働大臣、いかがでしょうか。大丈夫でしょうか。
○国務大臣(武見敬三君) 御指摘の医療機関の入院時の食費について、この基準が長年据え置かれて介護保険とも差が生じていることを踏まえまして、重点支援地方交付金の支援で、今回補正で対応しようということをしているわけでありますけれども、令和六年度におきましても、この地域医療介護総合確保基金による対応を念頭に、診療報酬の見直しと併せて予算編成過程において検討していくこととしております。この確保基金の場合には、実際に保険料には影響しないという枠組みでございます。
○山本香苗君 済みません、介護の方もお願いいたします。
○国務大臣(武見敬三君) 介護保険制度におけるこの地域区分の問題ですけれども、人件費の地域差を介護報酬に反映するために、公平性、客観性の観点から……(発言する者あり)これでよろしいですか。
○委員長(末松信介君) 質問の趣旨が。
○国務大臣(武見敬三君) 失礼しました。
 令和六年度の同時改定において、その御指摘の物価高騰を始め、賃金上昇、経営の上昇、患者負担、それから保険料負担への影響など踏まえて、患者、利用者が必要なサービスが受けられるよう必要な対応を行ってまいります。
 これでよろしゅうございますでしょうか。
○山本香苗君 しっかり、医療のみならず、介護、福祉の方におけます食材料費、光熱水費の対応を取っていただきたいと。なぜならば、報酬が上がっても、結局、そこが上がらなければ賃金に回せなくなってしまうわけです。そういうことがないようにしていただきたいということです。
 介護や子ども・子育て支援等、社会保障分野においては、国家公務員の地域手当の支給割合の地域区分を準用した地域ごとの加算率というのが設けられておりまして、同じ都道府県内で同じ定員で同じサービスを提供していても、所在する市町村ごとに報酬が異なります。
 例えば、大阪府内であっても、大和川を越えた途端に施設に入ってくる運営費が何百万円と違ってくると、そのために求人や人材採用に大きな影響が出ているという声が事業者の方々からたくさん寄せられております。最低賃金の水準は都道府県単位で決められているのに、なぜここだけ市町村単位なのかと。そもそも公務員の地域手当になぜ準拠しなければならないのかと、よく分かりませんと。
 今年八月ですね、人事院が地域手当の級地区分設定を広域化するなど大くくりな調整方法に見直す方針を決定をいたしました。是非、これを機会に、介護や子ども・子育て支援等における地域区分も抜本的に見直しをしていただきたい、同じ都道府県内で市町村格差がないようにしていただきたいと思いますが、総理、いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 御指摘のように、介護保険制度等における地域区分は、人件費の地域差を介護保険等に反映するため、公平性、客観性の観点から民間の賃金水準を反映して設定した公務員の地域手当の区分に準拠する、これを原則として設定されているものですが、この地域区分の見直しに当たって、今後、公務員の地域手当の見直しが行われる、その見直しの内容、これを踏まえた上で、関係者の意見も伺いながら、介護それから子ども・子育て支援、これらについても在り方、検討してまいりたいと思います。
○山本香苗君 是非よろしくお願い申し上げたいと思います。


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