舞台作りの裏話(2)~脚本~

朗読パンダという団体のお話です。脚本作りの工程は、主に以下の流れで進みます。これは映画やドラマなどでも大差はないかもしれません。※なお、朗読パンダでは2人体制で脚本を担当しているので、下記はあくまで自分の場合です。

1 ログラインの決定

100字程度で語れる「どんなお話か」という問いに応える部分です。作品作りにおいては、これが一番重要な箇所で、自分は最も慎重に進めます。たとえば今回、僕はアンデルセンの「人魚姫」をやりたいと最初に思いましたが、自分がやりたいと思ったことと、周りが求めていることが一致するとは限りません。「自分がやりたいと思うことをやりたいようにやればいいんだ」というのもアーティストの姿勢としては立派だと思いますが、個人的にそれが向いていないことを周知しています。脚本の教本などにも、ログラインに関しては徹底して確認をすべきだと書いてあります。(自分は意外にも真面目に、教科書通りのタイプだったりします)確認とはすなわち「次、〇〇みたいな話をやりたいと思うんだけど、どう思う?」という身近な人への確認(リサーチ)です。そこで「面白そう」と答えるのか、「新しい」と答えるのか、「ありきたり」と答えるのか、「よくわからない」と答えるのか確認ができます。人が「面白そう」と思えないログラインにはなんの魅力もないですし、ここでの手応えが作品全体への手応えへと直結します。ハリウッド映画などでは、まったく新しいシリーズやオリジナルを作る場合、ログラインの選定に一年間かけることもあるそうです。今回の舞台で言うと、「よし、次は人魚姫をやろう」と正式に決めるまでに、3-4か月はかかりました。

2 プロットの作成

ログラインが決まったら、次はプロットの作成です。文字数で言えば、1000字~2000字くらいでしょうか。自分は普段、ドラマや映画などでは10000~20000字くらいのプロットもよく書きます。誰が出て来て、どんなことが起こり、誰がどんな葛藤をするのかを考えていきます。キャラクターに関しては、役割(味方なのか、敵なのかなど)を明確にしつつ考えます。完成したプロットは、ログライン同様、他人に読んでもらい、よく検証します。自分は過去に映画企画で、プロット15稿なども書いたこともありますが、プロットも本来は何度も検証を重ねることが大切です(プロットも15回くらい書き直すと、1稿の原型を留めていることはありません)映画やドラマなどは動く予算も大きいので、プロットで企画自体が決まることも多々あります。ちなみに今回の「人魚姫」に関して言えば、いつもよりプロット検証が甘かったことを大いに反省しています。比較的すぐに脚本に取り掛かってしまい、そのせいで後で苦しむことになってしまいました。映画やドラマの現場では「このプロットの出来では脚本に進んじゃダメだよ」と止めてくれる役割の人がいます。主にプロデューサーがそれにあたります。朗読パンダの場合は、プロデューサーが自分なので、自分がGOだと思えばGOになってしまうのです。そのため、もう少し身近な人を利用して「このプロットで進めていいかな?」と確認するべきでした。

なお、いわゆる小劇場演劇などでは、上記のようなログラインやプロット検証はしないことが多いと思います。次に書く、3の「脚本」から、よーいドンで始める作演出も多いでしょう。しかし、その結果つまらない作品ばかりが表に出ることになってしまいますし、自分はそれを避けたいので、やはり「検証」を大切にしています。つまらないものを作ってしまうことはあるにせよ、面白い作品を作る率を上げたいからです。そして「検証」には複数の目が必要です。独善的に、自己満足にならないために、複数の目というフィルターを通して作品を作るのです。(それでも世に出たとき、「つまらない」とバッサリ斬られる仕事ではありますが)

3「脚本」に続く




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