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【読書感想文】死と向き合う旅から見える、生の輝き『銀河鉄道の夜』

⚠️ ネタバレありです。未読の方はご注意ください⚠️

宮沢賢治の代表作として真っ先に上がるであろう一冊。主人公の少年ジョバンニが銀河鉄道に乗り込み、天の川を横断する奇想天外な冒険の物語です。本作は、賢治独特の幻想的な世界観や宝石のように煌びやかな言葉の数々が目を引きますが、その美しい表現の裏には、人間の孤独や友情、宇宙の神秘といった深いテーマが隠されています。

病気がちな母親と2人慎ましく暮らすジョバンニ。彼は学校で孤立しており、クラスメイトたちにからかわれる毎日を送っています。そんなジョバンニにとって、カムパネルラは唯一の理解者ともいえる存在です。ジョバンニは、カムパネルラとの関係に心の支えを見出していたのでした。ある夜、ジョバンニは銀河鉄道の切符を手に入れ、カムパネルラと共に星々の間を旅することになります。この鉄道には、二人の他にも多くの不思議な乗客がおり、彼らは天上へと向かう死者たちであることがほのめかされています。

ジョバンニたちと天の川の旅を共にする乗客たちですが、彼らはそれぞれに人生の物語を持ち、ジョバンニに「本当の幸せ」とは何かを考えさせます。私は特に、途中駅で出会った姉弟が語る、死に間際に後悔する蠍の話が、ずっと心に残るエピソードになりました。

一方で、本作は人生の別離と悲しみと言う現実も突き付けます。終盤、行方不明となったカムパネルラ。ジョバンニはカムパネルラを探し続けますが、最終的には友人が天国へと旅立ったことを受け入れなければならないのです。悲しみを受け入れ自分自身と向き合って1まわり成長したジョバンニの姿を通じて、私は、人間の孤独とは何か・本当の幸せとは何かを、自分なりに見いだせた気がしました。

宮沢賢治の代表作として、今もなお多くの人々に愛され続けている本作。その理由は、賢治独自の詩的な表現に加え、この物語が持つ普遍的なテーマにあるのかもしれませんね。読むたびに新たな発見があり、心に残る作品です。

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