「ハムレット」と「こころ」 ー近代文学の始まりにおける"宿命"ー
福田恆存に「人間、この劇的なるもの」という評論がある。これは福田の文章の中で最も優れているものではないかと思うのだが、その中で福田は、近代文学というものはその始まりに位置する、シェイクスピア「ハムレット」、セルバンテス「ドン・キホーテ」の二作で、既にその可能性は徹底的に探索されつくされていた、と言っている。
何故「ハムレット」と「ドン・キホーテ」なのか。それは特に、作品内部に批評性が盛り込まれて、しかも作品全体が見事な統一を保った物語性があるから、という事になるだろう