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【連載ミステリ】小学生探偵 小寺理緒〈1〉小寺理緒は浮いている(全40話・完結済み)

この記事は、山田星彦の連載小説『小学生探偵 小寺理緒』の第1話です。

創作大賞に応募するため、規定に従い、この記事にあらすじと各記事へのリンクを掲載します。

あらすじには、事件の詳しい経過なども記載していますので、何も知らずに読みたい方は、飛ばして先へお進みください。ジャンルや文章量など、作品の概要が知りたい方は、読者さま向けに書いた説明記事をご覧ください。

読者さま向け説明記事

下へスクロールし、表紙と同じ画像まで飛んでいただくか、目次の「小学生探偵 小寺理緒(ここから本文)」を押していただければ、あらすじを読むことなく作品の冒頭にたどり着けます。

あらすじ

※注意!

このあらすじには、小説の展開が詳しく書かれています。

あらすじ

探偵小説マニアの小学生・小寺理緒は、物語に熱中するあまり、学校生活でも探偵のような振る舞いをしてしまい、クラスの中で明らかに浮いていた。ある日、理緒は学校で借りた推理小説の冒頭に、「犯人は高橋」とラクガキされているのを見つけて憤る。理緒は自らが探偵となり、読書の楽しみを奪ったラクガキ犯を探し出すことを決意。歴代の名探偵を参考に捜査を進める。やがて理緒は一人の怪しい少年を割り出すが、その少年の行方がなぜか掴めない。幻の少年を追う理緒だったが、あることがきっかけで少年の正体を突き止める。理緒は少年の元へ赴くことを決意するが、そこから捜査は急展開を迎え、やがて理緒は意外な真相に行き当たる。

あらすじは以上です。

小学生探偵 小寺理緒(ここから本文)

〈1〉小寺理緒は浮いている

 小寺こでら理緒りおは探偵小説が大好きな小学四年生だった。

 ふつう小学四年生の女の子といったら、妖精とかペガサスが出てくるロマンチックなファンタジーとか、背が高くてちょっとイジワルな男の子と繰り広げられる恋愛小説とか、そんなオシャレでキラキラした物語に夢中になる年頃なのに、理緒ときたら、そんな本には目もくれず、猟奇的りょうきてき連続殺人を巻き起こす頭のおかしい犯人とか、それを解明することに犯人と同じくらいか、あるいはそれ以上に猟奇的りょうきてきな執念を燃やす変わり者の探偵とか、そんな怪しくて危なっかしい人達が出てくる物語にばかり、心をときめかせていたのである。

 だから、理緒はちょっと周りから浮いていた。いや、本人は気づいていないが、だいぶ浮いていた。制服の胸ポケットには鉛筆でもヘアピンでもなく、もちろん虫メガネを差していたし、現場に自分の指紋を残さないよう、薄手の手袋も常に携帯していた。
 それに、理緒は言葉使いも変だった。落とし物は「遺留品いりゅうひん」と呼んだし、職員室は「捜査本部そうさほんぶ」だと思っていた。担任の先生をうっかり「お母さん」と呼んで笑われることはよくあるが、理緒は先生を「警部けいぶ」と呼んで、みんなを絶句させたこともあった。

「ねえ、理緒ちゃん?」
休み時間、隣の席の小春こはるが理緒に話しかけた。理緒は虫メガネを念入りにいている。
「何してるの?」
話しかけられた理緒は、虫メガネを小春に向けながら言った。
「レンズが汚れちゃって。」
しかし、小春には虫メガネが汚れているようには見えない。レンズには、真顔の理緒の目がくっきりと拡大されている。
「よく見えてるよ?もういいんじゃない?」
 そういう小春から目を離し、理緒は虫メガネを拭く作業に戻ってこう言った。
「いや、そうはいかない。もしかしたら、ちょっとの汚れが原因で、犯人の痕跡こんせきを見落とすかもしれないし。」
「犯人…。何か事件が起きたの?」
「ううん。べつに。」
「…」

 たしかに理緒は浮いていた。理緒とクラスメイトの間では、こんな会話が毎日のように繰り返されていたのだ。
 とはいえ、ここはどこにでもある平凡な小学校。本当に事件が起きることなんてない。だから、実際に理緒が捜査に乗り出したことはこれまで一度もなく、時にみんなを困らせたり、時にみんなから変人扱いされながらも、なんだかんだ平和な小学校生活を過ごしていたのである。

目次〉〈次回

各記事へのリンク

〈マガジン〉
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〈1〉https://note.com/yamadahoshihiko/n/n1bb164f444dd

〈2〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n6b00f0236e7d

〈3〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n97dc6db2cb2b

〈4〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n8a439106de87

〈5〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n521d85423536

〈6〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n2399d944231c

〈7〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n6be966344fe2

〈8〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n5dc1347eb472

〈9〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n4dd71cd4efd3

〈10〉https://note.com/yamadahoshihiko/n/n3ce61cc05052

〈11〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/nb4dab1440f93

〈12〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n49b93e2c5ca8

〈13〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n862b2d6b6cfd

〈14〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/nf7ba50a86973

〈15〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n7731a6251355

〈16〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n6488062edc16

〈17〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n817f188c4143

〈18〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n3fbdc07a15f2

〈19〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n858013c1647c

〈20〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/ncdda65ec328f

〈21〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n363d9032cf20

〈22〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n43b599ddf1c0

〈23〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n9f6138b7c0c9

〈24〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/ne1af62abd1ce

〈25〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n3d66c8e00193

〈26〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n261d3f158412

〈27〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/nd7f440ad648d

〈28〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n72c0c5d85919

〈29〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/ncd71fc21917f

〈30〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n65cdfc59925d

〈31〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/neaf043bceb2f

〈32〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n5c822b323181

〈33〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n01bed8810e04

〈34〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n56f77baa6824

〈35〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/nb2b3939e499e

〈36〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n385d43dabb3d

〈37〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n7b498254cfb7

〈38〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n3635ad5922fb

〈39〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/n90d2bedcabf6

〈40〉
https://note.com/yamadahoshihiko/n/ne77067e3256d

#創作大賞2023 #ミステリー小説部門

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