ヤマダヒフミ

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空港

 私は空港職員をしている。年齢は56才だ。  私が空港職員を志すきっかけになったのは、二十代の頃、当時付き合っていた彼と一緒に行った海外旅行だった。もっとも、私の…

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現代アートとキリスト教美術を比較して芸術について考える

 私は小説を書くのを目標にしているが、小説というのはいつでも書けると思っている。    実際には、いつでも書けるなんていう状況ではなく、自分が書きたいと思っている…

ヤマダヒフミ
3時間前
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福田恆存と三島由紀夫の違い

 福田恆存の思想について知りたくて図書館に行ってきました。三島由紀夫全集の中の対談が載っている巻を取り出し、ぱらぱらと読みました。    福田について知りたくて三…

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感想 チャタレイ夫人の恋人

 ロレンスの「チャタレイ夫人の恋人」(木村政則訳)を読みました。感想を書こうと思います。    「チャタレイ夫人の恋人」と言えば、「チャタレイ裁判」が有名です。「…

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神無くして原罪あり  ー芥川と太宰ー

 福田恆存を読んでいたら、日本近代文学について述べたところで「日本の近代文学は神は不在だったが、原罪はあった」というような文章に出会い、(そうだよなあ)と考え込…

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小さな声

 (私達は死に耐える事ができます…)  (死の想念にも、現実の死にも私達は耐える事ができます…)  (というのは、私達は"小さな声"で話しているからです…)  (小…

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ヒラコーの百点満点の答え

 ツイッター(現X)を見ていたら、漫画家のヒラコー(平野耕太)が次のようなツイートをしていた。    「自分は「足立区に住んでて、日陰で世間様を妬みながら斜に構え…

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春は巡る

 また春がやってきたようだ。暖かくなっている。    先日、私は、川べりをランニングしていて、言いようのない幸福感を味わった。夕陽の光と輝く植物、光を跳ね返す水面…

ヤマダヒフミ
2週間前
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ちょっと面白かったテレビ番組と面白くないほとんどのテレビ番組

 私は諸事情で、普段、テレビ画面が目に入る。家にはテレビはないのだが、テレビを見ている時間はある程度ある。    それで、今のテレビ番組というのは本当につまらない…

ヤマダヒフミ
2週間前
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福田恆存の一文から「芸術の天才」について考える

 最近、福田恆存を読んでいるが(そうだよな)と思う事が多い。福田の言っている事は、芸術というものを通ってきた人間からすれば常識的と感じるが、果たして福田はまとも…

ヤマダヒフミ
3週間前
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走る

 僕は川べりを走っていた  僕はまるで自分を十四才かのように感じていたが  既に四十の齢を越えていた  少しも大人になる事ができず  ああだけはなるまいと誓った大人…

ヤマダヒフミ
3週間前
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近代文学者としての福田恆存

※有料記事ですが無料で最後まで読めます。金銭に関しては投げ銭です※  最近、福田恆存を読んでいる。福田恆存は面白い。    福田は「保守主義者」のレッテルを貼られ…

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ヤマダヒフミ
1か月前
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死んだミューズ

 福田恆存の「批評の悲運」というエッセイにこんな文章がある。    「もし近代日本の作家たちのうちに美を探ろうとするなら、それはミューズへの情熱そのものの美しさ以…

ヤマダヒフミ
1か月前
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何故、政治は「神」なのか

 現代社会において真面目なもの、真剣なものとは何かと言えば、「政治」しかない。政治だけが人々が真剣になる唯一のもので、その他のものは趣味であり、お遊びであり、装…

ヤマダヒフミ
1か月前
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福田恆存に学ぶ

 最近、福田恆存を読んでいますが、面白くて、色々と勉強になっています。    福田の感想については後に置いておくとして、まず自分が思ったのは(これを今の自称保守が…

ヤマダヒフミ
1か月前
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「弱者男性」とタル・ベーラ

 最近、「弱者男性」という言葉が流行っているそうです。どうも経済的に貧しい男性や人間関係が充実していない男性を指すようです。    それで、これに関してトイアンナ…

ヤマダヒフミ
1か月前
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空港

空港

 私は空港職員をしている。年齢は56才だ。

 私が空港職員を志すきっかけになったのは、二十代の頃、当時付き合っていた彼と一緒に行った海外旅行だった。もっとも、私の旅行は、旅立ちの空港でほとんど終わっていたと言った方がいいだろう。

 私達は空港に行った。私は空港で、夕日を見た。大きな通路を歩いている時、滑走路の向こうで輝く夕日を見た。つまらない事に思われるかもしれないが、私はその風景にひどく感動

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現代アートとキリスト教美術を比較して芸術について考える

現代アートとキリスト教美術を比較して芸術について考える

 私は小説を書くのを目標にしているが、小説というのはいつでも書けると思っている。
 
 実際には、いつでも書けるなんていう状況ではなく、自分が書きたいと思っている小説は書けない。とはいえ、その事で悲観しているわけでもなく、それは放っておけばいいと思っている。
 
 ネットを見ると、色々な創作論が噴出している。もちろん、みんなが「読者」であり、「作り手」だったりするから、そういうものを見て共感して「

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福田恆存と三島由紀夫の違い

福田恆存と三島由紀夫の違い

 福田恆存の思想について知りたくて図書館に行ってきました。三島由紀夫全集の中の対談が載っている巻を取り出し、ぱらぱらと読みました。
 
 福田について知りたくて三島との対談を読んだのは、どうやらその対談で福田の思想が鮮明になりそうだ、と踏んだからでした。
 
 結果から言うと、福田の言わんとする事の理解も深まったとは思いますが、それ以上に、三島由紀夫についても理解が深まった気がします。
 
 福田

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感想 チャタレイ夫人の恋人

感想 チャタレイ夫人の恋人

 ロレンスの「チャタレイ夫人の恋人」(木村政則訳)を読みました。感想を書こうと思います。
 
 「チャタレイ夫人の恋人」と言えば、「チャタレイ裁判」が有名です。「チャタレイ裁判」というのは、「チャタレイ夫人の恋人」という作品には、性行為の描写が非常に多く、果たしてこれは芸術なのか、ポルノ作品なのか、という事が問われました。
 
 ポルノまみれの今の世の中から過去の裁判を振り返ると、この程度がどうし

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神無くして原罪あり  ー芥川と太宰ー

神無くして原罪あり  ー芥川と太宰ー

 福田恆存を読んでいたら、日本近代文学について述べたところで「日本の近代文学は神は不在だったが、原罪はあった」というような文章に出会い、(そうだよなあ)と考え込んでしまった。
 
 私が知っている限りでは太宰治が当にそういう状況を体現していた。太宰がキリストというものへの関心を示し続けたのは、太宰において、そして日本近代文学においては「神はいないが原罪はある」という状況だったからだ。
 
 神はい

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小さな声

小さな声

 (私達は死に耐える事ができます…)
 (死の想念にも、現実の死にも私達は耐える事ができます…)
 (というのは、私達は"小さな声"で話しているからです…)
 (小さな、小さな声で話しているからです…)
 (耐えられる秘訣と言えば、ただそれだけです…)
 
 ビルディングの奥に陽は傾き
 画面を見ていた男は足元の小石に蹴躓いた
 男は軽く舌打ちすると
 陽が沈みつつある方向へと足早に去っていった

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ヒラコーの百点満点の答え

ヒラコーの百点満点の答え

 ツイッター(現X)を見ていたら、漫画家のヒラコー(平野耕太)が次のようなツイートをしていた。
 
 「自分は「足立区に住んでて、日陰で世間様を妬みながら斜に構えた半笑いの、ヒネた思考と嗜好の性格の悪い、強制的にびっちりと通わされてる興味のない塾と習い事をサボって漫画読んでる14歳位の度の強い眼鏡かけたデブのガキ」に向けて描いてる。あいつは気に入るはずだ」
 
 これは誰に向けて、漫画を描いている

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春は巡る

春は巡る

 また春がやってきたようだ。暖かくなっている。
 
 先日、私は、川べりをランニングしていて、言いようのない幸福感を味わった。夕陽の光と輝く植物、光を跳ね返す水面と、水面を泳ぐ鴨…そうした全ての光景が走っている私自身と溶け去って、私自身が世界に流れ出していくような幸福を感じた。
 
 …そうした瞬間というのは、西欧の人間ならば、「神と合一した瞬間」と言ったかもしれない。東洋であれば、坊主が悟りを開

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ちょっと面白かったテレビ番組と面白くないほとんどのテレビ番組

ちょっと面白かったテレビ番組と面白くないほとんどのテレビ番組

 私は諸事情で、普段、テレビ画面が目に入る。家にはテレビはないのだが、テレビを見ている時間はある程度ある。
 
 それで、今のテレビ番組というのは本当につまらない。テレビがつまらない、テレビがひどい、と批判するのは、既に陳腐になっているし、あんまりくどくど言っても仕方ないのだが、まあひどい。
 
 何がひどいかと言うと、どの番組も「テレビっぽい仕様」になっている事だ。「テレビっぽい味付け」というか

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福田恆存の一文から「芸術の天才」について考える

福田恆存の一文から「芸術の天才」について考える

 最近、福田恆存を読んでいるが(そうだよな)と思う事が多い。福田の言っている事は、芸術というものを通ってきた人間からすれば常識的と感じるが、果たして福田はまともに読まれているのだろうか?。私は実際読んで、その疑念を増した。
 
 「私小説のために」という短文の中に次のような一節がある。
 
 「ゴッホの末期の肖像画を見たまえ。それは醜悪であり、狂気であり、異常である。だが、自己の狂気と異常とをかほ

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走る

走る

 僕は川べりを走っていた
 僕はまるで自分を十四才かのように感じていたが
 既に四十の齢を越えていた
 少しも大人になる事ができず
 ああだけはなるまいと誓った大人になりおおせて
 川べりを走っていた
 
 川べりには様々なものがある
 植物、赤い花、空、雲、テニスをする老人、犬を散歩する人、ランナー、鴨
 それらは夕暮れの金色の光に包まれて
 輝いていた
 あたかもクロード・ロランが描いた至福の

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近代文学者としての福田恆存

近代文学者としての福田恆存

※有料記事ですが無料で最後まで読めます。金銭に関しては投げ銭です※

 最近、福田恆存を読んでいる。福田恆存は面白い。
 
 福田は「保守主義者」のレッテルを貼られているが、実際、どのあたりが保守主義者なのか、判然としない。逆に言うと、今の「自称保守」はあまりにもわかり易すぎる。
 
 私は現代の政治党派が、自分達の都合で小林秀雄や福田恆存を担ぎ上げるのに嫌悪感を抱いている。小林や福田が生きていれ

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死んだミューズ

死んだミューズ

 福田恆存の「批評の悲運」というエッセイにこんな文章がある。
 
 「もし近代日本の作家たちのうちに美を探ろうとするなら、それはミューズへの情熱そのものの美しさ以外にありはしない。」
 
 福田はこの文章に続けて、近代日本の作家の作品それ自体は美ではなかったが、少なくとも美への渇仰はあった、と説明している。
 
 私は福田の文章を読んで、嘆息せざるを得ない。2024年の日本という国で「ミューズ」な

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何故、政治は「神」なのか

何故、政治は「神」なのか

 現代社会において真面目なもの、真剣なものとは何かと言えば、「政治」しかない。政治だけが人々が真剣になる唯一のもので、その他のものは趣味であり、お遊びであり、装飾でしかない。
  
 私は文学というものを中心に考えているが、文学などというのはもう誰も興味を持っていない。最近の芥川賞関連なんかを見ると、「文学の専門家」が文学に大して興味を持っていない図がよく現れていると思う。
 
 文学とかアートと

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福田恆存に学ぶ

福田恆存に学ぶ

 最近、福田恆存を読んでいますが、面白くて、色々と勉強になっています。
 
 福田の感想については後に置いておくとして、まず自分が思ったのは(これを今の自称保守が読むのは無理だな)という事です。福田恆存と言えば「保守主義者」のレッテルが貼られていますが、その関連で読んでも、さっぱりわからないだろうと思います。
 
 私からすれば、福田恆存は「保守主義者」である以上に、「近代文学者」です。日本近代文

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「弱者男性」とタル・ベーラ

「弱者男性」とタル・ベーラ

 最近、「弱者男性」という言葉が流行っているそうです。どうも経済的に貧しい男性や人間関係が充実していない男性を指すようです。
 
 それで、これに関してトイアンナという人が記事を書いていました。本も出しているそうです。まあ、流行りのワードに乗っかって本を出すライターなので、何も期待する事はありません。
 
 こういう話に関しては何も思わないというか、(うんざり)です。(お前らなあ、世界では八億人も

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