身の上話

大した話ではないのですが、私、実は借金が８００万円近くあるんですよね。

び、びっくり〜〜〜！

改めて文字にするとびっくりしちゃいますね。
でも大した話じゃないです。
借金と言い換えてますが、ただの奨学金です。
とはいえ、返還が必要な奨学金なんて、借金とほぼ同義です。返還が滞ると信用に傷がちゃんとつきます。毎月27日はビクビクしてます。

時は遡りまして、かつて高校生だった私は思いました。
「大学でもっと演劇を勉強したい！！できたら毎日演劇だけやっていたい！！
だから、演劇が仕事になるように大学行って勉強するんだ！！」と。
目的は演劇だけやっていたい、だったので、受験に落ちたらどっか劇団でも入ってみよっかな〜（無知）とかそんなノリで演劇の道を志していました。
演劇を実践的に学べる大学なんて、日本には数少ないし、当然ながら実習費含めて学費がとても高い。
家には大学に通えるだけのお金もない、だけど奨学金とやらを借りれば大学に行けるらしい。
演劇を学んで、演劇で稼いだ金で奨学金を返せるのか……？と疑問に思いつつも、当時の私はまだアルバイト経験もなく、金銭感覚もぽやぽやで、とにかく受験しよう！！の気持ちで大学に進学したわけです。

学費は半年で75万円。
加えて、片道２時間半の遠い大学へ通うための交通費や、実習で朝9時〜夜9時まで大学にいるためコンビニ飯代。あと舞台も観たいし、教材とかも高めだし、それらをまとめると奨学金を満額で、第一種・第二種ともに借りざるを得ませんでした。
毎月13〜15万円口座に振り込まれて、支払いの時には自分で銀行へ行き、学費を入金する。時にはお金がギリギリで、夏休みにはバイトで10万稼いでそれをほぼ全部学費に充てたりしたこともありました。
もちろん、学費に苦しめられたりしながらも、学外へ飛び出して演劇制作を勉強させてもらったり、実際に制作現場も持って同時に3〜4公演抱え込んだりして、そのおかげで今があるのですがそれはさておき。

演劇をやりながら大学へ通うのは大変で、小屋入りするたび単位が追い詰められるし、お金もないからセルフブラック労働状態。800万円の借金作って大学行ってんのに、眠くてたまらないからほとんどの授業を寝て過ごしました。
その結果、大学を卒業する頃にはだいぶ疲れ果ててしまいました。
いつだったか授業で教授に「演劇を嫌いにならないでくださいね」と言われたことが、今でも記憶に残っています。
そんなことを言われてしまうくらい、演劇に対して私はあまり前向きに取り組めなくなっていました。
そしていざ就職の時期が来て、私が選んだのはアパレル企業でした。

お洋服が好きだし、接客していると楽しい気持ちになれるし、何より演劇じゃない！！最高！！
とにかく楽しくて、嫌なことやしんどいこともあれど、基本的には「私この仕事超向いてるわ〜！！」と思いながら毎日店頭でお洋服を売っていました。頻繁に会いにきてくださる顧客様もできて、お客様のクローゼットの中が大体想像できるようになって、次第に売り上げも伸びていき、そこそこ優秀な店員になれました多分。

でも毎月27日になると私に降りかかるわけです。
「奨学金」の文字が。
その度に思うのです。
私、これだけの金額をかけて演劇を学んだのに、活かせてなくない？
一体なんのために大学へ行ったんだろ？
しかも、今の給料だと、将来的に返還できなくなる時が来る。
こんだけまともに働いていても、私は奨学金を還しきれないかもしれない。
……私、今ここで働いていることすらも意味がないのでは？
もしかして、まともに働いても還せないのだから、演劇で働いて還せない方が、何十倍もマシじゃないか？

気づいてしまいました。
私、人生をこの800万円の奨学金に握られているかもしれません。
こんだけの借金背負ったのに、演劇をやらないことの方が、ドブ金かもしれません。
なので、私はアパレルを退職し、より難易度が高く、還せない確率の上がる演劇へと戻ってまいりました。やあ。
実際、やっぱり難しいです。なんか、ずっといろんな仕事を並行してやってます。
でも、不思議なことで、何をしても大体演劇に活かせるんですよね。
多分そういう風に脳のバックグラウンドで勝手に演劇アプリが作動し続けていて、あちこちへ行くたびに演劇アプリにも勝手に経験値が付与されてるんだと思います。
一箇所にとどまる方が苦手なので、すごくちょうどいい生き方だと感じてます。

そんなこんなで、奨学金を還すための人生を生きています。
ですが、これまた不思議と、あってよかったなと思うことの方が多いです。
多分、この800万円を還すというクソデカ人生目標がなかったら、生きる意味も生き方も迷子になっていたんじゃないかなと思います。
今のところ私が死ぬとこれが全部両親や親戚に降りかかるので、死ねません。これだけで生きねばならなくなる。
あと、演劇にまた戻ってくる理由になりました。
だから今、シーリア企画という団体をやれています。

人生は長くて退屈だし、800万円の元をとりたいから、演劇をやる。

そんな感じで、私は演劇をやっています。

次公演のココ連れ、見にきてくださいね。
https://t.livepocket.jp/e/kokotsure