12月の推奨香木は「甘」が基調の穏やかな真南蛮♫

春風

気が付いたらもう師走…この時季になると毎年のように「今年も何も大したことが出来ないまま一年が過ぎてしまう💦」と焦るような感覚に苛まれるのですが…
本年最後の推奨香木は、これまでのどの真南蛮とも異なる個性を持つタイ産沈香を選びました。

これまでの真南蛮を聞かれた愛好者さま(複数)から頂戴したご感想を一部紹介させていただきますと…

「仮銘 雲のかけはし」:
甘みと鹹みが華やかに感じられ、真那賀の「いま一声」の後に出されたら、もしかしたら真那賀に間違いそうな気がするほど爽やかな香りですが、その爽やかさが真南蛮らしいのではないかと思いました。
真那賀と真南蛮では苦味の質が少し違うのではないのかなと思いました。
タイ産沈香の奥深さを感じました。
「仮銘 花のあたり」:
柔らかさと硬さとが独特の真南蛮で、明らかに苦味が佐曽羅「面影」とは別の香りでした。
「仮銘 朧月夜」:
江戸時代には既に日本にあった、というその歴史の深さにまず驚きます。そして、それが今も変わらず香気を放つということにも。
私が真南蛮の香に対して持つのは、男性的なイメージですが、このお香木にも品の良い男性的なイメージがありました。
「仮銘 白雲」:
爽やかな香で、「霞める空」(インドネシア産沈香)にはない男性的なイメージがありました。

さて今回の真南蛮はと言いますと、最大の特徴は、立ち始めから火末に至るまで穏やかな「甘」が他の味(鹹少々、苦少々、辛少々)を抑えて持続することと感じています。
穏やかであるけれどか弱くはない真南蛮特有の「甘」を風が運ぶ梅花の馥郁たる香気になぞらえて、次の和歌を証歌として仮銘を「春風」としました。

梅の花にほひや空にみちぬらむ夜わたる月に春風ぞ吹く
                (頓阿 =俗名 二階堂貞宗)(草庵集)

とても小さな塊ですが、甘い真南蛮がお好きな方々には喜んでいただけるかと、推奨します。

次回は、新しい年を「新型コロナ騒動を終息に向かわせる年」と位置付け、その年の初めを寿ぐ意気を籠めて「楽しい伽羅」を推奨する予定です。
どうぞご期待下さいませ。

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