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【読書感想文】南京の夜、純粋な心が見たキリストの姿『南京の基督』

中国南京を舞台にした短編小説で、梅毒に侵されながらも純粋な信仰を持つ少女娼婦・金花の物語を描いています。物語は、金花が客を取るのを止めた理由と、彼女の信仰に基づく生き方の選択から始まります。キリスト似の外国人との出会いは、金花にとって救済の手が差し伸べられたかのような出来事であり、彼女の信仰心をさらに強固なものにします。しかし、この出会いはまた、金花の内面に潜む欲望と愛情の葛藤を浮き彫りにするものでもあります。

日本人旅行家との対話は、金花の選択が周囲からどのように受け止められているかを示す鏡のような役割を果たします。旅行家の視点から見た金花は、同情と好奇心の対象であり、彼の質問は金花の内面をさらに明らかにするきっかけとなります。

芥川の筆致は、金花の純粋さと彼女が直面する厳しい現実との間のギャップを巧みに描き出しています。また、芥川は、金花の物語を通じて、当時の社会の矛盾や人間の本質に対する鋭い洞察を示しています。

『南京の基督』は、芥川龍之介の作品群の中でも特に心に残る作品であり、人間の複雑な心理を描く彼の能力を如実に示しています。この短編小説は、深い印象を残し、長く思索を促すものです。芥川の文学的才能と深い人間理解が光る、読む価値のある作品であると言えるでしょう。

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