鷗外さんの「小倉日記」㉕焼き鮎
(八月)
十八日。夜雨曉に至りて歇(や)む。樒を賣る兒童花柴々々と叫びて街を走れり。今日は陰暦の七月十三日にして、盂蘭盆會に當れば、人家買ひて佛に供するなるべし。 朝餐畢れは又雨ふる。雨を冒して登衙す。
午時又歇む。米原氏雅女炙香魚一籠を送り、賀古鶴所葉巻烟草二筐を寄す。米原氏の書に云ふ十七日郷を出で、東京に赴くべしと。 次いで山路の書至る。云ふ、米原氏は女靜と共に我千朶山房に寄寓せんと欲し、米原氏の夫綱善も将に訴訟の事ありて東京に往かんとすと。晩又雨ふる。 夜阪田警軒の訃に