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ある朝の出来事◇母の意地

最近のある朝の出来事です。
母のあえぐよう声が聞こえてきました。
「あー、あー、あーしんど」

私はいったい何が起きたんだろうと階下に降りていくと、母が玄関のベンチに腰掛けて背中で息をしています。

「お母さんどしたん」と聞くと、母は「あんた、ちょっと外に出て見ておいで、ちゃんとチェックしてみてや」と恐ろしい形相でそう言うのです。

彼女の隣には、木の枝が大量に入ったゴミ袋が置かれていました。

私は袋を見て、ピンときました。
昨晩、母が言っていたのです。
あんた、表に出てびっくりしたんよ、庭の木がぼうぼうに生えとらい」と。

庭木のことが気になっていた母は、早朝に大きなバサミを手に、懸命に剪定作業をしたようです

家の中ではシルバーカーを使って移動している母が、いったいどのようにして自分の背丈以上の木を大きな剪定バサミで切ったのか、私には想像がつきません。ただ切りたいと言う一心で、自分の状況を忘れて無謀な作業をしたのです

「あんた、早よ見てこんかね、私に出来るんはあそこまでよ」再び母が私に恐ろしい形相で言いました。

思い込んだらどんなことでも成し遂げようとする母の性格を知らないわけではないのに、私は昨日の一言を聞き逃していたことを反省しました

93歳の母が転んだり怪我をしたりしなかったことが不幸中の幸いだと思う私はおかしいのか。いやいやそんなことはない。

私は意地と戦う母の頑固さを前にたじろいでいました。



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