舞台作りの裏話(3)~脚本~

(3)セットアップ

いよいよ脚本の執筆に入りますが、大事なのはセットアップ。物語の立ち上がり部分です。大事なことは物語の序盤でお客さんの心を掴めるかどうかなので、ここが破綻すると脚本は全て破綻するといっても過言ではないかと思います。今回の人魚姫の場合、シーン2にあたる部分を最初に書きました。<人魚姫が魔女の手下から人間のサンプルを見せてもらう>というくだりになります。いくら人魚姫が人間になりたいと言っても、たとえばそれがオジサンの姿だったら嫌だろうなと思ったので、「この姿(オジサン)なら人間になれますけど、どうします?」っていうのが、最初に考えたギャグでした。

こうしたギャグはアテガキ(出演キャストに合わせた執筆)による力が大きいです。僕にとって魅力的な役者というのは、「この役者でこういう笑いを取りたい」と思わせてくれる役者であり、そういう人がいるということは、とても幸せなことです。

(4)初稿、2稿、3稿へ……そして完成稿へ

以降、脚本は様々な検証を経て、加筆修正をしながら進んでいきます。「全キャストに見せ場を!」と思いながら脚本を進めていきますが、今回に関して言えば、キャストへ忖度しすぎたことはとても反省しています。物語ありきではなく、役者ありきで脚本を書くことを優先してしまったため、物語が破綻して、何度も大きな修正をすることになりました。現場では台本の修正や変更などは当たり前にありますが、稽古数を考えれば、もう少しなんとかしたかったなと。何百回も脚本を書いてきても、こういう失敗を繰り返すのですから、本当に難しいなと思います。




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