見出し画像

【読書感想文】夢の中の都市、覚めても離れない記憶『新版ラブクラフト短編集4 Kindle版』

本書収録作より、夢と現実の境界が曖昧になる独特の世界を描いた『ポラリス』を紹介。

本作は、北極星の下、沼沢地に囲まれた孤独な家に住んでいる主人公が見た一連の夢に焦点を当てています。彼は石造りの古代都市オラトーエを夢見、その夢の中で、彼は都市の住人と交流し、彼らの一員となります。しかし、彼の夢は次第に現実との境界を失い、彼は自分が夢の中の存在なのか、現実の存在なのかを見失っていきます。

この作品は、夢と現実の区別がつかなくなる恐怖を巧みに描いています。主人公は、夢の中でロマールの国を守るために戦う任務を負っていますが、北極星の邪悪な影響により、その任務を果たせずに絶望します。彼は夢の中で敵に故郷を売り渡し、友を裏切ったと自責の念に駆られますが、夢の生物たちは彼を嘲笑い、ロマールの国など存在しないと言います。

ラブクラフトは、主人公の内面の葛藤と、彼が感じる孤独と絶望を、鮮やかに描き出しています。北極星は、彼の運命をコントロールする邪悪な力のシンボルです。この作品は、夢と現実の境界線に立つ人間の脆弱性と、内面の闘いを描いた、ラブクラフトの傑作と言えるでしょう。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?